逮捕されたら弁護人に最初に動いてもらうべきこと|検察官の勾留請求を裁判官に却下させる弁護活動

目次

逮捕されたら弁護人に最初に動いてもらうべきこと|検察官の勾留請求を裁判官に却下させる弁護活動

家族が警察に逮捕された。いま警察署の留置場にいる。勾留されれば、最長で23日間、場合によってはそれ以上、身体拘束が続く可能性がある。仕事を失う、学校を退学になる、家族の生活が崩れる、社会的信用が毀損される──こうした事態が現実のものになろうとしています。

勾留は、通常の流れでは、逮捕から72時間以内に検察官が勾留請求を行い、裁判官がこれを認めて勾留決定を出すことで成立します。多くの方は「検察官が勾留請求すれば必ず勾留される」と考えていますが、これは誤解です。

裁判官には、検察官の勾留請求を却下する権限があり、実際に却下される事案は全国で一定の割合を占めています。弁護人が逮捕直後の短い時間に適切な働きかけを行えば、勾留を阻止できる事案は実務上相当数あります。

このページは、逮捕から勾留決定までの72時間という短い時間帯に、弁護人がどのような活動を行うことで検察官の勾留請求を裁判官に却下させることができるのか、実務の視点から説明します。

1 逮捕から勾留決定までの流れ

まず、逮捕から勾留決定までの時間の流れを整理します。

被疑者が警察に逮捕されると、警察での取調べが始まります。警察は、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致します。

検察官に送致された後、検察官は24時間以内、かつ逮捕から通算72時間以内に、裁判官に対して勾留請求を行うか、被疑者を釈放するかを判断します。

検察官が勾留請求を行うと、裁判官は被疑者と面談し(勾留質問)、勾留の必要性を判断します。勾留の理由と必要性がそろっている場合は勾留決定、そうでない場合は勾留請求却下となります。

勾留決定が出ると、その日から10日間、さらに延長で10日間、合計20日間の身体拘束が続きます。重大事件では追加の再逮捕・再勾留が行われ、合計30日から60日以上の身体拘束に及ぶこともあります。

この長期身体拘束を回避する最後のチャンスが、勾留決定の直前、つまり検察官が勾留請求を行う前後の時期です。

2 勾留の要件──裁判官が判断する三つの事項

裁判官が勾留決定を出すためには、次の三つの事項がすべて満たされる必要があります(刑訴法60条1項)。

第一に、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです。これは起訴するだけの嫌疑があるかという判断で、通常の逮捕段階ではほぼ争いにならない要件です。

第二に、勾留の理由があることです。具体的には、次のいずれかに該当することが求められます。

・被疑者が定まった住居を有しないこと(1号) ・被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること(2号) ・被疑者が逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること(3号)

第三に、勾留の必要性があることです。これは勾留以外の手段では目的を達成できないことを意味し、在宅捜査で足りる事案や、身体拘束が相当でない事案では、勾留の必要性が否定されます。

弁護人が勾留を阻止するために争うのは、主として第二の勾留の理由と、第三の勾留の必要性です。

3 罪証隠滅のおそれを争う視点

勾留の理由として実務上最も問題になるのは、2号の罪証隠滅のおそれです。検察官は勾留請求書でこれを強調してきますが、これを争う視点は次のとおりです。

(1)罪証隠滅の対象となる証拠が具体的に存在するか

捜査段階で既に客観的証拠(防犯カメラ映像、DNA鑑定、押収済み物証)が確保されている事案では、被疑者が隠滅しうる証拠は限定されます。

客観的証拠が既に警察の手元にある場合、被疑者が釈放されたとしても、これらの証拠に物理的に接触する可能性はほぼありません。この点を具体的に指摘することで、罪証隠滅のおそれを否定する議論ができます。

(2)被疑者が証拠に働きかける客観的可能性があるか

被害者や共犯者等の供述が既に捜査機関に固まっている場合、被疑者が保釈後にこれらの人物に接触したとしても、供述が覆る可能性は低いと評価されます。

特に、被害者が事件直後に警察に届け出を行い、被疑者への悪感情を明確に示している場合、被疑者の接触に対して被害者側が即座に警察に通報する可能性が高く、罪証隠滅の成功可能性は低下します。

(3)被疑者が証拠に働きかける主観的意図があるか

被疑者が事件について否認していない場合、争う予定の事実関係が限定されている場合、被害者への謝罪や弁償の意思を明確にしている場合は、罪証隠滅の主観的意図の程度は低いと評価されます。

弁護人としては、被疑者と接見した上で、争う範囲を具体的に確認し、被害者への接触をしない誓約、捜査への協力姿勢を明確にした陳述書等を整え、裁判官への意見書に添付することが有効です。

(4)罪証隠滅行為が成功する現実的可能性があるか

仮に被疑者に罪証隠滅の意図があったとしても、物理的・環境的に成功する可能性が低い事案では、勾留の理由は弱まります。

同居家族や身元引受人が被疑者の通信機器や金銭を管理する予定である、事件地域から離れた場所に居住予定である、被害者との接触を現実的に避けられる環境にあるといった事情を示すことで、罪証隠滅の現実的可能性を下げた評価を示すことができます。

4 逃亡のおそれを争う視点

勾留の理由の3号として問題になるのが、逃亡のおそれです。これを争う視点は次のとおりです。

まず、被疑者に定まった住居があることを示します。賃貸借契約書、公共料金の請求書、住民票等で、現住所に長期間居住している事実を示します。

次に、家族関係の安定を示します。同居する家族、扶養する家族、介護対象の家族等、被疑者が逃亡できない事情を具体的に示します。

さらに、職業上の拘束を示します。会社員として継続的に勤務している、自営業で取引先を抱えている、医療・介護の職業で患者や利用者に対する責任があるといった事情は、逃亡のおそれを低く評価する材料になります。

加えて、身元引受人の存在を示します。両親、配偶者、兄弟姉妹等の身元引受人が被疑者の監督に当たる旨の上申書を提出することで、逃亡のおそれは大きく下がります。

5 勾留の必要性を争う視点

勾留の理由が一定程度認められる事案でも、勾留の必要性を争うことで勾留を阻止できる場合があります。

勾留の必要性とは、勾留以外の手段で捜査の目的を達成できない場合に限り認められるものです。在宅捜査で十分な事案、軽微な事件、被疑者の生活・健康への影響が著しい事案では、勾留の必要性が否定されます。

実務上、次のような事情は勾留の必要性を下げる方向に働きます。

事件の軽微性として、罰金刑相当にとどまる事案、起訴猶予が見込まれる事案、初犯であり情状が軽い事案は、勾留の必要性が低いと評価されます。

被疑者の特殊事情として、未成年者である、高齢である、重篤な持病を抱えている、妊娠中である、介護が必要な家族がいるといった事情は、勾留による不利益を重く評価させる材料になります。

社会生活への影響として、勾留により解雇の可能性がある、学校の退学の可能性がある、重要な国家試験や資格試験を控えている、家族の生活を支えているといった具体的事情は、勾留の必要性を下げる方向に作用します。

捜査の進捗として、客観的証拠が既に押収されている、関係者の供述が既に得られている、被疑者の供述も一定程度固まっているといった状況では、勾留せずとも捜査は進められるという評価になります。

6 逮捕後72時間に弁護人が行うべき具体的活動

弁護人が勾留請求却下を目指して行うべき具体的活動は、次のとおりです。

(1)早期の接見

逮捕直後に被疑者と接見し、事件の内容、被疑者の言い分、家族関係、職業、居住環境、健康状態、身元引受人となり得る家族の有無などを詳細に聴取します。この接見内容が、以降の弁護活動の基礎になります。

接見では、被疑者に対し、取調べでの供述方針、黙秘権の行使、供述調書への署名の注意点などを助言します。

(2)家族との連携

被疑者の家族と連絡を取り、身元引受人としての上申書、被疑者の生活状況を示す資料、勾留により生じる具体的不利益を示す資料(勤務先の就業規則、家族の医療記録等)を収集します。

(3)被害者への示談申入れ

事件の性質によっては、逮捕直後から被害者への示談申入れを行います。示談交渉の開始という事実自体が、被疑者の反省と被害回復への意欲を示す材料になります。

示談が逮捕から72時間以内に成立することは稀ですが、弁護人が示談申入れを行い、被害者側が何らかの反応を示している事実を、裁判官への意見書に記載することで、勾留の必要性を下げる材料となります。

(4)検察官への働きかけ

送致された被疑者について検察官が勾留請求を行うかを判断するのは、送致から24時間以内です。この間に弁護人が検察官に対して、勾留請求を行わずに釈放するよう働きかけることができます。

検察官への意見書では、勾留の理由と必要性が欠けることを具体的事実とともに指摘します。客観的証拠の収集状況、関係者の供述状況、被疑者の認否と反省、被害者への対応、身元引受人の態勢、被疑者の社会的背景などを丁寧に示します。

(5)裁判官への意見書提出

検察官が勾留請求を行った場合、裁判官は勾留質問を経て判断します。弁護人は、勾留質問の前または勾留質問と同時期に、裁判官に対して意見書を提出し、勾留請求を却下するよう働きかけます。

意見書では、勾留の理由の三類型(住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ)のそれぞれについて、具体的事実に即して該当しないことを論じるとともに、勾留の必要性が欠けることを、被疑者の具体的事情に即して詳述します。

(6)裁判官への面接申入れ

事案によっては、書面だけでなく、裁判官に直接面接して意見を述べる機会を申し入れることも有効です。全ての裁判官が応じるわけではありませんが、重要な事案では面接を通じて具体的事情を伝えることで、判断に影響を与えられる場合があります。

7 勾留請求却下が認められやすい類型

実務上、勾留請求却下が認められやすい類型は次のとおりです。

初犯で、事件が比較的軽微であり、被疑者が否認せず、定住しており、家族の身元引受けが確実な事案。

被疑者が事件を認め、被害者への謝罪・弁償の意思を明確にしており、被害者側も処罰感情が強くない事案。

客観的証拠が既に押収されており、関係者の供述も固まっており、被疑者が保釈後に罪証隠滅する現実的可能性が低い事案。

被疑者に健康上の重篤な事情があり、勾留により生命・健康への危険が生じる事案。

被疑者が若年であり、勾留により学業や将来への重大な影響が生じる事案。

これらの事情が複数重なる事案では、勾留請求却下の可能性は大きく高まります。

8 勾留請求却下後の動き

勾留請求が却下されると、被疑者はその日のうちに釈放されます。ただし、捜査は継続し、在宅捜査の形で進められます。

在宅捜査となった場合、被疑者は自宅に戻り、通常の生活を送りながら、警察署や検察庁への出頭に応じて取調べを受けます。

起訴の可能性は残るため、弁護人としては、在宅のまま示談交渉を進め、起訴猶予あるいは不起訴処分を目指した活動を継続します。

勾留されたまま起訴された事案と、勾留請求却下後に在宅で起訴された事案では、その後の事件処理が根本的に異なります。在宅のまま起訴された場合は、保釈請求を行うまでもなく自由な状態で裁判に臨むことができ、証拠収集・示談交渉・生活の維持がすべて容易になります。

9 検察官の勾留請求後でも諦めない──準抗告という選択肢

検察官の勾留請求に対し、裁判官が勾留決定を出してしまった場合でも、弁護人は準抗告(刑訴法429条)という手段で争うことができます。

準抗告は、勾留決定に対する不服申立てであり、別の裁判官(通常は3名の合議体)が勾留決定の当否を判断します。弁護人が準抗告を行うことで、勾留決定が取り消され、被疑者が釈放される場合があります。

準抗告では、勾留決定時には考慮されていなかった新たな事情(示談の進捗、身元引受人の態勢の具体化、被害者の処罰意思の変化等)を示すことが有効です。

準抗告については、別の機会に詳しく説明する予定です。

10 当事務所の取扱事例

当事務所では、逮捕直後の早期弁護活動により、検察官の勾留請求が却下されて被疑者が釈放された事案、あるいは勾留決定に対する準抗告により勾留が取り消された事案を扱ってきました。

ある事案では、逮捕直後にご家族から依頼を受け、同日中に被疑者と接見を行い、事件の内容と被疑者の認否を確認した上で、ご家族の身元引受けの意思、被疑者の職業・居住の安定、健康上の事情などを詳細に整理しました。

その上で、検察官への意見書を送致の前に提出し、勾留請求を行わないよう働きかけるとともに、被害者への示談申入れを早期に開始しました。

検察官が勾留請求を行った段階では、裁判官に対して詳細な意見書を提出し、勾留の理由と必要性が欠けることを具体的事実に即して論じました。

結果として、裁判官は勾留請求を却下し、被疑者は逮捕から72時間以内に釈放されました。釈放後は在宅のまま捜査が進み、最終的には起訴猶予処分となり、前科を避けることができました。

この事例は、逮捕直後の72時間という短い時間帯に、弁護人が早期に動くことで、勾留を阻止し、その後の事件処理全体を有利に進められることを示しています。

11 家族が取るべき初動

家族が逮捕された場合、家族として取るべき初動は次のとおりです。

第一に、逮捕の事実を知った直後に弁護人を選任することです。逮捕から勾留決定までの72時間という短い時間に弁護活動を行うためには、可能な限り早く弁護人を選任する必要があります。国選弁護人は原則として勾留決定後に選任されるため、勾留阻止を目指す場面では私選弁護人を選任することが重要です。

第二に、被疑者の基本情報を整理することです。職業、勤務先、住所の居住年数、家族構成、扶養家族の有無、持病の有無、過去の前科前歴、身元引受人となり得る家族などを、弁護人との初回相談の時までに整理しておきます。

第三に、身元引受けの意思を明確にすることです。家族が被疑者の身元引受人となり、監督に当たる意思を持っていることを、書面で示せるよう準備します。

第四に、被疑者の生活環境に関する資料を収集することです。賃貸借契約書、住民票、勤務先の就業規則、医療記録、学業関係の資料など、被疑者の社会的基盤を示す資料は、勾留阻止の主張の土台となります。

第五に、被害者側への対応方針を弁護人と協議することです。事件の性質によっては、逮捕直後からの示談申入れが有効な場合があります。

12 当事務所がお手伝いできること

当事務所は、逮捕直後の早期弁護活動について、検察官の勾留請求を却下させ、被疑者が起訴前に釈放された事案を扱ってきました。勾留の理由を争う事実の整理、勾留の必要性を下げる事情の具体化、検察官・裁判官への意見書の作成、被害者への示談申入れ、身元引受人の態勢の整備など、逮捕直後の72時間という短い時間帯で行うべき弁護活動を迅速に進めます。

家族が逮捕されている方、逮捕の可能性がある方、逮捕された家族の弁護人を探している方は、次の情報をご用意のうえ、ご相談ください。

・被疑者の氏名、生年月日、現住所、職業 ・逮捕された日時、罪名、留置されている警察署 ・被疑者の家族構成、扶養家族の有無 ・身元引受人となり得る家族の情報(氏名、住所、職業、年齢) ・被疑者の健康状態、持病の有無 ・被疑者の社会的事情(仕事、学業、資格試験等)

逮捕から勾留決定までの72時間は、事件の帰趨を決定的に左右する時間帯です。一刻も早くご相談ください。


お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
電話 0564-73-3487
FAX 050-3172-6485
受付時間 平日9:00〜17:00
アクセス 名鉄東岡崎駅南口徒歩30秒

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次