トレントの開示請求でプロバイダごとに対応は違うのか|届く書面や手続の流れが異なる理由
トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、インターネットで情報を調べても、「自分に届いた書面と、ネットに書かれている説明が違う」と感じることがあります。意見照会書が届くと書いてあるのに、届いたのは「開示命令が発令された旨の通知書」だった。回答期限が2週間と書いてあるのに、届いた書面には異なる期限が書いてある。こうした違いが生じる理由の一つは、契約しているプロバイダによって対応が異なるためです。
プロバイダによって届く書面が違う
トレントの著作権侵害に関する情報を調べると、「まずプロバイダから意見照会書が届く」という説明が一般的です。
しかし、実際にはプロバイダによって対応が異なります。 意見照会書が届くプロバイダもあれば、意見照会書を送らないプロバイダもあります。
「ネットの情報と違う書面が届いた」「意見照会書が届くはずなのに届かなかった」という困惑は、プロバイダごとの対応の違いに起因していることがあります。
1. 一般的なプロバイダの対応
意見照会書を送付してから対応する
多くのプロバイダは、権利者側から発信者情報の開示請求を受けると、まず契約者に意見照会書を送付し、開示に同意するか不同意かの回答を求めます。
この流れは、プロバイダ責任制限法(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律)第6条に基づくものです。
回答書の返送期限はおおむね2週間程度に設定されていることが多いですが、プロバイダによって異なります。
回答を踏まえて開示の可否を判断する
契約者からの回答を受けて、プロバイダは開示に応じるかどうかを判断します。
同意の場合は開示が行われ、不同意の場合はプロバイダが任意に開示しないことがあります。 ただし、裁判所から開示命令が出ている場合は、不同意であっても開示される可能性があります。
2. ソフトバンクの場合――意見照会書が届かないことがある
いきなり「開示命令が発令された旨の通知書」が届く
ソフトバンクでは、契約者に意見照会書を送付せずに手続を進め、裁判所の開示命令が出た段階で初めて「開示命令が発令された旨の通知書」を契約者に送付するケースがあります。
この場合、契約者は同意・不同意の意見を述べる機会がないまま、開示命令が出された段階で初めて問題を把握することになります。
届いた時点ですでに開示が決まっている可能性がある
ソフトバンクからの通知書が届いた時点では、裁判所がすでに開示命令を発令しています。 つまり、意見照会書の段階で不同意と回答して開示を阻止する選択肢がなく、すでに開示が行われる(または行われた)段階から対応を始めることになります。
この場合の対応
ソフトバンクからの通知書が届いた場合は、速やかに弁護士に相談して対応方針を検討する必要があります。
弁護士に依頼すれば、権利者側への受任通知を送付し、以後の連絡窓口を弁護士に切り替えることができます。 開示命令が出た後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。
3. プロバイダによるログ保存期間の違い
ログ保存期間とは
プロバイダは、IPアドレスの割当記録(ログ)を一定期間保存しています。 権利者側がプロバイダに開示を請求するには、このログが保存されている期間内に行う必要があります。
ログが消去された後では、権利者側が開示を請求しても、プロバイダは契約者を特定できません。
ログ保存期間はプロバイダによって異なる
ログ保存期間は、プロバイダごとに異なります。 正確な期間を公表しているプロバイダは少なく、外部から確認することは困難です。
一般的には、数か月から数年程度といわれていますが、プロバイダによって大きな差があります。
ログ保存期間が意味すること
ログ保存期間が長いプロバイダの場合、トレントの利用から長期間経過した後でも開示請求が届く可能性があります。
逆に、ログ保存期間が短いプロバイダの場合は、比較的早い段階で新たな開示請求のリスクがなくなります。
自分が契約しているプロバイダのログ保存期間がどの程度かは、弁護士に相談する際に確認すべき点の一つです。
4. プロバイダの代理人弁護士がついているかどうか
開示命令の申立てが行われている場合
開示命令の申立てが裁判所に対して行われている場合、プロバイダ側にも代理人弁護士がつくことがあります。
たとえば、ソフトバンクの開示命令事件ではTMI総合法律事務所が代理人を務めている例があります。
プロバイダ側に代理人弁護士がついている場合は、裁判所を通じた開示命令の申立てがなされている可能性が高く、任意の開示請求と比べて手続が進んでいる段階であることを意味します。
届いた書面から手続の種類を見分ける
届いた書面が、テレコムサービス協会書式による任意の開示請求なのか、裁判所への開示命令申立てに基づくものなのかは、書面の記載から見分けることができます。
裁判所宛の「申立書」が添付されているか。 書面に裁判所名や「発信者情報開示命令事件」という記載があるか。 プロバイダ側に代理人弁護士がついているか。
これらの記載がある場合は、裁判所を通じた開示命令の申立てである可能性が高いです。
5. プロバイダの違いに関わらず、損害額は争える
対応の基本は同じ
プロバイダの対応がどのようなものであっても、開示後に権利者側から届く損害賠償請求への対応の基本は変わりません。
権利者側の提示額が裁判で認められる損害賠償金額と比べて適正かどうかを検証し、必要に応じて裁判で争うという考え方は、プロバイダの違いに左右されません。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの開示請求において、プロバイダごとに対応は異なります。
多くのプロバイダは意見照会書を送付して同意・不同意を確認しますが、ソフトバンクのように意見照会書を送付せず、開示命令の通知書をいきなり送ってくるプロバイダもあります。 ログ保存期間もプロバイダによって異なり、正確な期間は公表されていないことが多いです。 届いた書面が任意の開示請求なのか、裁判所への開示命令申立てなのかは、書面の記載から見分けることができます。 プロバイダの違いに関わらず、開示後の損害額の主張立証は同じように行えます。
届いた書面がネットで調べた説明と違うと感じたら、プロバイダごとの対応の違いが原因かもしれません。 書面の内容を正確に把握するためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
よくある質問
意見照会書が届かずにいきなり通知書が届きました。なぜですか。 ソフトバンクなど一部のプロバイダでは、契約者に意見照会書を送付せずに手続を進め、開示命令が出た段階で初めて通知書を送付することがあります。
意見照会書が届かなかった場合、不利になりますか。 意見照会書が届かなかったこと自体で不利になるわけではありません。開示命令の通知書が届いた後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。
自分のプロバイダのログ保存期間はどうやって調べればよいですか。 ログ保存期間を公表しているプロバイダは少なく、外部から確認することは困難です。弁護士に相談する際に確認すべき点の一つです。
届いた書面が任意の開示請求なのか開示命令なのか分かりません。 裁判所宛の「申立書」の添付、「発信者情報開示命令事件」という記載、プロバイダ側の代理人弁護士の記載があれば、裁判所を通じた開示命令の申立てである可能性が高いです。弁護士に書面を見せて確認してください。
プロバイダが違えば対応方針も変わりますか。 プロバイダの対応が異なっても、開示後の損害額の主張立証の基本は変わりません。ただし、意見照会書が届く場合と届かない場合とで、対応の入口が異なります。いずれの場合も、弁護士に相談して対応方針を検討してください。
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