トレントを使ったのは1回だけでも請求されるのか|利用回数が少なくても損害賠償の対象になる理由
トレントの著作権侵害で書面が届いたが、「トレントを使ったのは1回だけ」「1作品しかダウンロードしていない」という方がいます。1回だけの利用でも損害賠償を請求されるのか。1回だけなら金額は低くなるのか。利用回数が少ない場合の考え方を解説します。
「たった1回でこんなことになるのか」という困惑
トレントの著作権侵害で書面が届いた方の中には、「1回だけ試しに使ってみただけ」「1作品だけダウンロードしてすぐにやめた」という方がいます。
日常的に大量のファイルをダウンロードしていた方と比べて、「たった1回なのに」という不公平感や困惑を強く感じるのは当然です。
しかし、法律上は、1回の利用であっても著作権侵害が成立し、損害賠償請求の対象になります。
1. 1回の利用でも著作権侵害は成立する
回数は成否に関係しない
著作権侵害の成否は、利用回数によって左右されません。
1回でもトレントでファイルをダウンロードすれば、ダウンロードと同時にアップロード(送信可能化)が行われ、著作権法上の公衆送信権・送信可能化権の侵害が成立します。
100回ダウンロードした場合と1回だけの場合とで、侵害の「成立」に違いはありません。
1回でもIPアドレスは記録される
権利者側の監視システムは、トレントネットワーク上で対象ファイルを共有しているIPアドレスを記録しています。
1回だけの利用であっても、その瞬間にIPアドレスが記録されていれば、開示請求と損害賠償請求の対象になります。
「1回だけだからバレないだろう」ということにはなりません。
2. 1回だけの利用は損害額の算定で有利に働くか
利用回数が少なければ損害額は低くなる傾向がある
著作権侵害の成否と、損害額がいくらかは別の問題です。
損害額は著作権法第114条に基づいて算定され、ダウンロード回数と1ダウンロードあたりの利益額の掛け算で計算されます。
1回だけの利用であれば、送信可能な状態にしていた期間が短いため、その間のダウンロード回数は限定されます。
期間が短ければダウンロード回数も少なくなるため、損害額は低くなる傾向があります。
権利者側の提示額は利用回数に関係なく一律であることが多い
ただし、権利者側が提示する示談金は、利用回数に関係なく一律の金額であることが多いです。
1回だけの利用でも、100回利用した方と同じ44万円や88万円を提示されることがあります。
権利者側は、個々の利用者のダウンロード回数や利用期間を個別に計算して金額を決めているわけではなく、定額を一律に提示しているためです。
裁判で争えば差が出る
裁判で争った場合は、利用回数や送信可能期間が損害額の算定に反映されます。
1回だけの利用で送信可能期間が短ければ、裁判所が認定する損害額は低くなります。
100回利用した方と同じ金額にはなりません。
つまり、1回だけの利用であれば、裁判で争うことによる経済的メリットは、利用回数が多い方と比べても大きい場合があります。
提示額と裁判所の認定額の差が、利用回数が少ないほど相対的に大きくなるからです。
3. 1回だけの利用でも注意すべきこと
「1回だけ」が本当に1回かどうか
「1回だけ」と思っていても、実際には複数回利用していたことに気づいていない場合があります。
トレントのクライアントソフトは、パソコンの起動時に自動的に立ち上がる設定になっていることがあります。
自分では「1回使ってすぐにやめた」つもりでも、ソフトが自動起動してバックグラウンドで動作し続けていた場合、意図せず送信可能な状態が維持されていた可能性があります。
また、1回のダウンロードで複数のファイルがまとめてダウンロードされていた場合、1回の操作で複数作品の侵害が成立していることもあります。
権利者が複数の場合
1回の利用であっても、ダウンロードしたファイルが複数の制作会社の作品を含んでいた場合、複数の権利者から別々に請求が届くことがあります。
「1回だけだから大丈夫」と放置しない
1回だけの利用であっても、書面が届いた以上は対応が必要です。
「1回だけだから大した問題にはならないだろう」と放置すれば、訴訟を提起されるリスクがあります。
欠席判決で権利者側の提示額がそのまま認容されれば、1回の利用に対して数十万円の判決が出ることになります。
4. 1回だけの利用で裁判で争った場合の見通し
送信可能期間が短い
1回だけの利用であれば、ソフトを起動していた期間は短いはずです。
ダウンロード後すぐにソフトを終了していたのであれば、送信可能な状態にしていた期間は極めて短く、その間のダウンロード回数も限られます。
損害額は数万円以下になることもある
送信可能期間が短く、ダウンロード回数が限定されれば、1作品あたりの損害額は数万円以下になることもあり得ます。
権利者側が44万円を提示していても、裁判で認められるのが数万円以下であれば、差額は40万円近くになります。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
利用期間の証明が鍵になる
1回だけの利用で損害額を低く抑えるためには、「送信可能な状態にしていた期間が短かったこと」を具体的に示す必要があります。
いつソフトをインストールしたか、いつダウンロードしたか、いつソフトを終了またはアンインストールしたか。
これらの情報を弁護士に伝えることが、主張立証の精度を高めます。
5. 刑事告訴のリスク
1回だけの利用でも刑事告訴のリスクはゼロではない
利用回数が1回であっても、著作権侵害が成立する以上、権利者側が刑事告訴を行う可能性は理論上ゼロではありません。
ただし、1回だけの利用で、しかも弁護士が対応している状態で、権利者側が刑事告訴に踏み切ることは考えにくいです。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントを使ったのが1回だけであっても、著作権侵害は成立し、損害賠償請求の対象になります。
1回の利用でもIPアドレスが記録されていれば、開示請求と損害賠償請求が行われます。
権利者側は利用回数に関係なく一律の金額を提示してくることが多いです。
しかし、裁判で争えば、送信可能期間が短いことが損害額の算定で有利に働きます。
1回だけの利用で送信可能期間が短ければ、損害額は数万円以下にとどまることもあり得ます。
「1回だけだから大丈夫」と放置すれば、欠席判決で提示額がそのまま認容されるリスクがあります。
1回だけの利用であれば、裁判で争った場合に提示額との差額が大きくなりやすいため、弁護士に見通しを確認することの価値は高いです。
よくある質問
1回だけの利用でも請求されますか。
されます。1回でも著作権侵害が成立し、IPアドレスが記録されていれば開示請求と損害賠償請求の対象になります。
1回だけなら損害額は低くなりますか。
裁判で争った場合、送信可能期間が短ければ損害額は低くなる傾向があります。ただし、権利者側が提示する示談金は利用回数に関係なく一律であることが多いため、裁判で争わなければ差は出ません。
1回だけの利用で44万円を請求されました。高すぎませんか。
1回だけの利用で送信可能期間が短ければ、裁判所が認定する損害額は44万円を大幅に下回る可能性があります。弁護士に見通しを確認してください。
1回だけだから放置しても大丈夫ですか。
大丈夫ではありません。放置すれば訴訟を提起され、欠席判決で請求額がそのまま認容されるリスクがあります。
本当に1回だけかどうか分かりません。
自動起動設定でソフトがバックグラウンドで動作し続けていた場合、意図せず送信可能な状態が維持されていた可能性があります。弁護士に相談して利用状況を整理してください。
お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
0564-73-3487
050-3172-6485
平日9:00〜17:00
名鉄東岡崎駅南口徒歩30秒
