トレントの著作権侵害で給料を差し押さえられることはあるのか|給与差押えが起きる条件と防ぎ方
トレントの著作権侵害で権利者側から損害賠償を請求されたとき、「払わなかったら給料を差し押さえられるのか」「勤務先にバレるのか」と不安に感じる方がいます。給与差押えはどのような場合に行われるのか、いきなり差し押さえられることはあるのか、防ぐにはどうすればよいのかを解説します。
いきなり給与を差し押さえられることはない
最初にお伝えしておきたいのは、権利者側からの書面が届いただけの段階で、いきなり給与を差し押さえられることはないということです。
給与差押えは、裁判所の判決が確定し、それでも支払いをしなかった場合に、権利者側が裁判所に申立てを行って初めて実行される手続です。
意見照会書が届いた段階でも、損害賠償請求書が届いた段階でも、訴訟が提起された段階でも、給与が差し押さえられることはありません。
1. 給与差押えが行われるまでの流れ
判決が確定するまでは差押えできない
給与差押えは、「債務名義」と呼ばれる法的な根拠がなければ行えません。
債務名義とは、裁判所の判決、和解調書、公正証書などです。
トレントの著作権侵害の場合、権利者側が訴訟を提起し、裁判所が判決を言い渡し、その判決が確定してはじめて、権利者側は給与差押えの申立てをすることができます。
つまり、給与差押えに至るまでには次の段階を経る必要があります。
権利者側が訴訟を提起する。
裁判所が判決を言い渡す。
判決が確定する(控訴期間の経過または控訴審の判決確定)。
確定判決に基づく支払いが行われない。
権利者側が裁判所に給与差押えの申立てを行う。
裁判所が差押命令を発令する。
差押命令が勤務先に送達される。
書面が届いただけでは差し押さえられない
意見照会書、損害賠償請求書、「最後通告書」などが届いただけでは、差押えの根拠となる債務名義は存在しません。
「払わなければ法的手続に移行する」と書かれていても、それは訴訟を提起するという意味であり、直ちに差押えが行われるという意味ではありません。
2. 給与差押えが行われると何が起きるか
勤務先に差押命令が届く
給与差押えが実行されると、裁判所から勤務先に差押命令が送達されます。
勤務先は、差押命令を受け取った後、差し押さえられた金額分を本人に支払わず、権利者側に直接支払うことになります。
勤務先に知られる
差押命令が勤務先に届く以上、勤務先にトレントの著作権侵害で損害賠償を命じられたことが知られます。
差押命令の内容には、事件番号や請求の概要が記載されており、勤務先の担当者がその内容を確認することになります。
差し押さえられる金額
給与の全額が差し押さえられるわけではありません。
民事執行法上、給与の差押えは、手取り額の4分の1が上限です(手取り額が44万円を超える場合は、33万円を超える部分の全額)。
たとえば、手取り額が28万円の場合、差し押さえられるのは7万円で、残り21万円は本人に支払われます。
差押えは支払いが完了するまで続く
差押えは、判決で確定した金額の支払いが完了するまで毎月続きます。
3. 給与差押えを防ぐには
放置しないこと
給与差押えに至る最大の原因は、書面や訴状を放置することです。
損害賠償請求書を無視し続ける。
訴状が届いても答弁書を出さず期日にも出頭しない。
欠席判決で請求額がそのまま認容される。
判決確定後も支払いをしない。
権利者側が給与差押えを申し立てる。
この流れは、どの段階でも対応を始めれば止められます。
放置さえしなければ、給与差押えに至ることは防げます。
弁護士に依頼して対応すること
弁護士に依頼して対応していれば、訴訟が提起された場合でも答弁書を提出し、期日に出頭し、損害額の主張立証を行います。
欠席判決にはなりませんし、損害賠償金額も適正な水準に減額される可能性があります。
判決が出た後に支払いを行えば、差押えは不要になります。
裁判で争えば判決額は提示額より大幅に下がることがある
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
判決額が数万円から十数万円程度であれば、判決後に支払うことは困難ではなく、差押えに至ることを避けられます。
4. 欠席判決と給与差押えの関係
欠席判決が最も危険
給与差押えのリスクが最も高いのは、欠席判決が出た場合です。
欠席判決では、権利者側の請求額がそのまま認容されます。
権利者側が44万円や88万円を請求していれば、その金額がそのまま判決額になります。
弁護士が対応していれば数万円で済んだかもしれない損害賠償金額が、欠席判決では数十万円に確定してしまいます。
確定した判決額を支払えなければ、権利者側は給与差押えを申し立てます。
欠席判決を防ぐ方法
訴状が届いたら、答弁書を提出し、期日に出頭する(または弁護士に依頼して出頭してもらう)ことで、欠席判決は確実に防げます。
訴状が届いた段階で弁護士に相談すれば、間に合います。
5. 差押えを受けてしまった場合
すでに差押えが始まっている場合
すでに給与差押えが始まっている場合でも、弁護士に相談して対応を検討することは可能です。
判決が確定した後であっても、権利者側と交渉して分割払いの合意を得るなどの対応ができれば、差押えが取り下げられることがあります。
ただし、すでに差押えに至っている段階からの対応は、判決前に対応する場合と比べて選択肢が限られます。
6. 刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの著作権侵害で給料を差し押さえられるのは、次のすべての段階を経た後です。
権利者側が訴訟を提起する。
裁判所が判決を言い渡し、判決が確定する。
確定判決に基づく支払いが行われない。
権利者側が裁判所に給与差押えを申し立てる。
書面が届いただけの段階では差し押さえられません。
訴訟が提起された段階でも差し押さえられません。
給与差押えを防ぐには、書面や訴状を放置しないことが最も重要です。
弁護士に依頼して対応すれば、欠席判決を防ぎ、損害賠償金額を適正な水準に減額し、差押えに至ること自体を回避できます。
放置して欠席判決を出されることが、給与差押えに至る最も典型的な経路です。
書面が届いた段階で弁護士に相談してください。
よくある質問
請求書を無視したら給料を差し押さえられますか。
請求書を無視しただけでは差し押さえられません。ただし、放置し続けて訴訟を提起され、欠席判決で請求額が確定し、支払いをしなければ、差押えに至ることがあります。
給与差押えで勤務先にバレますか。
差押命令が勤務先に送達されるため、勤務先に知られます。弁護士に依頼して適切に対応すれば、差押えに至ること自体を防げます。
給与の全額が差し押さえられますか。
全額ではありません。手取り額の4分の1が上限です(手取り額が44万円を超える場合は33万円を超える部分の全額)。
差押えを防ぐにはどうすればよいですか。
書面や訴状を放置しないこと、弁護士に依頼して対応することです。弁護士が対応すれば欠席判決を防げますし、損害賠償金額も適正な水準に減額される可能性があります。
すでに差押えが始まっています。今からでも対応できますか。
対応を検討することは可能ですが、判決前に対応する場合と比べて選択肢は限られます。できるだけ早く弁護士に相談してください。
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