トレントの著作権侵害で信じてはいけないインターネット上の情報|よくある誤解と実際のところ
トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、多くの方がまずインターネットで情報を集めます。しかし、掲示板やSNSに書かれている情報の中には、法的に不正確なものや、事実と異なるものが含まれています。誤った情報を信じて判断を誤ると、取り返しのつかない結果になることがあります。よくある誤解を一つずつ取り上げ、実際のところを解説します。
インターネット上の情報は玉石混交
トレントの著作権侵害に関する情報は、法律事務所のサイト、個人ブログ、掲示板、SNSなど、さまざまな場所に掲載されています。
しかし、書き込んでいる人が弁護士とは限らず、体験談として書かれている内容も正確とは限りません。
ある人にとっては正しかった情報が、別の人の事案では当てはまらないこともあります。
以下では、特に信じてしまう方が多い誤った情報を取り上げます。
1. 「示談金の相場は〇〇万円だから仕方がない」
誤解
「トレントの示談金相場は1作品22万円から44万円、包括和解なら55万円から88万円。これが相場だから、この金額を払うしかない。」
実際のところ
インターネット上で紹介されている「示談金相場」は、権利者側が独自に設定した請求額を並べたものにすぎません。
裁判所が認める損害賠償金額の「相場」ではありません。
裁判例では、1人あたり数万円程度しか認容されなかった事案があり、権利者側の提示額と裁判所の認定額には何倍もの開きがあることがあります。
「相場だから仕方がない」と受け入れる前に、裁判で争った場合の見通しを弁護士に確認すべきです。
2. 「無視すれば来なくなる」
誤解
「請求書を無視して放っておけば、そのうち権利者側が諦めて来なくなる。裁判なんて起こされない。」
実際のところ
すべての案件で訴訟が提起されているわけではありませんが、訴訟を起こされる可能性はあります。
放置した場合に起こり得ることは次のとおりです。
権利者側から繰り返し督促の書面や電話が届く。
訴訟が提起されれば、裁判所から訴状が自宅に届く。
答弁書を提出せず期日にも出頭しなければ、欠席判決で権利者側の請求額がそのまま認容される。
判決確定後に給与差押えに至れば、勤務先にも知られる。
「来なくなる」かもしれませんが、「来る」かもしれません。
放置はリスクが高い対応です。
3. 「VPNを使えばバレない」
誤解
「VPNを使ってトレントを利用すればIPアドレスが隠せるから、絶対にバレない。」
実際のところ
VPN接続が一瞬でも途切れれば、本来のIPアドレスが権利者側の監視システムに記録されます。
VPN導入前の通信は保護されていません。
VPNサービスがログを保存していれば、法的手続を通じて特定される可能性があります。
実際に、VPNを使っていたのに書面が届いたという相談はあります。
「VPNを使えばバレない」は誤りです。
4. 「ダウンロードしただけだから問題ない」
誤解
「自分はダウンロードしただけで、アップロードなんてしていない。ダウンロードだけなら大した問題にはならない。」
実際のところ
トレントの仕組み上、ファイルをダウンロードすると同時に、ダウンロード済みの部分が他の利用者にアップロード(送信)されます。
ダウンロードしているつもりでも、ソフトが自動的にアップロードを行っています。
法的には、アップロード(送信可能化)は著作権侵害にあたり、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金の対象になり得ます。
「ダウンロードしただけ」ではなく、アップロードも行っているというのが実態です。
5. 「払えば終わる」
誤解
「示談金を払えば、それで完全に終わる。もう何も届かない。」
実際のところ
1社と和解しても、別の権利者から追加の請求が届くことがあります。
個別和解の場合は、対象作品以外の作品について同じ権利者から追加請求が来る可能性もあります。
包括和解であればその権利者の全作品が清算されますが、別の権利者の作品は対象外です。
「払えば終わる」は、その1社との関係についてのみ正しく、全体としては終わっていない可能性があります。
6. 「弁護士に頼んでも金額は変わらない」
誤解
「権利者側が減額交渉に応じないと言っているのだから、弁護士に依頼しても金額は変わらない。弁護士費用の分だけ損になる。」
実際のところ
交渉で金額が動かないことは事実としてあり得ます。
しかし、弁護士に依頼する意味は「交渉で減額すること」だけではありません。
裁判で争い、裁判所に著作権法第114条に基づく適正な損害賠償金額を認定してもらうことが、弁護士に依頼する最も大きな意味です。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
弁護士費用を含めても提示額を大幅に下回ることがあり、「弁護士費用の分だけ損」は誤りです。
7. 「刑事告訴は脅しだから無視してよい」
誤解
「刑事告訴するなんて書いてあっても、実際にはしないから無視してよい。ただの脅しだ。」
実際のところ
権利者側が刑事告訴に積極的でない傾向があることは事実ですが、「絶対にしない」とは断言できません。
放置を続けた場合に刑事告訴のリスクがゼロとは言い切れないため、「ただの脅しだから無視してよい」と断定するのは危険です。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
刑事告訴のリスクは、無視するのではなく、弁護士を通じて管理すべきものです。
8. 「掲示板で同じような人が大丈夫だったから自分も大丈夫」
誤解
「掲示板で『無視していたら何も来なかった』『3年経って時効になった』と書いている人がいるから、自分も大丈夫だろう。」
実際のところ
ある人が放置して結果的に何も起きなかったとしても、それは権利者側がたまたま訴訟を提起しなかっただけであり、同じ結果が保証されるわけではありません。
権利者側の方針は時期や事案によって変わります。
過去に訴訟を提起しなかった権利者が、方針を変えて積極的に訴訟を提起するようになることもあります。
他人の体験談は、その人の事案でたまたまそうなっただけであり、自分の事案に当てはまるとは限りません。
9. 「時効が来れば何も払わなくて済む」
誤解
「3年間逃げ切れば時効が成立して、何も払わなくて済む。」
実際のところ
民事の損害賠償請求権の消滅時効は、権利者が損害と加害者を知った時から3年です。
この期間内に権利者側が訴訟を提起すれば、時効は中断されます。
また、時効期間中に訴訟を提起された場合、放置していれば欠席判決で請求額がそのまま認容されるリスクがあります。
「3年逃げ切る」ことを前提にした対応は、その間のリスクを全て引き受けるということであり、安全な選択とはいえません。
まとめ
トレントの著作権侵害に関してインターネット上に広まっている情報の中には、法的に不正確なものが含まれています。
「示談金相場」は権利者側の設定額であり、裁判所が認める金額ではありません。
「無視すれば来なくなる」は保証されておらず、放置には欠席判決や給与差押えのリスクがあります。
「VPNを使えばバレない」は誤りであり、実際にバレた事例があります。
「ダウンロードしただけ」ではなく、トレントの仕組み上アップロードも行っています。
「弁護士に頼んでも金額は変わらない」は誤りであり、裁判で争えば大幅に下がることがあります。
他人の体験談がそのまま自分に当てはまるとは限りません。
インターネット上の情報を判断材料にする場合は、その情報が法的に正確かどうかを弁護士に確認してください。
よくある質問
インターネットで調べた情報を信じてもよいですか。
法律事務所のサイトであっても、対応方針が事務所によって異なるため、情報の正確さは一律ではありません。掲示板やSNSの情報は特に注意が必要です。弁護士に直接相談して確認することをおすすめします。
掲示板で「放置しても大丈夫だった」と書いている人がいますが、信じてよいですか。
その人の事案でたまたまそうなっただけであり、同じ結果が保証されるわけではありません。権利者側の方針は時期や事案によって変わります。
「示談金相場」として紹介されている金額は正しいですか。
権利者側の設定額を並べたものにすぎず、裁判所が認める損害賠償金額ではありません。裁判例では提示額を大幅に下回る金額が認定されています。
弁護士に依頼しても金額が変わらないと聞きましたが本当ですか。
交渉で変わらないことはあり得ますが、裁判で争えば変わります。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
VPNを使っていればバレないと聞きましたが本当ですか。
バレることがあります。VPN接続の途切れ、導入前の通信、ログの保存などにより、IPアドレスが特定されるリスクがあります。
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