トレントの著作権侵害で弁護士なしで裁判に対応できるか|自分で争う場合に立ちはだかる壁
トレントの著作権侵害で権利者側から損害賠償を請求されたとき、「弁護士に依頼すると費用がかかるから、自分で対応できないか」と考える方がいます。裁判は弁護士なしでも本人が対応する権利があります。しかし、トレントの著作権侵害の裁判で弁護士なしに適正な結果を得ることは、現実的には極めて困難です。その理由を具体的に解説します。
本人訴訟は法律上は認められている
日本の裁判制度では、弁護士に依頼せず、本人が裁判に出頭して対応すること(本人訴訟)は認められています。
弁護士に依頼する義務はなく、答弁書の作成も、準備書面の提出も、期日への出頭も、本人が行うことは法律上可能です。
しかし、法律上可能であることと、適正な結果を得られるかどうかは別の問題です。
1. 著作権法第114条の計算式を自分で主張できるか
損害額の争い方を知らなければ減額されない
トレントの著作権侵害で損害賠償金額を争うためには、著作権法第114条の計算式に基づいて、権利者側の主張する金額がなぜ不当に高いのかを具体的に反論する必要があります。
争うべき要素は主に次の3点です。
1作品あたりの利益額(DVD価格ではなくデジタル配信の利益額を基準にすべきこと)。
ダウンロード回数(全期間ではなく送信可能期間に限定し、共有比率で按分すべきこと)。
送信可能期間(ソフトを起動していた期間に限定すべきこと)。
これらの論点を知らず、「金額が高すぎると思います」とだけ主張しても、裁判所は減額の根拠がないと判断する可能性があります。
計算式を知っていても、主張の組み立て方が分からなければ同じ
著作権法第114条の条文を読んだだけでは、裁判所に認めてもらえる主張を組み立てることはできません。
条文の解釈、裁判例の引用、証拠との対応関係を、裁判所が判断しやすい形で準備書面にまとめる必要があります。
この作業には、著作権法の知識だけでなく、民事訴訟の実務経験が必要です。
2. 相手方には専門の弁護士がついている
権利者側は大量の訴訟を処理している
権利者側の代理人弁護士事務所は、トレントの著作権侵害事案を大量に処理しており、この分野に特化した主張のテンプレートと訴訟ノウハウを持っています。
相手方の準備書面は、裁判所が認めやすい形で整理されており、証拠も体系的に提出されています。
本人訴訟では対等に争えない
弁護士なしで裁判に出頭した場合、相手方の弁護士が提出した準備書面に対して、期限内に適切な反論を準備しなければなりません。
法律用語の意味、証拠の読み方、裁判手続の進め方を理解していなければ、相手方の主張に対して的確に反論することは困難です。
裁判所は中立の立場であり、「あなたの方が弱い立場だから助けてあげよう」とはしてくれません。
本人訴訟であっても、弁護士がついている側と同じ水準の主張立証を求められます。
3. 裁判手続の実務的なハードル
準備書面の作成
裁判では、口頭弁論期日の前に準備書面を提出する必要があります。
準備書面は、法律上の主張と事実上の主張を区別し、争点を明確にし、証拠との対応関係を示した文書です。
日常の文章とは異なる形式と論理構成が求められます。
書き方が分からなければ、主張すべきことを主張できないまま期日を迎えることになります。
証拠の提出と整理
自分の主張を裏づける証拠を、裁判所の定める形式で提出する必要があります。
証拠説明書の作成、証拠番号の付け方、原本と写しの扱いなど、裁判手続に慣れていなければ分からないことが多いです。
期日への出頭
裁判の期日は平日の日中に行われます。
トレントの著作権侵害の訴訟は、権利者側が東京地方裁判所や契約者の住所地の裁判所に提起します。
仕事をしている方にとって、平日の日中に裁判所に出頭し続けることは負担が大きいです。
弁護士に依頼すれば、期日への出頭はすべて弁護士が行い、本人が裁判所に行く必要は基本的にありません。
4. 弁護士なしで対応した場合に起きること
反論が不十分なまま判決が出る
著作権法第114条の計算式に基づく反論を行わなければ、裁判所は権利者側の主張をそのまま、または一部修正した程度で認定する可能性があります。
弁護士が対応していれば数万円から十数万円程度に減額されるところが、弁護士なしでは数十万円の判決が出てしまうということがあり得ます。
答弁書すら出せず欠席判決になる
準備書面の作成方法が分からず、答弁書を提出できないまま期日を迎えてしまう方がいます。
答弁書を提出せず期日にも出頭しなければ、欠席判決で権利者側の請求がそのまま認容されるおそれがあります。
不利な和解に応じてしまう
裁判の途中で裁判所から和解が勧告されることがあります。
弁護士がいなければ、和解条件が適正かどうかを判断する材料がなく、裁判官から提案された金額をそのまま受け入れてしまうことがあります。
弁護士がいれば、裁判例と計算式に基づいて和解金額の妥当性を検討し、不利な和解であれば拒否して判決を求めるという判断ができます。
5. 弁護士費用は「コスト」ではなく「投資」
弁護士費用を含めても提示額より安くなることがある
弁護士に依頼すると費用がかかることは事実です。
しかし、弁護士に依頼して裁判で争った場合の損害賠償金額+弁護士費用の合計が、権利者側の提示額を下回るのであれば、弁護士費用は節約ではなくむしろ経済的に合理的な支出です。
権利者側の提示額が44万円で、裁判で争った結果の損害賠償金額が数万円であれば、弁護士費用を含めても44万円を大幅に下回ることがあり得ます。
弁護士なしで対応した場合のコスト
弁護士なしで本人訴訟を行った場合、弁護士費用は節約できますが、適切な反論ができなければ損害賠償金額が高くなります。
弁護士費用を節約した結果、損害賠償金額で数十万円多く支払うことになれば、節約した意味がありません。
6. 当事務所の対応
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
弁護士に依頼すれば、答弁書・準備書面の作成、証拠の整理、期日への出頭をすべて弁護士が対応します。
本人が裁判所に行く必要は基本的にありません。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの著作権侵害で弁護士なしに裁判に対応することは、法律上は可能ですが、適正な結果を得ることは現実的には極めて困難です。
著作権法第114条の計算式に基づく反論を行わなければ、損害賠償金額は減額されません。
相手方には大量の訴訟を処理してきた専門の弁護士がついています。
準備書面の作成、証拠の整理、期日への出頭など、実務的なハードルが多数あります。
弁護士なしで対応した場合、反論が不十分なまま高額の判決が出たり、欠席判決で請求が認容されるリスクがあります。
弁護士費用を含めても、権利者側の提示額を下回ることがあり、弁護士費用は経済的に合理的な支出になり得ます。
弁護士費用を節約するために弁護士なしで対応するのは、結果的にかえって高くつく可能性があります。
まずは弁護士に相談して、裁判で争った場合の見通しを確認してください。
よくある質問
弁護士なしで裁判に対応できますか。
法律上は可能ですが、著作権法第114条の計算式に基づく反論を適切に行うのは弁護士なしでは困難です。相手方には専門の弁護士がついており、対等に争うのは現実的ではありません。
弁護士費用がもったいないので自分で対応したいです。
弁護士費用を節約しても、反論が不十分で損害賠償金額が高くなれば、結果的にかえって高くつきます。弁護士費用を含めた総額と、弁護士なしで対応した場合の損害賠償金額を比較してください。
裁判所は本人訴訟の当事者を助けてくれますか。
裁判所は中立の立場であり、一方の当事者を助けることはありません。弁護士がついている側と同じ水準の主張立証を求められます。
弁護士に依頼すれば裁判所に行かなくて済みますか。
基本的に行く必要はありません。答弁書・準備書面の作成、期日への出頭をすべて弁護士が対応します。
訴状が届いてから弁護士に依頼しても間に合いますか。
間に合います。ただし、答弁書の提出期限があるため、訴状が届いたらできるだけ早く弁護士に相談してください。
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