トレントの示談金は分割払いできるのか|分割払いの和解に潜むリスクと注意点
トレントの著作権侵害で示談金を請求されたが、提示された金額を一括で払う余裕がない。「分割払いなら応じられるかもしれない」と考える方は少なくありません。権利者側が分割払いの和解に応じることはあるのか。分割払いの和解条項にはどのようなリスクが含まれているのか。分割払いを検討する前に知っておくべきことを解説します。
示談金が高すぎて一括では払えない
権利者側から提示される示談金は、1作品44万円、包括和解88万円といった金額になることがあります。
この金額を一括で支払う余裕がない場合、「分割払いなら応じられる」と考えるのは自然なことです。
権利者側が分割払いの和解に応じることはあり得ます。
しかし、分割払いの和解条項には、一括払いにはないリスクが含まれていることがあり、内容を理解しないまま署名すると思わぬ不利益を受けることがあります。
1. 分割払いの和解条項に含まれていることがある条件
期限の利益喪失条項
分割払いの和解条項には、「支払を遅滞したときは当然に期限の利益を喪失する」という条項が含まれていることがあります。
これは、分割払いの途中で1回でも支払いが遅れた場合、残りの全額を直ちに一括で支払わなければならなくなるという意味です。
たとえば、88万円を月4万円の22回払いで和解した場合、10回目の支払いが遅れれば、残りの48万円を直ちに一括で請求されることになります。
遅延損害金
期限の利益を喪失した場合、残額に対して年14.6%などの遅延損害金が発生する条項が含まれていることがあります。
残額が48万円で3か月遅れた場合、遅延損害金だけで約1万7,500円が加算されます。
遅れれば遅れるほど、支払総額は膨らみます。
刑事告訴の条件
分割払いの和解条項の中で最も注意すべきなのが、刑事告訴に関する条件です。
「期限の利益を喪失することなく全て履行したときは、本件に関して刑事告訴を行わない」と記載されていることがあります。
裏を返せば、分割払いの途中で1回でも支払いが遅れて期限の利益を喪失した場合、刑事告訴をしないという約束は適用されなくなる可能性があるということです。
分割払いで和解した場合、支払いが遅れるだけで刑事告訴のリスクが復活するという条件になっています。
秘密保持条項
和解内容を第三者に話してはいけないという秘密保持条項が含まれていることがあります。
2. 分割払いのリスクを整理する
1回でも遅れると状況が一変する
分割払いの最大のリスクは、1回の遅延で残額一括請求、遅延損害金、刑事告訴リスクの復活が同時に発生し得ることです。
月々の支払いを数年間にわたって遅れなく続けることは、生活の変化(転職、病気、家族の事情等)を考えれば容易ではありません。
支払総額が増える可能性がある
分割払いの和解条項によっては、一括払いの場合と比べて和解金額自体が高く設定されていることがあります。
また、遅延損害金が加算されれば、最終的な支払総額はさらに増えます。
長期間にわたってストレスが続く
分割払いを選ぶと、支払いが完了するまでの間、毎月の支払いを続けなければなりません。
1回でも遅れれば上述のリスクが発生するため、支払いが完了するまでの数か月から数年間、常にプレッシャーを感じ続けることになります。
3. そもそも、その金額で和解すべきなのか
提示額が適正でない可能性がある
分割払いを検討している方の多くは、「提示された金額は払わなければならないが、一括では払えない」と考えています。
しかし、提示された金額が裁判で認められる損害賠償金額と比べて適正かどうかは、別に検討すべき問題です。
権利者側の提示額は法律で決まった金額ではなく、裁判例では1人あたり数万円程度しか認容されなかった事案があります。
裁判で争えば分割払いの必要がなくなることもある
44万円や88万円を分割で払おうとしているが、裁判で争えば数万円から十数万円程度で解決できるのであれば、そもそも分割払いの和解に応じる必要がありません。
裁判で認定される金額であれば一括で支払える、ということもあり得ます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
分割払いの検討は、金額の妥当性を確認した後に
分割払いを検討するのは、提示された金額が裁判で認められる損害賠償金額に照らして妥当であると確認した後にすべきです。
金額の妥当性を確認しないまま「分割なら払える」と考えて和解に応じると、本来払う必要のなかった金額を長期間かけて支払い続けることになりかねません。
4. 分割払いで和解する場合に確認すべきこと
金額の妥当性を検討したうえで、なお分割払いでの和解が合理的と判断した場合は、和解条項の内容を弁護士に確認してから署名してください。
期限の利益喪失条項の有無と条件。
遅延損害金の利率。
刑事告訴に関する条件(全額完済が条件になっているか)。
最後まで遅れずに支払い切れる見込みがあるか。
和解条項は権利者側が作成したテンプレートであり、利用者側に不利な条件が含まれていることがあります。
署名する前に必ず弁護士に内容を確認してください。
5. 刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
分割払いの和解条項における刑事告訴の条件に不安がある場合も、弁護士に相談してください。
まとめ
トレントの示談金を分割払いで和解することは可能ですが、分割払い特有のリスクがあります。
1回でも支払いが遅れると、残額の一括請求、遅延損害金、刑事告訴リスクの復活が同時に発生し得ます。
支払いが完了するまで数か月から数年間、プレッシャーが続きます。
そもそも提示された金額が適正かどうかを確認すべきです。
裁判で争えば数万円から十数万円程度で解決できる可能性があり、その金額であれば一括で支払えることもあります。
分割払いの検討は、金額の妥当性を確認した後に行うべきです。
示談金が高すぎて払えないと感じたら、分割払いを検討する前に、弁護士に相談して提示額が適正かどうかを確認してください。
よくある質問
示談金を分割払いにできますか。
権利者側が応じれば分割払いでの和解は可能です。ただし、分割払いの和解条項には、期限の利益喪失、遅延損害金、刑事告訴の条件など、利用者側に不利な条件が含まれていることがあります。
分割払いで1回遅れたらどうなりますか。
期限の利益喪失条項がある場合、残額を直ちに一括で支払う義務が生じます。遅延損害金も発生し、刑事告訴をしないという条件が適用されなくなる可能性があります。
分割払いと裁判で争うのとどちらがよいですか。
提示額が裁判で認められる損害賠償金額を大幅に上回っているのであれば、分割で提示額を払い続けるよりも裁判で争った方が総額は低くなることがあります。弁護士に見通しを確認してください。
示談金が高すぎて一括でも分割でも払えません。
提示された金額が裁判で認められる金額と大幅に異なる可能性があります。裁判で争えば数万円から十数万円程度に下がることがあり、その金額であれば支払える場合もあります。弁護士に相談してください。
分割払いの和解条項に署名する前に弁護士に相談すべきですか。
相談すべきです。和解条項には利用者側に不利な条件が含まれていることがあり、内容を理解しないまま署名すると取り返しがつかなくなります。
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