トレントで使っていたパソコンがもう手元にない|証拠がなくても対応できるのか
トレントの著作権侵害で書面が届いたが、当時使っていたパソコンはすでに買い替えた、壊れて処分した、初期化してしまった。ダウンロードしたファイルも残っていない。「証拠がないから何も分からない」「パソコンがないと不利になるのか」と不安に感じる方へ。パソコンが手元にない場合の対応について解説します。
パソコンがなくても対応は可能
トレントの著作権侵害で書面が届いた時点で、当時使っていたパソコンが手元にないという方は少なくありません。
書面が届くまでには数か月から1年以上かかることがあるため、その間にパソコンを買い替えたり、故障して処分したり、初期化したりしていることは珍しくありません。
「パソコンがないと何も対応できないのではないか」「証拠を消したと思われるのではないか」と不安に感じるかもしれませんが、パソコンが手元にないこと自体が直ちに不利になるわけではありません。
1. 権利者側の証拠はパソコンの中にはない
権利者側が持っている証拠
権利者側が著作権侵害の証拠として保有しているのは、主に次の情報です。
IPアドレス(どの回線から接続していたか)。 タイムスタンプ(いつ接続していたか)。 対象ファイルのハッシュ値(どのファイルが共有されていたか)。
これらはすべて、権利者側の監視システムが記録したデータであり、利用者のパソコンの中にあるデータではありません。
つまり、利用者のパソコンが手元にあるかないかにかかわらず、権利者側はこれらの記録に基づいて請求を行います。
パソコンの提出を求められることは通常ない
トレントの著作権侵害に関する民事の損害賠償請求において、利用者側がパソコンを提出して調べてもらうという手続は、通常行われません。
権利者側は、自らの監視システムの記録とプロバイダからの開示情報をもとに請求を行っており、利用者のパソコンの中身を確認する必要がないためです。
2. パソコンが手元にないことのデメリット
自分の利用状況を確認できなくなる
パソコンが手元にない場合のデメリットは、自分自身の利用状況を確認できなくなるという点です。
どの作品をダウンロードしていたのか。 いつからいつまでトレントのソフトを起動していたのか。 自動起動の設定はどうなっていたのか。 ダウンロードしたファイルはまだ残っていたのか、削除していたのか。
これらの情報は、損害額の主張立証において有利に働くことがある事実です。 パソコンが手元にあれば、これらを具体的に確認できますが、手元にない場合は記憶に頼るしかなくなります。
不利になるかどうかは状況による
パソコンがないこと自体が裁判で不利に評価されるわけではありません。
ただし、利用状況を具体的に示せる方が、送信可能な状態にしていた期間を限定する主張がしやすくなります。 パソコンがない場合でも、記憶やプロバイダの記録など、他の情報から利用状況を整理することは可能です。
3. パソコンがなくても損害額の主張立証はできる
損害額の算定に必要なのは「パソコンの中身」ではない
損害額の算定は、著作権法第114条に基づいて行われます。
損害額 = ダウンロード回数 × 1ダウンロードあたりの利益額
この計算式の各要素は、権利者側が提出する証拠やプロバイダの記録をもとに検討します。 利用者のパソコンの中身を直接確認しなければ主張立証ができない、ということはありません。
当事務所の対応
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
パソコンが手元にない依頼者の案件も取り扱っており、パソコンがないことだけを理由に対応できなかったケースはありません。
4. 「証拠を消した」と思われないか
パソコンの処分=証拠隠滅ではない
「パソコンを処分してしまったら、証拠を隠滅したと思われるのではないか」と心配する方がいます。
しかし、パソコンの買い替えや処分は日常的に行われることであり、書面が届く前に行ったパソコンの処分が証拠隠滅と評価されることは通常ありません。
ただし、書面が届いた後にパソコンを慌てて初期化・処分することは、証拠隠滅の意図を疑われる可能性がゼロではないため、避けた方が無難です。
今パソコンが手元にあるなら残しておく
現在使っているパソコンにトレント関連のデータが残っている場合は、削除せずに残しておいてください。 自分の利用状況を確認できるデータは、損害額の主張立証に役立つことがあります。
5. パソコンがない場合にできる準備
パソコンが手元にない場合でも、次の情報を記憶の範囲で整理しておくと、弁護士に相談する際に役立ちます。
いつ頃からいつ頃までトレントを利用していたか。 いつ頃ソフトをアンインストールしたか。 いつ頃パソコンを買い替えた(または処分した)か。 ダウンロードしていた作品の傾向(ジャンル、おおよその数)。 自動起動設定にしていたかどうか。
正確に覚えていなくても、おおよその時期や傾向が分かれば、対応方針の検討に十分役立ちます。
まとめ
トレントで使っていたパソコンが手元にない場合でも、対応は可能です。
権利者側の証拠はパソコンの中ではなく、権利者側の監視システムの記録にあります。 パソコンの提出を求められることは通常ありません。 パソコンがない場合のデメリットは、自分の利用状況を確認できなくなるという点ですが、記憶や他の情報から整理することは可能です。 損害額の主張立証は、パソコンがなくても行えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
パソコンがないからと諦めたり、放置したりするのではなく、覚えている範囲で利用状況を整理したうえで、弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
よくある質問
パソコンを処分してしまいましたが、対応できますか。 対応できます。権利者側の証拠はパソコンの中ではなく、監視システムの記録にあるため、パソコンが手元にないことだけを理由に対応できなくなるわけではありません。
パソコンを処分したことが証拠隠滅になりませんか。 書面が届く前の日常的なパソコンの買い替えや処分が、証拠隠滅と評価されることは通常ありません。ただし、書面が届いた後に慌てて処分することは避けた方が無難です。
パソコンがない場合、損害額を争えませんか。 争えます。損害額の算定は権利者側の証拠やプロバイダの記録をもとに行われるため、利用者のパソコンがなくても主張立証は可能です。当事務所では、パソコンが手元にない依頼者の案件も取り扱っています。
今のパソコンにデータが残っている場合、消した方がよいですか。 消さない方がよいです。利用状況を確認できるデータは、送信可能な状態にしていた期間を限定する主張に役立つことがあります。
パソコンがなくても弁護士に相談できますか。 できます。覚えている範囲で利用時期やダウンロードしていた作品の傾向を整理していただければ、対応方針の検討は十分に可能です。
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