窪田総合法律事務所から届く「最後通告書」の読み方|株式会社アルファーインターナショナルの44万円請求と裁判で争った場合の見通し

トレントの著作権侵害で、株式会社アルファーインターナショナルの代理人として窪田総合法律事務所から「最後通告書」が届くことがあります。到着後5日以内に44万円、刑事告訴の予告。しかし、相手方が個別の条件交渉に応じる保証はありません。この44万円が適正な金額なのか、裁判で争った場合にどうなるのかを、裁判所が用いる計算式と裁判例に基づいて解説します。

44万円を言われるがまま支払うべきか

トレントの著作権侵害に関して、株式会社アルファーインターナショナル(AV制作会社)の代理人として、窪田総合法律事務所から書面が届くことがあります。

このケースでは、まず「通知書」が届き、それに対応しなかった場合に、次の段階として「最後通告書」と題された書面が内容証明郵便で届くという流れになっています。

書面には「到着後5日以内に44万円を支払え」「支払わなければ刑事告訴する」と書かれています。 短い期限、高額な請求、刑事告訴の予告。これを見て、焦って支払ってしまう方がいます。

しかし、この44万円は適正な金額でしょうか。 そして、相手方と交渉して減額してもらうことはできるのでしょうか。

しかし、相手方が個別の条件交渉に応じる保証はありません。 「高い」と感じても、交渉で下がるとは限らないのが現状です。

では、言われた金額をそのまま払うしかないのかというと、そうではありません。 裁判で争った場合に裁判所が認める損害額は、この44万円より大幅に低くなる可能性があります。 よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。

本記事では、この書面の内容を分析したうえで、裁判所が損害額をどのように計算するのかを具体的に解説します。

目次

1. 書面に書かれている内容

窪田総合法律事務所から届く「最後通告書」には、おおむね次のような内容が記載されています。

先に送付した「通知書」を受領しているにもかかわらず、支払いも連絡もなく無視し続けている。 このような態度は「法を犯した者の態度としてあまりに不誠実」であり、「許すことができない」。 本書面到着後5日以内に44万円を支払うよう求める。 期限までに支払いも連絡もない場合、「著作権法違反事犯として、管轄の警察署に対して刑事告訴を行う予定」である。 通知会社(アルファーインターナショナル)に直接連絡しないよう求めている。

2. 個別の条件交渉に応じる保証はない

「高いから値引きしてほしい」が通じるとは限らない

この書面の金額は、権利者側が一方的に設定した定額です。 「下記口座まで金44万円をお支払いください」と指定されており、交渉の余地を示す記載はありません。

トレントの事案では、権利者側が定型的な金額を設定し、個別の事情に応じた減額交渉に応じないケースが増えています。 弁護士を立てて交渉を試みても、金額が動かないことがあります。

つまり、「交渉で減額してもらう」という選択肢が使えるかどうかは、相手方次第であり、保証はないということです。

だからこそ、裁判で争うことの意味がある

交渉で減額できないのであれば、選択肢は「44万円をそのまま払う」か「裁判で争う」かに近くなります。

ここで重要なのが、裁判で争った場合に裁判所が認める損害額は、この44万円よりも大幅に低くなる可能性があるという点です。

3. 裁判所はどのように損害額を計算するのか

著作権法第114条第1項の計算式

トレントの著作権侵害の損害額は、著作権法第114条の規定に基づいて算定されます。

裁判で争った場合に用いられる基本的な計算式は、次のとおりです。

ダウンロード回数 × 1ダウンロードあたりの利益額 = 損害額

ここで重要なのは、「販売価格」ではなく「利益額」が基準になるという点です。

「販売価格」と「利益額」は違う

権利者側は、DVD版やBlu-ray版の販売価格(数千円)を基準にして損害額を主張することがあります。 しかし、裁判所は物理メディアの販売価格をそのまま使うのではなく、ダウンロード・ストリーミング形式の販売価格を基準にし、さらにそこから利益率を掛けて利益額を算出します。

たとえば、東京地裁令和5年8月31日判決の事案では、デジタルコンテンツの配信に関する約定配信コンテンツ料率(38%)を適用して利益額を算定しました。

販売価格が1,450円の作品であれば、利益額は1,450円×38%=約551円です。 販売価格をそのまま使う場合と比べて、基礎となる単価が大きく変わります。

ダウンロード回数の認定も厳格

権利者側は、対象ファイルがアップロードされてからの全期間のダウンロード回数を基礎にして損害を主張することがあります。

しかし、裁判所は、その利用者がトレントを通じて送信可能な状態にしていた期間に限定してダウンロード回数を認定する傾向があります。 多くの場合、プロバイダから意見照会書を受け取ってトレントの利用を停止するまでの期間に絞られます。

全期間のダウンロード回数が数千回であっても、その利用者が送信可能な状態にしていた期間のダウンロード回数はごく限られることがあります。

4. 裁判例ではいくらと認定されているか

知財高裁令和4年4月20日判決

この判決では、1人あたり約1万6,000円から6万円台の損害が認容されました。

東京地裁令和5年8月31日判決

権利者が278万円を超える損害を主張したのに対し、裁判所が認めた損害賠償債務は3万円を超えないと判断されました。

この事案では、権利者は全期間のダウンロード回数(5,053回)と販売価格を基礎に損害を計算していましたが、裁判所は利用者が送信可能な状態にしていた期間に限定し、利益率も適用したうえで、3万円を超えない金額を認定しています。

44万円との比較

これらの裁判例で認定された損害額は、いずれも44万円を大幅に下回っています。

もちろん、裁判例の事案と個別の事案は異なりますし、ダウンロードしていた作品数や期間が多ければ損害額は上がります。 しかし、1作品について短期間の利用であれば、裁判で認められる損害額が44万円に達する可能性は低いと考えられます。

5. よほどの作品数と日数でない限り、裁判で争う方が得策

1作品・短期間の利用であれば

トレントの利用が1作品のみで、利用期間も短かった場合、裁判所が認める損害額は裁判例に照らして数万円程度にとどまる可能性があります。

弁護士費用を含めても、44万円をそのまま支払うより総額が低くなるケースは十分にあり得ます。

作品数が多い場合・長期間の利用の場合

逆に、多数の作品を長期間にわたってダウンロードし、送信可能な状態を続けていた場合は、損害額が積み上がる可能性があります。 この場合は、裁判で争った方が有利とは限らず、個別の検討が必要です。

判断の分かれ目

裁判で争うべきかどうかの判断は、主に次の点にかかります。

対象作品が何作品か。 送信可能な状態にしていた期間がどの程度か。 弁護士費用と、44万円をそのまま支払った場合との比較。

この判断は、裁判例と計算式を踏まえて弁護士に確認するのが確実です。

6. 「5日以内」という期限と「刑事告訴」の予告

5日という期限

書面には「本書面到着後5日以内」に支払うよう記載されています。

この期限は権利者側が一方的に設定したものであり、法律で定められた期限ではありません。 5日を過ぎたからといって、直ちに何かが確定するわけではありません。

ただし、放置してよいという意味ではなく、早めに弁護士に相談して対応方針を決めることは重要です。

刑事告訴の予告

「著作権法違反事犯として、管轄の警察署に対して刑事告訴を行う予定です。」と記載されています。

著作権法違反は刑事罰の対象です(10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金)。 この点は事実です。

しかし、書面に「刑事告訴を行う予定」と記載されていることと、実際に告訴が行われるかどうかは別の問題です。 告訴が行われたとしても、警察が捜査を開始するか、検察が起訴するかは、さらに別の判断です。

「払わなければ必ず逮捕される」と読むのは正確ではありません。 他方で、「どうせ告訴しないだろう」と軽視するのも危険です。

重要なのは、刑事告訴の予告に動揺して、金額の妥当性を検討しないまま支払ってしまわないことです。

7. 「法を犯した者の態度としてあまりに不誠実」という表現

書面には「このような貴殿の態度は、法を犯した者の態度としてあまりに不誠実であり、通知会社としては貴殿の行為を許すことができません。」と記載されています。

先行する通知書を無視したことに対する非難ですが、「法を犯した者」「不誠実」「許すことができない」といった表現は、法的な主張というより、感情的な圧力を与える書き方です。

書面の表現に動揺するのではなく、記載されている請求金額が裁判で認められる損害額と比べて妥当かどうかに焦点を当てて検討することが重要です。

8. この書面が届いた場合にどうすべきか

5日の期限に慌てて支払わない

44万円という金額は、裁判で認められる損害額と比べて高い可能性があります。 5日という短い期限に焦って、金額の妥当性を確認しないまま支払うのは避けるべきです。

弁護士に相談し、裁判で争った場合の見通しを確認する

「最後通告書」の段階であっても、弁護士に依頼することは可能です。 弁護士に依頼すれば、以後の窓口が弁護士になり、自宅への連絡を止めることができます。

そのうえで、対象作品の数、利用期間、裁判所が用いる計算式に当てはめた場合の見通しを確認し、44万円を支払うのと裁判で争うのとでどちらが有利かを判断することになります。

相手方が個別の条件交渉に応じる保証はない以上、「交渉で少し下げてもらう」という中間の選択肢は期待しにくいです。 だからこそ、裁判で争った場合の見通しを正確に把握することが判断の前提になります。

放置しない

「最後通告書」が届いているということは、すでに先行する通知書を無視した状態です。 ここからさらに放置すれば、訴訟に進む可能性があります。

最初の通知書の段階で弁護士に相談して窓口を切り替えていれば、「最後通告書」が自宅に届くこと自体を避けられた可能性があります。

まとめ

窪田総合法律事務所から株式会社アルファーインターナショナルの代理人として届く「最後通告書」には、到着後5日以内に44万円を支払えという請求と、支払わなければ刑事告訴を行うという予告が記載されています。

相手方が個別の条件交渉に応じる保証はなく、「交渉で減額してもらう」という選択肢が使えるとは限りません。

しかし、裁判で争った場合に裁判所が認める損害額は、44万円より大幅に低くなる可能性があります。 裁判所は、販売価格ではなく利益額を基準にし、ダウンロード回数も利用者が送信可能な状態にしていた期間に限定して認定します。 裁判例では、1人あたり数万円程度の損害しか認められなかった事案があります。

よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。

5日の期限や刑事告訴の予告に動揺して、金額の妥当性を検討しないまま支払うことは避けるべきです。 まずは弁護士に相談し、裁判で争った場合の見通しを確認したうえで、対応方針を判断することをおすすめします。

よくある質問

44万円を交渉で減額してもらうことはできますか。 相手方が個別の条件交渉に応じる保証はないため、交渉で減額を引き出せるとは限りません。減額を目指すのであれば、裁判で争うことが現実的な選択肢になります。

裁判で争った場合、損害額はいくらになりますか。 裁判所は、ダウンロード回数×1ダウンロードあたりの利益額で損害額を算定します。裁判例では1人あたり数万円程度の損害しか認められなかった事案があり、44万円がそのまま認められる可能性は、1作品・短期間の利用であれば低いと考えられます。

刑事告訴は本当に行われますか。 権利者側の方針や事案の内容によります。書面に「刑事告訴を行う予定」と記載されていることと、実際に告訴が行われるかどうかは別の問題です。ただし、「どうせ告訴しないだろう」と軽視するのも危険です。

「最後通告書」の5日の期限を過ぎてしまいました。もう手遅れですか。 5日の期限は権利者側が設定したものであり、期限を過ぎたからといって直ちに何かが確定するわけではありません。ただし、放置を続けることはリスクが高いため、早めに弁護士に相談して対応を始めることが重要です。

「最後通告書」の段階から弁護士に依頼しても間に合いますか。 間に合います。弁護士に依頼すれば、以後の連絡窓口が弁護士になり、自宅への書面や電話を止めることができます。そのうえで、裁判で争った場合の見通しを確認し、対応方針を判断することになります。

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