店舗や事業所のWi-Fiでトレントが使われて意見照会書が届いた|経営者自身は使っていない場合の対応

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店舗や事業所のWi-Fiでトレントが使われて意見照会書が届いた|経営者自身は使っていない場合の対応

飲食店やカフェ、美容室、宿泊施設、クリニック、事務所などで、客や従業員向けにWi-Fiを提供している事業者のもとに、プロバイダからトレントの著作権侵害に関する意見照会書が届くことがあります。経営者自身はトレントを使ったことがないのに、なぜ自分のところに届いたのか。事業者として何を求められているのか。どう対応すべきなのかを解説します。

なぜ経営者のところに書面が届くのか

プロバイダからの意見照会書は、問題となった通信に使われたインターネット回線の契約者に届きます。

店舗や事業所のWi-Fiは、事業者名義または経営者個人名義で契約されていることが一般的です。
そのため、客や従業員がそのWi-Fiに接続してトレントを使った場合、回線の契約者である事業者のもとに書面が届きます。

経営者自身がトレントを使ったかどうかとは関係なく、回線の契約者だから届いたということです。

1. 届いた書面で何を求められているのか

開示に同意するかどうかの確認

プロバイダから届く意見照会書は、権利者側が「この回線の契約者の情報を開示してほしい」と請求していることを伝え、開示に同意するかどうかを確認するための書面です。

この段階では、まだ損害賠償を請求されているわけではありません。

開示されると何が起きるか

開示に同意した場合、または裁判所の判断で開示が認められた場合、事業者の名称や住所が権利者側に渡ります。

その後、権利者側から事業者宛てに損害賠償請求書が届く可能性があります。

権利者側は、通信を行ったのが店舗の客や従業員であることを把握していない場合が多く、回線の契約者に対して請求してきます。

2. 経営者が損害賠償責任を負うのか

通信を行ったのは経営者ではない

トレントの著作権侵害に基づく損害賠償責任を負うのは、実際にトレントを使ってファイルを共有した利用者です。

経営者自身がトレントを使っていないのであれば、経営者は著作権侵害を行った本人ではありません。

回線を提供していたことで責任を問われるか

客や従業員にWi-Fiを提供していたことだけを理由に、経営者が著作権侵害の責任を負うと判断される可能性は低いと考えられます。

ただし、店舗のWi-Fiでトレントが繰り返し使われていることを知りながら放置していたような事情があれば、権利者側から責任を主張される余地がまったくないとは言い切れません。

従業員が使っていた場合

従業員が業務時間中に事業所のWi-Fiでトレントを使っていた場合、事業者が使用者責任を問われるかどうかが論点になることがあります。

トレントの利用は通常、業務とは無関係の私的な行為であり、使用者責任が認められる可能性は高くないと考えられますが、事案の具体的な事情によります。

3. 意見照会書への回答

不同意で回答する理由がある

経営者自身がトレントを使っておらず、不特定多数の客や従業員が利用するWi-Fiであった場合は、「不同意」で回答する合理的な理由があります。

単に不同意にチェックするだけでなく、理由を具体的に記載してください。

当該回線は店舗(事業所)で客や従業員向けに提供しているWi-Fiであること。
不特定多数の者が接続できる環境であること。
契約者である経営者自身は対象の通信を行っていないこと。

客の情報を安易に渡さない

権利者側やプロバイダから、Wi-Fiを利用した客の情報を求められることがあります。

客の情報には個人情報保護の問題があり、事業者が独自の判断で第三者に提供することには慎重であるべきです。
また、店舗のWi-Fiで誰が通信したかを特定できる記録を、そもそも保有していないことも多いです。

どの情報をどこまで開示してよいかは、弁護士に相談してから判断してください。

4. 損害賠償請求書が届いてしまった場合

提示額をそのまま支払わない

開示が行われた後、権利者側から事業者宛てに損害賠償請求書が届くことがあります。

経営者自身が使っていないのであれば、提示額をそのまま支払う理由はありません。
「店の評判に関わるから早く終わらせたい」と考えて支払ってしまう経営者もいますが、支払ってしまうと返還を求めることは極めて困難です。

回線の利用状況を説明できるよう準備する

権利者側や裁判所に対して、経営者自身が利用者ではないことを説明するためには、回線の利用状況を示す資料が役立ちます。

Wi-Fiを客や従業員向けに提供していることを示す資料(店内の案内表示、ウェブサイトの記載等)。
Wi-Fiのパスワードを誰に教えていたか。
対象の通信が行われた日時の営業状況(営業中であったか、どの従業員が勤務していたか等)。
ルーターの接続履歴が残っていればその記録。

実際の利用者が判明した場合

従業員が利用していたことが判明した場合など、実際の利用者が分かった場合でも、その利用者に対する損害額は著作権法第114条に基づいて算定されます。
権利者側の提示額がそのまま認められるとは限りません。

5. 再発を防ぐためにできること

P2P通信の制限

ルーターやネットワーク機器の設定によって、トレントなどのP2P通信を制限できることがあります。

業務用のルーターであれば、特定の通信を遮断する機能を備えているものがあります。
設定方法は機器の販売店や保守業者に確認してください。

利用規約の明示

店舗のWi-Fiを利用する際の利用規約に、違法なファイル共有を禁止する旨を明記し、店内に掲示しておくことも一つの方法です。

認証方式の導入

メールアドレスの登録やSNSアカウントでの認証を経てWi-Fiに接続する方式にすれば、利用者を把握しやすくなります。

ただし、認証によって取得した情報の管理には、個人情報保護の観点から注意が必要です。

客用と業務用の回線を分ける

客向けのWi-Fiと、業務用のネットワークを分けておけば、業務用回線のトラブルを避けやすくなります。

6. 当事務所の対応

当事務所では、意見照会書への回答内容の検討、権利者側への対応、損害賠償請求に対する主張立証を行っています。

実際の利用者が判明して損害額が問題になる場合には、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。

まとめ

店舗や事業所のWi-Fiでトレントが使われた場合、回線の契約者である事業者のもとに意見照会書が届くことがあります。

経営者自身がトレントを使っていなくても、回線の契約者であるために書面が届きます。
客や従業員にWi-Fiを提供していたことだけで、経営者が著作権侵害の責任を負うと判断される可能性は低いと考えられます。
意見照会書には、不特定多数が利用するWi-Fiであることを具体的に記載したうえで、不同意で回答する合理的な理由があります。
客の情報を求められた場合は、個人情報保護の観点から、弁護士に相談してから判断してください。
損害賠償請求書が届いても、提示額をそのまま支払う必要はありません。
P2P通信の制限や利用規約の明示によって、再発を防ぐことができます。

身に覚えのない書面が届いて困惑している経営者の方は、書面を放置せず、弁護士に相談して対応方針を確認してください。

よくある質問

店のWi-Fiでトレントが使われたようです。経営者が責任を負いますか。
経営者自身がトレントを使っていなければ、Wi-Fiを提供していたことだけで責任を負うと判断される可能性は低いと考えられます。ただし、事案の具体的な事情によるため、弁護士に相談してください。

意見照会書にはどう回答すればよいですか。
不特定多数の客や従業員が利用するWi-Fiであり、経営者自身は対象の通信を行っていないことを具体的に記載したうえで、不同意で回答する合理的な理由があります。

利用した客の情報を教えるよう求められました。
客の情報の提供には個人情報保護の問題があります。事業者の判断で安易に提供せず、弁護士に相談してから判断してください。

従業員が使っていたことが分かりました。会社が払うのですか。
トレントの利用は通常業務とは無関係の私的な行為であり、事業者が使用者責任を負う可能性は高くないと考えられます。ただし、具体的な事情によるため、弁護士に相談してください。

今後同じことが起きないようにするにはどうすればよいですか。
ルーターの設定でP2P通信を制限する、利用規約で違法なファイル共有を禁止する、客用と業務用の回線を分けるといった方法があります。

お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
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