トレントで権利者側にすでに自分で連絡してしまった|謝罪や支払いの約束をした後でもできることはあるのか

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トレントで権利者側にすでに自分で連絡してしまった|謝罪や支払いの約束をした後でもできることはあるのか

トレントの著作権侵害で書面が届き、弁護士に相談する前に自分で権利者側の代理人に連絡してしまった。「すみません、やりました」と認めてしまった。「払います」と答えてしまった。もう取り返しがつかないのか。連絡してしまった後でもできることを解説します。

「先に弁護士に相談すべきだった」と後悔している方へ

書面が届いて不安になり、「早く解決したい」「謝れば穏便に済むのではないか」と考えて、弁護士に相談する前に権利者側の代理人に電話やメールで連絡してしまう方がいます。

その場で「やりました」「すみません」と認めてしまったり、「払います」と答えてしまったりしたことを、後から後悔するケースは珍しくありません。

結論から言えば、連絡してしまった後でもできることはあります。 ただし、何を言ったかによって、その後の対応に影響が出ることがあるため、早めに弁護士に相談して状況を整理することが重要です。

1. 「払います」は終局的合意といえるか

電話での「払います」が法的にどう評価されるか

電話口で「払います」と言ってしまった場合、最も気になるのは「これで支払義務が確定したのか」という点です。

しかし、法的に有効な合意(終局的合意)が成立したかどうかは、単に「払う」と言ったかどうかだけで決まるものではありません。 これは事実認定の問題であり、口頭の発言が終局的合意に該当するかどうかは、次のような観点から検討されます。

意思表示の確実性・確定性

加藤新太郎編『民事事実認定と立証活動第Ⅱ巻』(判例タイムズ社、2009年)255頁及び329頁は、高額の目的物や複雑な取引においては、諸条件が明確に定まっていない段階では、相手方に法律効果を強制するに十分なレベルの意思表示とはいえないため、「意思表示としての確実性・確定性」に欠けるとしています。

トレントの著作権侵害で権利者側から電話がかかってきた場面では、利用者はそもそも損害額の算定方法を知らず、提示された金額が適正かどうかを判断する情報を持っていません。 そのような状況下で「払います」と述べたとしても、それが法律効果を発生させるに足る確定的な意思表示といえるかは、慎重な検討を要します。

契約書未作成の段階は「準備段階の行為」にとどまる

同書246頁及び330頁は、契約書が未作成の段階では、仮に一定の合意をしたとしても、それは「準備段階の行為」にとどまり、法律効果を発生させるに足りる意思表示としての完成度は低いとして、法的拘束力を否定しています。

電話で「払います」と言っただけで、和解書の署名も支払いも行われていない段階は、まさにこの「準備段階の行為」に該当し得ます。

「中間合意」は終局的合意ではない

足立正佳著『ダイアローグ争点整理Ⅱ―契約の解釈、特に契約の成立に関する民法上の約束事を用いて』(商事法務、2024年)222頁は、交渉プロセスの途中の「中間合意」は、通常、最終的・確定的な意思表示ではないと指摘しています。

さらに同書236頁は、交渉過程で作成される文書が当事者の認識を固定化し、合意内容を明確化する機能を持つことを指摘しています。 裏を返せば、文書による固定化がなされていない段階の口頭のやり取りは、当事者間で認識が共有・確定されていない、すなわち終局的合意に至っていないことを意味します。

電話での「払います」は、和解書という文書による固定化がなされる前の口頭の発言にすぎず、終局的合意ではなく中間的なやり取りにとどまると評価される余地があります。

つまり、「払います」と言っただけでは終わらない

以上の法的議論を踏まえれば、電話口で「払います」と言ったとしても、それが直ちに法的拘束力のある終局的合意として評価されるとは限りません。

和解書への署名がなく、実際の支払いも行われていない段階であれば、なお対応の余地があります。

ただし、発言の内容や状況によっては、対応に影響が出ることがあるため、何を言ったかを記録したうえで、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

2. 電話やメールで言ってしまった内容ごとの影響

「やりました」「すみません」と事実を認めてしまった場合

事実関係が整理できていない段階で、「やりました」「ダウンロードしました」と認めてしまった場合、後から「実は自分ではなかった」「この作品はダウンロードしていない」と主張することが難しくなることがあります。

ただし、事実を認めたことと、金額が適正かどうかは別の問題です。 事実を認めてしまった後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。

具体的な個人情報を追加で教えてしまった場合

勤務先、家族構成、収入額など、開示された情報に含まれていない個人情報を追加で教えてしまった場合、それ自体を撤回することは困難です。

ただし、教えてしまった情報の内容によっては、今後の対応に大きな影響がないこともあります。 何を教えてしまったかを弁護士に伝えて、影響の有無を確認してください。

和解書に署名して支払ってしまった場合

和解書に署名し、実際に支払いも完了してしまった場合は、その権利者との間ではすでに和解が成立しています。 支払った金額を取り戻すことは極めて困難です。

ただし、他の権利者からの請求がある場合は、2社目以降については今から弁護士に依頼して対応することが可能です。

3. なぜ自分で連絡してしまうのか

「謝れば許してもらえる」という期待

日常生活では、謝れば相手が許してくれることがあります。 しかし、権利者側の代理人弁護士は、利用者の謝罪を受け入れて請求を取り下げるために連絡しているわけではありません。 目的は金銭の回収であり、謝罪によって請求額が下がることは期待しにくいです。

「自分で話せば安くなる」という思い込み

弁護士を通さずに自分で話した方が、柔軟に対応してもらえるのではないかと考える方がいます。

しかし、権利者側の代理人の中には、個別の条件交渉に応じないと公表している事務所があります。 自分で連絡しても金額が変わらないことがあり、その場合、不用意な発言だけが残ることになります。

「弁護士に頼むほどのことではない」という判断

「大した金額ではないから自分で処理しよう」と考えて連絡してしまう方がいます。

しかし、権利者側の提示額が裁判で認められる損害額と比べて適正かどうかは、弁護士に確認しなければ分かりません。 「大した金額ではない」と思っていた提示額が、実は裁判で争えば大幅に減額される金額だったということがあり得ます。

4. 連絡してしまった後にすべきこと

これ以上自分で対応しない

すでに連絡してしまった場合でも、これ以上自分で対応を続けるのは避けてください。

追加の電話やメールで、さらに不用意な発言をしてしまうリスクがあります。 「前回の電話でこう言いましたよね」と後から引用される材料が増えるだけです。

何を言ったかをできるだけ正確に記録する

電話で話した内容をできるだけ正確に思い出し、メモに書き出してください。

いつ電話したか(日時)。 相手の名前と事務所名。 自分が何と言ったか。 相手が何と言ったか。 メールを送った場合は、送信済みメールを保存しておく。

このメモは、弁護士に相談するときに重要な情報になります。

すぐに弁護士に相談する

連絡してしまった内容と状況を弁護士に伝えてください。 発言の内容と状況によって、今後の対応方針が変わります。

「もう自分で認めてしまったから手遅れだ」と思い込んで、さらに対応が遅れてしまう方がいます。 しかし、上述のとおり、電話での口頭の発言が終局的合意と評価されるかどうかは事実認定の問題であり、和解書の署名や裁判所の判決とは法的な意味が異なります。

弁護士に依頼すれば、以後の連絡窓口が弁護士になり、自分で対応する必要はなくなります。

5. 連絡してしまった後でも損害額は争える

事実を認めたことと、金額を認めたことは別

電話で「ダウンロードしました」と事実を認めてしまったとしても、権利者側が請求する金額をそのまま支払う義務が生じるわけではありません。

事実を認めたことと、金額が適正かどうかは別の問題です。

当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

事実を認めてしまった後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。

刑事告訴への対応

当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。

自分で連絡してしまった後であっても、弁護士が介入することで刑事告訴のリスクを管理できます。

まとめ

権利者側にすでに自分で連絡してしまった場合でも、できることはあります。

電話で「払います」と言ったとしても、それが直ちに法的拘束力のある終局的合意として評価されるとは限りません。 加藤新太郎編『民事事実認定と立証活動第Ⅱ巻』(判例タイムズ社、2009年)は、契約書未作成の段階では「準備段階の行為」にとどまり、法的拘束力は否定されるとしています。 足立正佳著『ダイアローグ争点整理Ⅱ』(商事法務、2024年)も、交渉途中の中間合意は最終的・確定的な意思表示ではないと指摘しています。 和解書への署名がなく、実際の支払いも行われていない段階であれば、なお対応の余地があります。 事実を認めてしまった後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。

ただし、連絡してしまった内容によっては対応に影響が出ることがあるため、何を言ったかを記録したうえで、できるだけ早く弁護士に相談してください。

これ以上自分で対応を続けることは避け、弁護士に窓口を切り替えることが重要です。

よくある質問

電話で「払います」と言ってしまいました。もう撤回できませんか。 電話での口頭の発言が終局的合意に該当するかどうかは事実認定の問題です。和解書への署名がなく支払いも行われていない段階であれば、法的拘束力のある合意が成立したとは限りません。早めに弁護士に相談してください。

電話で「やりました」と認めてしまいました。もう争えませんか。 事実を認めたことと、金額が適正かどうかは別の問題です。事実を認めてしまった後でも、損害額の主張立証は行えます。

すでに和解書に署名して支払いました。取り戻せますか。 支払った金額を取り戻すことは極めて困難です。ただし、別の権利者からの請求がある場合は、2社目以降については今から弁護士に依頼して対応することが可能です。

権利者側にメールを送ってしまいました。削除できますか。 送信したメールを相手方から削除させることはできません。ただし、メールの内容によっては今後の対応に大きな影響がないこともあります。送信済みメールを保存したうえで、弁護士に相談してください。

自分で連絡してしまった後でも弁護士に依頼できますか。 依頼できます。弁護士に依頼すれば、以後の連絡窓口が弁護士になり、自分で対応する必要はなくなります。連絡してしまった内容を弁護士に伝えたうえで、対応方針を検討します。

お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
電話:0564-73-3487
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受付時間:平日9:00〜17:00
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