探偵の調査報告書とLINEのスクリーンショットで「肉体関係」は立証できるか|不貞慰謝料請求で証拠の質が結果を分ける実務

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探偵の調査報告書とLINEのスクリーンショットで「肉体関係」は立証できるか|不貞慰謝料請求で証拠の質が結果を分ける実務

配偶者の不貞を疑い、自分で調べたメッセージのやり取り、自分で撮影した写真、興信所(探偵)に依頼して取得した調査報告書を手に、不貞相手に対して慰謝料請求を起こそうとされる方が多くいらっしゃいます。

ここで重要なのは、こうした証拠が「肉体関係の存在」をどこまで立証できるかという問題です。不貞慰謝料請求の前提となる「不貞行為」は、最高裁判例(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁等)によって、配偶者以外の異性との性的関係を意味するものとされています。単に親密な交際があった、頻繁に連絡を取り合っていた、二人きりで食事に行った、というだけでは、不貞行為の立証として不十分とされる場面があります。

このページは、不貞慰謝料請求で実際に使われる証拠の種類ごとに、肉体関係の立証にどこまで使えるかを、裁判実務の視点から説明します。証拠の質を見極めることが、慰謝料請求の成否と金額を左右します。

1 不貞行為の定義と立証のハードル

民法770条1項1号、不法行為としての不貞慰謝料請求の前提となる「不貞行為」は、最高裁判例上、配偶者以外の異性との性的関係を意味するものとされています。

この定義は、立証の場面で次の意味を持ちます。

第一に、肉体関係の存在自体を立証する必要があります。親密な交際、頻繁な連絡、二人きりでの行動などの間接事実だけでは、肉体関係の存在を推認させる程度に達していないと評価される事案があります。

第二に、肉体関係を直接立証する証拠は限定的です。当事者の自白、性行為の現場を撮影した動画・写真などは決定的ですが、実際にはほとんど取得できません。

第三に、間接事実の積み上げで肉体関係を推認する必要があります。同じ建物に長時間滞在した、宿泊した、性的なやりとりがメッセージに残っているといった間接事実を組み合わせて、社会通念上、肉体関係があったと推認できるレベルに達することを論じます。

したがって、不貞慰謝料請求は、証拠の質と組合せの問題が結果を分ける訴訟類型です。

2 探偵の調査報告書

興信所(探偵社)に依頼して取得する調査報告書は、不貞慰謝料請求で最もよく使われる証拠の一つです。報告書には、調査対象者の行動記録、写真・動画、調査員の所見が含まれているのが通常です。

調査報告書の使い方は次のとおりです。

(1)肉体関係を推認させる行動記録

報告書から肉体関係を推認させる典型的な行動記録は次のとおりです。

ラブホテルへの入店と滞在として、調査対象者と相手方がラブホテルに入る様子、入店時刻と退店時刻、滞在時間が記録されます。ラブホテルは性的関係を目的とする施設であり、男女が二人で入店して一定時間滞在したという事実は、肉体関係を強く推認させます。

宿泊施設での宿泊として、ホテル、旅館、別荘等で男女が二人で宿泊した事実、一つの部屋に入った事実、翌朝二人で出てきた事実などが記録されます。これらも肉体関係を推認させる有力な間接事実です。

居宅での長時間滞在として、相手方の自宅または調査対象者の自宅で、配偶者の不在時に長時間滞在した事実が記録されます。深夜から早朝にかけての滞在、定期的・反復的な訪問などは、肉体関係を推認させる事情となります。

これらの行動記録は、写真・動画とともに記録されるのが通常です。入店時刻、退店時刻、滞在時間が客観的に立証できることが、調査報告書の重要な価値です。

(2)報告書の信用性をめぐる争点

調査報告書は、相手方から信用性を争われることがあります。次のような点が争点となります。

調査員の特定性として、調査員の身分、調査会社の所在、報告書の作成過程などが争われます。日本調査業協会等の業界団体に加盟する正規の調査会社が作成した報告書であれば、信用性は相対的に高く評価されます。

写真・動画の客観性として、写真・動画に映る人物が本当に調査対象者本人か、編集や合成の可能性はないか、撮影日時の正確性などが争点となります。

調査員の所見の評価として、報告書に含まれる調査員の評価・推測の部分は、客観的事実ではなく評価・推測であり、その評価の妥当性が争われることがあります。

これらの争点に備え、調査報告書を依頼する段階から、信用性の高い報告書を取得することが重要です。報告書の体裁、写真・動画の質、調査員の所見の記載方法などに、調査会社の専門性が現れます。

(3)調査の限界

調査報告書には限界もあります。

一回限りの調査では肉体関係を確定的に立証できないことがあります。複数回の調査を重ね、定期的・反復的な関係の存在を示すことで、立証の精度が高まります。

調査対象者がラブホテル等を利用せず、相手方の自宅や調査対象者の自宅で会う場合、室内での具体的行動は撮影できないため、滞在時間からの推認に依存することになります。

調査費用は、調査内容と期間に応じて数十万円から数百万円に及ぶことがあります。慰謝料請求の見込み額との比較で、調査費用の合理的範囲を判断する必要があります。

3 LINE等のメッセージのスクリーンショット

LINE、メール、SNSのダイレクトメッセージ等のスクリーンショットは、近年最も多用される証拠の一つです。

(1)肉体関係を推認させるメッセージ

肉体関係を推認させるメッセージの典型例は次のとおりです。

性的な内容のやり取りとして、性的な関係を前提とした表現、性行為に関する具体的なやり取り、性的画像の送受信などは、肉体関係を推認させる直接的な証拠となります。

宿泊・滞在の計画として、「今夜泊まろう」「ホテル予約しておく」「いつもの部屋で」といったやり取りは、性的関係を前提とした行動計画として推認されます。

恋愛感情を示すやり取りとして、「好き」「愛してる」「結婚したい」といった恋愛感情の表明、配偶者を非難する表現、二人での将来の話などは、不貞関係の存在を強く推認させます。

ただし、恋愛感情を示すやり取りだけでは肉体関係の立証には不足する場面があります。プラトニックな関係であった可能性が反論として残るためです。これは性的関係を直接示すやり取り、宿泊や長時間滞在を示す事実と組み合わせて立証する必要があります。

(2)スクリーンショットの証拠としての問題

スクリーンショットには、次のような証拠上の問題があります。

改ざんの可能性として、スマートフォンのスクリーンショットは画像処理ソフトで容易に改ざんできるという指摘がなされることがあります。これに対しては、原本のスマートフォン画面を法廷で確認する、第三者立会いの下でスクリーンショットを撮影する、メッセージの一部だけでなく前後の文脈も含めて広範囲のスクリーンショットを残すなどの対応で信用性を補強します。

スマートフォンの覗き見・無断アクセスとして、配偶者のスマートフォンを無断で覗き見した、パスワードを無断で入手したなどの事情がある場合、証拠の取得経緯が問題となる場合があります。ただし、夫婦間でのスマートフォンの相互確認は社会通念上一定範囲では許容されており、絶対的な証拠排除事由になるわけではありません。

文脈の解釈として、メッセージの個別の文言だけを抜き出すと、不貞の文脈ではない解釈が可能となる場合があります。前後の文脈、複数のメッセージの組合せ、関連する行動記録などと併せて評価する必要があります。

(3)削除されたメッセージへの対応

不貞当事者がメッセージを削除している場合があります。この場合、復元の可能性を検討します。

スマートフォン本体からの復元として、専門業者によるデータ復元サービスを利用することで、削除されたメッセージを復元できる場合があります。費用は数万円から数十万円程度です。

クラウドからの復元として、LINEのバックアップ、iCloud、Googleドライブなどに保存されたデータから復元できる場合があります。

通信キャリアの記録として、メッセージそのものは取得できない場合がほとんどですが、通信履歴(通話履歴、SMSの送受信履歴等)は一定期間記録されており、弁護士会照会等で取得できる場合があります。

4 写真・動画

調査会社による報告書とは別に、当事者自身が撮影した写真・動画も証拠として使えます。

(1)肉体関係を推認させる写真・動画

二人で写った写真として、ホテルの部屋、リゾート地、隠れた場所での二人での写真は、関係性を示す証拠となります。

身体的接触の写真として、抱擁、キス、手を握るといった身体的接触の写真は、親密な関係を示し、肉体関係への推認の一要素となります。

旅行先での写真として、二人で旅行した先の写真、宿泊施設での写真などは、宿泊を伴う関係を示す証拠となります。

(2)写真・動画の取得経緯の問題

写真・動画の取得経緯が問題となることがあります。盗撮、無断撮影、隠し撮りなどの事情がある場合、証拠としての評価が下がる可能性があります。

ただし、不貞慰謝料請求の場面では、配偶者として相手の行動を確認する正当な利益が認められるため、私的な空間(自宅、車内等)での撮影でない限り、証拠排除の理由とはなりにくいのが実情です。

5 その他の証拠

不貞慰謝料請求では、上記以外にも次のような証拠が使えます。

ETC利用履歴として、調査対象者の車両がラブホテル付近の高速道路出口で頻繁に降りている、特定の地域へ繰り返し移動している事実は、関係の継続性を示す証拠となります。

クレジットカード明細として、ラブホテルやホテルの利用、二人分の食事代の支払、旅行代金の支払などが記録されている場合、関係を示す証拠となります。

GPSロガーの記録として、配偶者の車両等に取り付けたGPSロガーの記録は、行動パターンを示す証拠となります。ただし、設置の正当性や プライバシー侵害の問題が争われることがあります。

第三者の証言として、不貞関係を知る第三者(共通の知人、職場の同僚等)の証言は、関係の存在を示す証拠となります。

子の証言として、家族の状況を知る子の証言は、不貞関係の影響を示す証拠となります。ただし、子の年齢、置かれた状況、誘導の可能性などを慎重に考慮する必要があります。

6 証拠の組合せによる立証

不貞慰謝料請求の立証は、個別の証拠を一つずつ取り上げるのではなく、複数の証拠を組み合わせて総合的な推認に至る作業です。

調査報告書による行動記録、LINEのメッセージ、写真、ETC・クレジットカード履歴などを組み合わせ、「これらの事実が同時に存在する以上、社会通念上、肉体関係があったと推認するのが相当である」という論述を行います。

それぞれの証拠が単独では弱くても、複数の独立した経路からの間接事実が同じ方向を指している場合、推認の力は大きくなります。

7 慰謝料の金額と証拠の質の関係

慰謝料の金額は、不貞行為の悪質性、期間、頻度、配偶者の婚姻関係への影響などによって変動しますが、証拠の質も影響を与える要素となります。

立証が確実な事案では、相手方も争いにくく、相場の上限に近い金額での解決が見込めます。

立証が間接事実の積み上げにとどまる事案では、相手方が争う余地が残り、和解で相場の中程度から下限程度の解決となる場合があります。

立証が不十分な事案では、訴訟で敗訴するリスクもあり、慎重に和解を選択することになります。

したがって、訴訟提起の前段階で、保有する証拠の質と量を客観的に評価することが、訴訟戦略の出発点となります。

8 証拠収集の段階で取るべき初動

不貞を疑い、慰謝料請求を検討している方が証拠収集の段階で取るべき初動は次のとおりです。

第一に、現在保有している証拠を整理することです。LINEのスクリーンショット、写真、メール、通話履歴などを時系列に整理します。

第二に、追加の証拠収集の必要性を判断することです。現在の証拠だけで肉体関係を推認できるか、調査会社への依頼が必要かを判断します。

第三に、調査会社への依頼を検討する場合、信用性の高い調査会社を選ぶことです。日本調査業協会等の業界団体への加盟、所在地、代表者の特定、報告書のサンプルなどから判断します。

第四に、配偶者に証拠収集を悟られないよう注意することです。証拠を集めていることを察知されると、配偶者と相手方が証拠を隠滅する、行動パターンを変えるなどの可能性があります。

第五に、専門家への相談を早期に行うことです。証拠収集の方針、調査会社の選定、慰謝料請求の方針などは、専門家との協議の上で決めるのが安全です。

9 当事務所がお手伝いできること

当事務所は、不貞慰謝料請求について、請求する側・請求される側の双方で対応経験を有しています。証拠の質の評価、調査会社の選定、追加の証拠収集の方針、内容証明郵便による請求、交渉、訴訟手続の進行など、不貞慰謝料請求に必要な作業を進めます。

配偶者の不貞を疑っている方、すでに証拠を保有している方、不貞相手への慰謝料請求を検討している方は、次の資料をご持参のうえ、ご相談ください。

・現在保有しているLINE、メール、写真等の証拠 ・調査会社の報告書(取得済みの場合) ・配偶者と相手方の関係、不貞の時期、頻度などの情報 ・婚姻関係への影響を示す資料(別居の事実、子への影響等) ・婚姻期間、家族構成、収入などの基本情報

「証拠は集めたから後は弁護士に任せれば勝てる」と即断する前に、保有する証拠が肉体関係の立証にどこまで使えるかを客観的に評価することが、訴訟戦略の出発点になります。一度ご相談ください。

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あいち岡崎法律事務所
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