開示命令の決定書に大量のIPアドレスが並んでいるが全部自分なのか|書面の読み方と請求対象の確認方法

開示命令の決定書に大量のIPアドレスが並んでいるが全部自分なのか|書面の読み方と請求対象の確認方法

トレントの著作権侵害で、プロバイダから「開示命令が発令された旨の通知書」が届き、添付の決定書を見ると、何十件ものIPアドレスが一覧で並んでいることがあります。「これは全部自分のIPアドレスなのか」「こんなに大量にアクセスした覚えはない」と驚く方がほとんどです。この一覧が何を意味しているのかを、実際の書面の内容に即して解説します。

開示命令の決定書にはIPアドレスの一覧が添付されている

プロバイダから届く「開示命令が発令された旨の通知書」には、裁判所が発令した開示命令の決定書と、開示命令の申立書が添付されています。

この申立書に含まれる「発信者情報目録」を開くと、何十件ものIPアドレスが、ポート番号、タイムスタンプ(日時)とともに一覧で記載されています。

しかも、対象の動画が複数本含まれていれば、動画ごとにIPアドレスの一覧が並ぶため、総数は100件を超えることもあります。

この一覧を見て、「自分がこんなに大量にアクセスしたのか」と思ってしまう方がいますが、それは書面の読み方を誤っています。

1. 一覧に載っているIPアドレスは全部自分のものではない

書面を見て混乱する理由

プロバイダから届く通知書には、開示命令の申立書がそのまま添付されていることがあります。

この申立書に記載されている発信者情報目録を見ると、何十件ものIPアドレスが並んでいます。 対象動画が複数本あれば、各動画について数十件ずつ、合計で膨大な数のIPアドレスが並びます。

これを見た方は、「自分がこんなに何度もアクセスしたのか」「この日時には家にいなかったのに」「これは全部自分のIPアドレスなのか」と混乱します。

しかし、この一覧は自分だけのIPアドレスではありません。

一覧は「そのファイルを共有していた利用者全員」のIPアドレス

発信者情報目録に記載されているIPアドレスは、権利者側の監視システムが、対象ファイルを共有していた利用者全員のIPアドレスを記録したものです。

一覧に数十件のIPアドレスが載っていても、そのうち自分に割り当てられていたのはごく一部です。 残りは、同じファイルを共有していた別の利用者のIPアドレスです。

「この日時には家にいなかった」と感じるのは、その日時に記録されたIPアドレスがそもそも自分のものではないからです。

プロバイダに開示を命じているのは「自社の契約者分」だけ

開示命令は、プロバイダに対して、「この一覧のIPアドレスのうち、あなたの会社が割り当てていた契約者の情報を開示しなさい」と命じるものです。

一覧に何十件ものIPアドレスが載っていても、そのプロバイダの契約者に割り当てられていたのはその一部であり、さらに自分に割り当てられていたのはそのうちのごく一部です。

2. 対象動画が複数本あっても、自分への請求は一部だけのことが多い

動画が複数本載っていても、自分に関係するのは一部だけかもしれない

開示命令の申立書に動画が複数本含まれていても、自分のIPアドレスが記録されている動画は、そのうちの一部だけということがあります。

たとえば、株式会社CONT(AV制作会社)が弁護士法人ITJ法律事務所を代理人として申し立てた開示命令では、1回の申立ての中に4本の動画が含まれ、各動画について数十件のIPアドレスが記録されていた事例があります。

しかし、この書面を受け取った人のIPアドレスが4本すべてに含まれているとは限りません。 実際に請求対象となるのは1本だけ、ということもあり得ます。

なぜ複数の動画がまとめて含まれているのか

権利者側は、複数の動画をまとめて1回の開示命令で申し立てます。 1本ずつ別々に申し立てるよりも、手続のコストと手間が抑えられるためです。

しかし、利用者の側から見ると、申立書がそのまま送られてくるため、「これだけの動画について開示命令が出ている=全部自分に対する請求が来る」と受け取ってしまいがちです。

一覧の読み方を知らなければ、不必要な不安を抱え続ける

実際に権利者側から届く損害賠償請求が1作品分だけであっても、開示命令の段階で大量のIPアドレスと複数本の動画目録を見てしまっているために、「あの一覧は全部自分だったのか」「もっと請求が来るのではないか」と不安が続くことがあります。

書面の読み方を正しく理解していれば、「一覧のほとんどは自分とは無関係のIPアドレスであり、自分に関係するのはごく一部」ということが分かります。

しかし、読み方を知らなければ、大量のIPアドレスと複数本の動画目録を見て、「自分はとんでもないことをしてしまったのではないか」と誤解したまま判断を迫られることになります。

3. 請求対象の作品数が損害額に直結する

作品数×単価=請求額

権利者側の請求は、作品ごとに一定額を掛け合わせた金額になります。

自分が本当に関与している作品数が1本なのか複数本なのかによって、適正な損害額は大きく変わります。 関与していない作品の分まで支払う必要はありません。

しかし、権利者側がまとめて請求してくる場合、「複数本分の請求が来たから全部払わないといけない」と思い込んでしまう方がいます。

書面に記載されているIPアドレスの一覧を正確に読み、自分のIPアドレスがどの作品のどのタイムスタンプに含まれているのかを特定する作業が必要です。

4. IPアドレスとタイムスタンプの対応を確認する

自分のIPアドレスを特定する

プロバイダが開示するのは、一覧のIPアドレスのうち、契約者に割り当てられていたものです。 開示後に権利者側から届く請求書には、対象となるIPアドレスとタイムスタンプが記載されているはずです。

自分に割り当てられていたIPアドレスがどれで、それがどの動画のどの時間帯に記録されていたのかを確認することで、実際に自分が関与している作品数と利用期間が分かります。

この確認が損害額の主張立証に直結する

当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。

その際、自分のIPアドレスがどの作品についてどの期間に記録されていたのかという事実が、送信可能期間の限定やダウンロード回数の認定において重要な意味を持ちます。

その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

5. この書面が届いた段階ですべきこと

書面をすべて保管する

通知書、決定書、発信者情報目録(別紙)のすべてを保管してください。 封筒も捨てないでください。

一覧のIPアドレスを自分で判断しようとしない

IPアドレスの一覧を見て、「どれが自分のか」「何作品分なのか」を自分で判断するのは困難です。 IPアドレスはプロバイダが動的に割り当てているため、同じ人でも時間帯によって異なるIPアドレスが使われることがあります。

大量のIPアドレスに動揺して言い値で支払わない

書面の一覧を見て「こんなに大量に記録されている」と動揺し、権利者側の提示額をそのまま支払ってしまう方がいます。

しかし、一覧のほとんどは自分とは無関係のIPアドレスです。 自分が実際に関与している作品数と期間を確認しないまま支払うのは避けるべきです。

弁護士に相談する

書面の内容を正確に読み取り、自分が実際に関与している作品数と期間を特定し、それに基づいて損害額の見通しを立てることは、弁護士に依頼して行うべき作業です。

当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。

まとめ

開示命令の決定書に添付されたIPアドレスの一覧は、そのファイルを共有していた利用者全員のIPアドレスです。 一覧に何十件ものIPアドレスが並んでいても、自分に関係するのはそのうちのごく一部です。

対象動画が複数本含まれていても、すべての動画に自分のIPアドレスが含まれているとは限りません。 関与していない作品の分まで損害賠償を支払う必要はありません。

大量のIPアドレスと複数本の動画目録を見て動揺する前に、弁護士に相談して、自分が実際にどの作品にどの程度関与しているのかを確認することが重要です。

当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

よくある質問

一覧に何十件ものIPアドレスが載っていますが、全部自分ですか。 全部ではありません。一覧は、対象ファイルを共有していた利用者全員のIPアドレスです。自分に関係するのはそのうちのごく一部です。

一覧の日時に家にいなかった覚えがあります。間違いではないですか。 その日時のIPアドレスが自分のものでない可能性があります。一覧にはすべての利用者のIPアドレスが含まれており、自分に割り当てられていないIPアドレスの日時に覚えがないのは当然です。

動画が複数本載っていますが、全部の分の損害賠償を払うのですか。 すべての動画に自分のIPアドレスが含まれているとは限りません。関与していない作品の分まで払う必要はありません。自分のIPアドレスがどの動画に含まれているかを弁護士と確認してください。

IPアドレスの一覧から、自分のIPアドレスを特定できますか。 自分で特定するのは困難です。IPアドレスはプロバイダが動的に割り当てているため、時間帯によって異なります。弁護士に相談して整理することをおすすめします。

書面を見て動揺しています。すぐに何かしなければなりませんか。 書面をすべて保管したうえで、弁護士に相談してください。一覧のほとんどは自分とは無関係のIPアドレスです。動揺して言い値で支払うことは避けるべきです。

お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
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