トレントの著作権侵害で実際に逮捕された事例はあるのか|逮捕されるのはどういう場合か
トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、「逮捕されるのではないか」という恐怖は最も大きな不安の一つです。権利者側の書面にも「刑事告訴する」「10年以下の懲役」と記載されています。実際にトレントで逮捕された事例はあるのか。あるとすれば、どのような利用者が逮捕されたのか。自分が逮捕される可能性はどの程度なのか。事実に基づいて解説します。
トレントで逮捕された事例は存在する
まず事実として、トレントの著作権侵害で逮捕された事例は存在します。
「逮捕されることは絶対にない」とは言い切れません。
しかし、逮捕された事例の内容をよく見ると、一般的なダウンロード利用者とは異なる特徴があることが分かります。
1. 逮捕された事例に共通する特徴
大量かつ継続的なアップロード
報道されている逮捕事例の多くは、大量のファイルを長期間にわたって意図的にアップロードしていた利用者です。
発売前や発売直後の作品をいち早くトレントにアップロードしていた。
数百本から数千本規模のファイルを共有していた。
アップロード専用のサーバーや大容量のストレージを使って、組織的に配布していた。
このような利用者は、「ダウンロードしたかっただけ」という一般的な利用者とは明らかに異なります。
著作権侵害を積極的に意図していた
逮捕された事例では、著作権侵害を積極的に意図していたと評価できるケースが多いです。
つまり、「トレントの仕組みを知らずにダウンロードしていたらアップロードもしていた」という一般的な利用者とは、故意の程度が全く異なります。
刑事罰を科すには「故意」の立証が必要であり、積極的かつ大規模なアップロードを行っていた利用者は、故意の立証が容易です。
社会的影響が大きい事案
映画の劇場公開前にトレントで流出させた事案や、テレビ放送中のアニメを放送直後にアップロードした事案など、社会的影響が大きい事案で逮捕に至っているケースがあります。
権利者の被害が大きく、社会的に注目される事案は、捜査機関も積極的に動きやすいです。
2. 一般的なダウンロード利用者との違い
一般的なダウンロード利用者の特徴
トレントの著作権侵害で書面が届く方の多くは、次のような利用者です。
ダウンロードが目的でトレントを使っていた。
アップロードするつもりはなく、トレントの仕組み上自動的にアップロードされていた。
対象作品は数本から数十本程度。
利用期間は数か月から1年程度。
組織的な配布活動は行っていない。
このような利用者が逮捕された事例は、報道を見る限り極めて少ないです。
「逮捕された事例がある」ことと「自分が逮捕される可能性が高い」ことは別
逮捕された事例が存在することは事実ですが、その事例は大量かつ意図的なアップロードを行っていた利用者のケースです。
一般的なダウンロード利用者が同じように逮捕されるかどうかは、事案の性質が全く異なります。
3. なぜ一般的な利用者は逮捕されにくいのか
故意の立証が困難
刑事罰を科すには、故意(自分の行為が犯罪に該当することを認識しながら、あえてその行為を行うこと)の立証が必要です。
一般的なダウンロード利用者は、「ダウンロードしたかっただけで、アップロードする意図はなかった」「トレントの仕組みを知らなかった」と主張し得ます。
この主張が認められれば、アップロードについての故意が否定され、刑事罰を科すことはできません。
捜査機関のリソースの問題
トレントの著作権侵害で開示請求を受けている利用者は大量にいます。
捜査機関がこの全員を捜査し、立件することは、リソースの面で現実的ではありません。
捜査機関は、社会的影響が大きい事案や、悪質性が高い事案を優先的に捜査する傾向があります。
権利者側が刑事告訴に積極的でない
著作権法違反は親告罪であり、権利者の告訴がなければ捜査機関は捜査を開始できません。
権利者側の多くは、民事の損害賠償請求を目的として開示請求を行っており、刑事告訴を主な目的としているわけではありません。
刑事告訴に踏み切るケースはそれほど多くないとみられます。
4. 「逮捕されない」と断言できない理由
リスクがゼロとは言い切れない
上述のとおり、一般的なダウンロード利用者が逮捕される可能性は低いと考えられます。
しかし、「絶対に逮捕されない」と断言することはできません。
権利者側の方針が変わり、一般的な利用者についても刑事告訴を行うようになる可能性はゼロではありません。
捜査機関の方針が変わり、トレントの著作権侵害を積極的に立件するようになる可能性もゼロではありません。
放置していれば刑事告訴のリスクは高まる
権利者側からの書面を放置し、民事の対応も何もしていない状態は、権利者側にとって「刑事告訴しかない」と判断する理由になり得ます。
弁護士が介入して民事の対応を進めていれば、権利者側は民事での解決を期待できるため、刑事告訴に踏み切る動機が低くなります。
放置することが、刑事告訴のリスクを高める最大の要因です。
書面が届いた後もトレントを使い続けていれば状況は変わる
書面が届いた後もトレントの利用を続けていた場合、「著作権侵害になることを知っていたにもかかわらず利用を続けた」と評価される可能性があります。
この場合、故意の立証が容易になり、刑事告訴のリスクは1回目の利用よりも高くなります。
5. 「逮捕」と「刑事告訴」の違い
刑事告訴=逮捕ではない
権利者側の書面に「刑事告訴する」と書かれていても、刑事告訴がそのまま逮捕につながるわけではありません。
刑事告訴とは、被害者が捜査機関に犯罪事実を申告し、処罰を求めることです。
刑事告訴を受けた捜査機関が捜査を行い、逮捕の必要性があると判断した場合に初めて逮捕状が請求されます。
刑事告訴がなされても、捜査の結果、立件に至らないこと(不起訴処分)はあり得ます。
在宅捜査の可能性
仮に捜査が行われたとしても、逮捕されるとは限りません。
逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕されずに在宅のまま捜査が進む(在宅捜査)ことがあります。
在宅捜査であれば、身柄を拘束されることなく、日常生活を送りながら捜査に対応することになります。
6. 逮捕のリスクを管理する方法
弁護士に依頼して刑事告訴を回避する
逮捕のリスクを管理する最も有効な方法は、弁護士に依頼して、権利者側が刑事告訴を行わないよう交渉することです。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
民事の対応を進めること自体が刑事リスクの低減になる
弁護士が民事の対応を進めていれば、権利者側は民事での解決を期待できるため、刑事告訴に踏み切る動機が低くなります。
民事の対応をしないことが、刑事告訴のリスクを高めます。
トレントの利用を直ちに停止する
これ以上の利用を続ければ、故意の認定が容易になり、刑事リスクが高まります。
直ちに利用を停止してください。
7. 「逮捕が怖い」から判断を歪めない
恐怖で提示額を払ってしまう方がいる
「逮捕されたくない」「刑事告訴されたくない」という恐怖から、金額の妥当性を検討しないまま提示額をそのまま支払ってしまう方がいます。
しかし、刑事告訴のリスクと、損害賠償金額が適正かどうかは別の問題です。
弁護士に依頼すれば、刑事告訴の回避交渉と、損害額の主張立証を並行して行えます。
恐怖で判断を歪めないでください。
裁判で争っても逮捕リスクは高まらない
「裁判で争ったら権利者側が怒って刑事告訴するのではないか」と心配する方がいます。
しかし、裁判で争うことは法的に認められた権利であり、裁判で争ったこと自体を理由に刑事告訴のリスクが高まるとは考えにくいです。
むしろ、弁護士が介入して対応している状態は、放置している状態よりも刑事告訴のリスクが低いです。
8. 損害額も争える
逮捕のリスクへの対応と並行して、損害額の主張立証も行えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
まとめ
トレントの著作権侵害で逮捕された事例は存在しますが、逮捕されたのは大量かつ意図的にアップロードを行っていた利用者であり、一般的なダウンロード利用者とは性質が異なります。
一般的なダウンロード利用者が逮捕される可能性は低いですが、ゼロとは言い切れません。
放置していれば刑事告訴のリスクは高まり、書面が届いた後も利用を続けていれば故意が認定されやすくなります。
弁護士に依頼して刑事告訴の回避交渉を行い、民事の対応を進めることが、逮捕のリスクを管理する最も有効な方法です。
当事務所では、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
「逮捕が怖い」という恐怖で、金額の妥当性を検討しないまま提示額を支払う必要はありません。
弁護士に依頼すれば、刑事告訴の回避と損害額の主張立証を並行して行えます。
よくある質問
トレントで逮捕された人はいますか。
います。ただし、報道されている事例は大量かつ意図的にアップロードを行っていた利用者のケースであり、一般的なダウンロード利用者とは性質が異なります。
自分も逮捕されますか。
一般的なダウンロード利用者が逮捕される可能性は低いですが、ゼロとは言い切れません。弁護士に依頼して刑事告訴の回避交渉を行うことが最も有効な対応です。
放置していたら逮捕されますか。
放置していれば、権利者側が刑事告訴に踏み切る可能性は高まります。弁護士に依頼して民事の対応を進めることが、刑事リスクの低減になります。
「刑事告訴する」と書いてあります。本当に告訴されますか。
書面の記載どおりに告訴されるとは限りませんが、可能性はゼロではありません。当事務所では、権利者側に刑事告訴を行わないよう交渉し、介入後に立件された案件は一度もありません。
裁判で争ったら逮捕リスクは高まりますか。
裁判で争うことは法的に認められた権利であり、裁判で争ったこと自体を理由にリスクが高まるとは考えにくいです。むしろ、弁護士が介入している状態の方が放置よりリスクは低いです。
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