トレントの和解条項には何が書かれているのか|署名する前に知っておくべき条件の意味

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トレントの和解条項には何が書かれているのか|署名する前に知っておくべき条件の意味

トレントの著作権侵害で権利者側との和解を検討するとき、「和解条項(案)」と題された書面が送られてくることがあります。この書面に署名すれば和解が成立しますが、そこに書かれている条件を理解しないまま署名すると、思わぬ不利益を受けることがあります。和解条項に含まれる典型的な条件と、それぞれの意味を解説します。

和解条項は権利者側が作成したテンプレートである

和解に応じる場合、利用者側が条件を決めるわけではありません。 和解条項は権利者側の代理人弁護士が作成したテンプレートであり、利用者はそれに署名するかどうかを判断するだけです。

条件交渉の余地はほとんどないことが多く、「この条件で合意するか、しないか」の二択になりがちです。

だからこそ、署名する前に何に合意しようとしているのかを正確に理解しておくことが重要です。

1. 和解金額と支払方法

金額は権利者側が設定した定額

和解条項には、支払うべき金額が記載されています。 この金額は権利者側が独自に設定した定額であり、法律で決まった金額ではありません。

分割払いの場合

一括払いが困難な場合、分割払いの条件が定められていることがあります。 たとえば、初回に一定額を支払い、以後毎月末日限りで一定額を振り込むという形です。

分割払いの場合、後述する「期限の利益喪失」条項と組み合わさることで、支払いが1回でも遅れた場合のリスクが生じます。

2. 期限の利益喪失と遅延損害金

「1回でも遅れたら残額を一括請求」

和解条項には、「支払を遅滞したときは当然に期限の利益を喪失する」という条項が含まれていることがあります。

これは、分割払いの途中で1回でも支払いが遅れた場合、残りの全額を直ちに一括で支払わなければならなくなるという意味です。

年14.6%の遅延損害金

期限の利益を喪失した場合、残額に対して年14.6%の割合で遅延損害金が発生すると定められていることがあります。

たとえば、残額が40万円で3か月遅れた場合、遅延損害金だけで約1万4,600円が加算されます。

3. 刑事告訴をしない条件

「全て履行したとき」に限る

和解条項の中で特に注意すべきなのが、刑事告訴に関する条件です。

「期限の利益を喪失することなく全て履行したときは、本件に関して刑事告訴を行わない」と記載されていることがあります。

裏を返せば、分割払いの途中で1回でも支払いが遅れて期限の利益を喪失した場合、刑事告訴をしないという約束は適用されなくなる可能性があるということです。

分割払いで和解した場合、支払いが遅れるだけで刑事告訴のリスクが復活するという、利用者側にとって厳しい条件になっています。

4. 秘密保持条項

和解内容を第三者に話してはいけない

「本和解条項の存在および内容について、今後一切、第三者に対し開示しないことを約束する」という条項が含まれていることがあります。

これは、和解したこと自体や、和解金額、和解の条件を、家族や友人を含む第三者に話してはいけないという意味です。

5. 謝罪条項と再犯防止

謝罪

「本件について深く謝罪する」という条項が含まれていることがあります。

再犯防止

「今後、著作物を違法にアップロードまたはダウンロードしないことを約束する」という条項が含まれていることがあります。

これらは一般的な和解条項に含まれる定型的な条項です。

6. 清算条項

何が「清算」されるのかを確認する

清算されるのは対象作品だけ

「本和解条項に定めるもの以外に何らの債権債務がないことを相互に確認する」という条項が含まれていることがあります。

ここで注意すべきなのは、清算の対象が何かという点です。

個別和解(1作品ごとの和解)の場合、清算されるのはその作品に関する債権債務だけです。 同じ権利者の他の作品についてまで清算されるわけではありません。

つまり、1作品について個別和解しても、同じ権利者が別の作品について追加で請求してくる可能性は残ります。

包括和解であれば範囲は広いが

「依頼会社の全ての作品を対象とする包括的な和解」の場合は、その権利者の全作品が清算対象になります。 ただし、包括和解の金額は個別和解より高額に設定されていることが多く、そもそもその金額が適正かどうかは別途検討が必要です。

他の権利者からの請求は清算されない

いずれの場合も、別の権利者からの請求は清算されません。 1社と和解しても、2社目、3社目から別途請求が届く可能性があります。

1社目の和解金額だけでなく、今後の請求も含めた全体の負担を把握したうえで判断することが重要です。

7. 合意管轄

東京地方裁判所が指定されていることが多い

「本件に関する一切の法的紛争は、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」と記載されていることがあります。

これは、和解条項に関して争いが生じた場合の裁判所が東京に指定されるという意味です。 地方に住んでいる方にとっては、万一の場合に東京まで出向く必要が生じる条件です。

8. 和解条項に署名する前に考えるべきこと

そもそも和解すべきかどうか

和解条項の条件を検討する前に、そもそもこの金額で和解すべきかどうかを検討する必要があります。

権利者側の提示額は、法律で決まった金額ではありません。 裁判で争えば、大幅に減額される可能性があります。

当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、和解条項に署名するよりも裁判で争う方が得策であることが多いです。

分割払いのリスクを理解しているか

分割払いで和解する場合、1回でも支払いが遅れれば期限の利益を喪失し、残額の一括請求と遅延損害金が発生します。 さらに、刑事告訴をしないという約束も適用されなくなる可能性があります。

分割払いで和解するのであれば、最後まで遅れずに支払い切れるかどうかを慎重に検討すべきです。

他の権利者からの請求も想定されていないか

1社と和解しても、別の権利者から追加の請求が届く可能性があります。 1社目の和解金額だけでなく、今後の請求も含めた全体の負担を把握したうえで判断することが重要です。

まとめ

トレントの著作権侵害で和解を検討する場合、和解条項に署名する前に、何に合意しようとしているのかを正確に理解する必要があります。

和解金額は権利者側が設定した定額であり、法律で決まった金額ではありません。 分割払いで1回でも遅れれば、残額の一括請求、遅延損害金、刑事告訴のリスクが生じる条件になっていることがあります。 和解内容を第三者に話すことを禁じる秘密保持条項が含まれていることがあります。 1社と和解しても、別の権利者からの請求は清算されません。

そもそも、この金額で和解すべきかどうかを検討することが先です。 当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

和解条項に署名する前に、弁護士に相談して見通しを確認することをおすすめします。

よくある質問

和解条項の条件を交渉で変えることはできますか。 和解条項は権利者側が作成したテンプレートであり、条件交渉の余地はほとんどないことが多いです。だからこそ、和解に応じるかどうか自体を慎重に判断する必要があります。

分割払いで1回遅れたらどうなりますか。 期限の利益喪失条項がある場合、残額を直ちに一括で支払う義務が生じます。遅延損害金(年14.6%等)も発生することがあります。さらに、刑事告訴をしないという条件が適用されなくなる可能性があります。

和解したら他の権利者からの請求もなくなりますか。 なりません。清算条項の範囲はその和解の対象作品に限られます。別の権利者からの請求は別の問題であり、追加で届く可能性があります。

和解せずに裁判で争った方がよいですか。 当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。

和解条項の内容を家族に相談してもよいですか。 秘密保持条項がある場合、和解条項の存在や内容を第三者に開示しないことが求められます。署名前の段階で弁護士に相談することは問題ありません。弁護士には守秘義務があります。

お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
電話:0564-73-3487
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受付時間:平日9:00〜17:00
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