トレントの著作権侵害で書面が届いたらやってはいけないこと|弁護士に相談する前に判断を誤らないために
トレントの著作権侵害でプロバイダや権利者側から書面が届いたとき、動揺して最初の行動を間違えてしまう方がいます。最初の行動を間違えると、後から弁護士に依頼しても取り返しがつかないことがあります。弁護士に相談するまでの間にやってはいけないことを、理由とともに解説します。
書面が届いた直後が最も危ない
書面が届いた瞬間、多くの方は強い不安に襲われます。
「逮捕されるのではないか」「家族にバレるのではないか」「人生が終わるのではないか」。
この不安から逃れるために、冷静な判断ができないまま行動してしまい、結果として状況を悪化させることがあります。
以下に挙げる行動は、すべて実際に相談者がやってしまった事例に基づいています。
1. 権利者側に自分で連絡してはいけない
なぜやってはいけないのか
書面に記載されている電話番号に自分で電話したり、メールを送ったりする方がいます。
「謝れば穏便に済むのではないか」「自分で交渉すれば安くなるのではないか」と考えてのことですが、事実関係が整理できていない段階で権利者側の代理人弁護士と話せば、不用意な発言をしてしまうリスクが極めて高いです。
「やりました」と事実を認めてしまう。
「払います」と支払いを約束してしまう。
勤務先や収入などの追加の個人情報を教えてしまう。
対象作品の数や利用期間について不正確な情報を伝えてしまう。
これらの発言は、後から「電話でこう言いましたよね」と引用される材料になります。
代わりにすべきこと
弁護士に相談するまで、権利者側には一切連絡しないでください。
弁護士に依頼すれば、以後の連絡は弁護士が窓口になります。
2. 提示額をそのまま支払ってはいけない
なぜやってはいけないのか
「早く終わらせたい」「これ以上書面が届くのが怖い」と思い、提示された金額をそのまま支払ってしまう方がいます。
しかし、権利者側が提示する示談金は、法律で決まった金額ではありません。
裁判で争えば、提示額の数分の一から数十分の一にまで下がることがあります。
一度支払って和解書に署名してしまうと、「払いすぎだった」と後から気づいても返還を求めることは極めて困難です。
代わりにすべきこと
提示額が裁判で認められる損害賠償金額と比べてどうなのかを、弁護士に確認してから判断してください。
3. トレント関連のデータを削除してはいけない
なぜやってはいけないのか
不安からダウンロードしたファイルやトレントのソフトを慌てて削除したくなりますが、今の段階では削除しないでください。
権利者側が持っている証拠は利用者のパソコンの中にはなく、ファイルを削除しても権利者側の証拠には影響しません。
逆に、パソコンに残っているデータは、自分の利用状況(いつからいつまで使っていたか、どの作品をダウンロードしていたか等)を確認するための材料になり、損害額の主張立証に役立つことがあります。
書面が届いた後のタイミングで意図的に削除した場合は、「証拠隠滅を図った」と権利者側から主張されるリスクもあります。
代わりにすべきこと
トレントのソフトは直ちにアンインストールしてください(アップロードを止めるため)。
ダウンロード済みのファイルは弁護士に相談するまで残しておいてください。
4. 書面を放置してはいけない
なぜやってはいけないのか
「詐欺かもしれないから無視しよう」「対応しなければ相手が諦めるだろう」と考えて放置する方がいます。
しかし、書面が本物であった場合、放置を続けると次の段階に進みます。
督促の書面が繰り返し自宅に届き、家族に知られるリスクが高まる。
訴訟が提起され、訴状が自宅に届く。
答弁書を出さず欠席判決で提示額がそのまま認容される。
給与差押えで勤務先にも知られる。
弁護士に依頼して対応していれば数万円で解決できた問題が、放置の結果、数十万円の判決と給与差押えに至ることがあります。
代わりにすべきこと
書面が届いたら、内容を確認し、弁護士に相談してください。
本物か詐欺か分からない場合も、弁護士に書面を見せて確認してください。
5. 和解書に署名してはいけない(内容を確認する前に)
なぜやってはいけないのか
書面に和解条項案が同封されていることがあります。
「署名して返送すれば解決する」と思い、内容を確認しないまま署名してしまう方がいます。
しかし、和解条項には利用者側に不利な条件が含まれていることがあります。
期限の利益喪失条項(1回でも支払いが遅れれば残額を一括請求)。
高率の遅延損害金。
刑事告訴をしないことの条件が全額完済に限定されていること。
和解書に署名すれば、これらの条件のすべてに同意したことになります。
署名後に覆すことは極めて困難です。
代わりにすべきこと
和解書に署名する前に、必ず弁護士に内容を確認してもらってください。
そもそも和解金額が適正かどうかの検討が先です。
6. 家族に内緒で借金して払ってはいけない
なぜやってはいけないのか
「家族に知られたくない」「すぐに払って終わらせたい」という気持ちから、消費者金融やカードローンで借金して提示額をそのまま支払ってしまう方がいます。
しかし、提示額が裁判で認められる金額を大幅に上回っているのであれば、本来払う必要のない金額のために借金をすることになります。
裁判で争えば数万円から十数万円程度で解決できたかもしれない問題に対して、44万円や88万円の借金を背負う結果になりかねません。
代わりにすべきこと
弁護士に見通しを確認してから、支払いの判断をしてください。
弁護士費用の支払いが困難な場合は、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる場合があります。
7. インターネット上の情報だけで判断してはいけない
なぜやってはいけないのか
掲示板やSNSで「放置しても大丈夫だった」「示談金の相場は〇〇万円だから払うしかない」「VPNを使えばバレない」といった情報を信じて行動する方がいます。
しかし、これらの情報は法的に不正確なものや、特定の事案にしか当てはまらないものが含まれています。
他人の体験談がそのまま自分に当てはまるとは限りません。
代わりにすべきこと
インターネット上の情報は参考にとどめ、自分の事案については弁護士に直接相談してください。
8. トレントの利用を続けてはいけない
なぜやってはいけないのか
書面が届いた後もトレントの利用を続ければ、新たなIPアドレスが記録され、請求対象の作品数が増えます。
送信可能期間も延びるため、損害賠償金額が大きくなります。
さらに、「書面を受け取った後も利用を続けた」という事実は、過失ではなく故意による侵害と評価される可能性があり、刑事告訴のリスクも高まります。
代わりにすべきこと
トレントのクライアントソフトを直ちにアンインストールしてください。
自動起動設定も解除してください。
やるべきことは3つだけ
書面が届いたら、やってはいけないことを避けたうえで、やるべきことは3つだけです。
トレントのソフトをアンインストールする(利用を止める)。
書面と封筒をすべて保管する。
弁護士に相談する。
この3つだけを行い、それ以外の行動は弁護士に相談してから判断してください。
当事務所の対応
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの著作権侵害で書面が届いたら、次のことをやってはいけません。
権利者側に自分で連絡してはいけない。不用意な発言のリスクがある。
提示額をそのまま支払ってはいけない。裁判で争えば大幅に下がる可能性がある。
トレント関連のデータを削除してはいけない。損害額の主張立証に役立つことがある。
書面を放置してはいけない。欠席判決と給与差押えのリスクがある。
和解書に内容を確認せずに署名してはいけない。不利な条件が含まれていることがある。
借金して提示額を払ってはいけない。払う必要のない金額の可能性がある。
インターネット上の情報だけで判断してはいけない。法的に不正確な情報がある。
トレントの利用を続けてはいけない。損害と刑事リスクが拡大する。
やるべきことは、ソフトのアンインストール、書面の保管、弁護士への相談の3つだけです。
よくある質問
書面が届きました。まず何をすべきですか。
トレントのソフトをアンインストールし、書面と封筒をすべて保管し、弁護士に相談してください。それ以外の行動は弁護士に相談してから判断してください。
権利者側に電話してしまいました。取り返しがつきませんか。
電話での発言が直ちに法的拘束力を持つとは限りませんが、不利な材料になり得ます。何を話したかを記録して弁護士に伝えてください。これ以上自分で連絡しないでください。
すでに払ってしまいました。取り戻せますか。
支払って和解が成立した場合、取り戻すことは極めて困難です。ただし、2社目以降の請求については弁護士に依頼して対応できます。
データを削除してしまいました。不利になりますか。
削除したこと自体が直ちに不利になるわけではありませんが、利用状況の確認が困難になります。覚えている範囲で情報を整理して弁護士に伝えてください。
書面が詐欺かもしれないので無視してよいですか。
無視しないでください。本物であった場合に欠席判決や給与差押えに至るリスクがあります。弁護士に書面を見せて本物かどうか確認してください。
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