トレントはダウンロードしただけなのになぜ著作権侵害になるのか|「アップロードした覚えはない」と思っている方へ
トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、「ダウンロードしただけなのに、なぜこんな高額の請求が来るのか」「アップロードなんてしていない」と感じる方は多いです。しかし、トレントの仕組み上、ダウンロードした時点でアップロードも行っています。なぜそうなるのか、それが法的にどう評価されるのかを解説します。
「ダウンロードしただけ」ではない
トレントの著作権侵害で書面を受け取った方からよく聞くのが、「自分はダウンロードしただけで、アップロードなんてしていない」という言葉です。
この認識は、トレント(BitTorrent)の仕組みを理解すると、誤りであることが分かります。
トレントでファイルをダウンロードすると、ダウンロードしたデータは同時に他の利用者に対してアップロード(送信)される仕組みになっています。 自分でアップロードの操作をした覚えがなくても、トレントのソフトが自動的にアップロードを行っています。
これが、「ダウンロードしただけ」で著作権侵害の責任を問われる理由です。
1. トレントの仕組み――なぜダウンロード=アップロードになるのか
通常のダウンロードとの違い
通常のウェブサイトからファイルをダウンロードする場合、データはサーバーから自分のパソコンに一方向で送られます。 ダウンロードした人がそのデータを他の人に送ることはありません。
トレントの場合
トレントでは、ファイルをダウンロードしている最中から、すでにダウンロード済みの部分を他の利用者に送信します。 ダウンロードが完了した後も、トレントのソフトを起動していれば、ファイル全体を他の利用者に送信し続けます。
つまり、トレントの利用者は全員が「ダウンロードする人」であると同時に「アップロードする人」でもあります。 トレントの仕組み自体が、利用者全員にアップロードをさせる設計になっているのです。
「共有」という状態
トレントでは、ファイルをダウンロードした利用者のパソコンが、そのファイルの配信元の一つになります。 利用者が増えるほどファイルの配信元が増え、効率的に共有が広がる仕組みです。
この「共有」が、法的には「公衆送信」や「送信可能化」に該当し、著作権侵害の根拠になります。
2. 法的にはどう評価されるのか
アップロード(送信可能化)は著作権侵害
著作権法上、著作物を権利者の許諾なく公衆に送信すること(公衆送信権の侵害)、および送信可能な状態に置くこと(送信可能化権の侵害)は、著作権侵害にあたります。
トレントを利用してファイルをダウンロードした時点で、そのファイルは他の利用者に送信可能な状態に置かれています。 これが送信可能化権の侵害です。
ダウンロード自体も違法
平成24年の著作権法改正により、違法にアップロードされた著作物を、それと知りながらダウンロードする行為も違法とされています(著作権法第119条第3項)。
つまり、アップロードとダウンロードの両方が違法であり、トレントの利用者はその両方を同時に行っているということになります。
刑事罰の対象にもなる
アップロード(送信可能化)については、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(著作権法第119条第1項)。 ダウンロードについては、2年以下の懲役または200万円以下の罰金(著作権法第119条第3項)。
「ダウンロードしただけ」という認識であっても、法的にはアップロードも行っているため、より重い刑事罰の対象になり得ます。
3. 「アップロードした覚えはない」は通用するのか
意図的にアップロードしていなくても
「自分はアップロードの操作をしていない」「アップロードするつもりはなかった」という主張は、法的には通用しにくいです。
トレントのソフトを自分の意思でインストールし、自分の意思でファイルをダウンロードした以上、そのソフトがアップロードも行う仕組みであることは、利用者が認識すべきことだと評価されます。
損害額の算定ではアップロードが基礎になる
損害賠償請求において、損害額の算定はアップロード(送信可能化)を基礎に行われます。
利用者がファイルを送信可能な状態に置いていた期間中に、他の利用者がそのファイルをダウンロードした回数が、損害額の計算に使われます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
4. 「知らなかった」で許されるのか
仕組みを知らなかったことは免責事由にならない
「トレントがアップロードもする仕組みだとは知らなかった」という主張は、法的には免責事由にはなりません。
不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)では、過失があれば責任が認められます。 トレントの仕組みを調べずに利用したこと自体が、過失と評価される可能性があります。
しかし損害額は争える
仕組みを知らなかったことが免責事由にならないとしても、権利者側が請求する損害額がそのまま認められるかどうかは別の問題です。
権利者側の提示額は法律で決まった金額ではなく、裁判で争えば大幅に減額される可能性があります。
「知らなかったから悪くない」という主張は通用しませんが、「請求された金額が適正ではない」という主張は、適切な主張立証ができれば通用します。
5. この段階ですべきこと
トレントの利用を直ちに停止する
まだトレントのソフトを起動していたり、自動起動設定になっている場合は、直ちに利用を停止してください。 利用を続ければ、送信可能な状態にしている期間が延び、損害額が増える可能性があります。
権利者の言い値で支払わない
「ダウンロードしただけのつもりだったのに、実はアップロードもしていたのか」と知って動揺し、権利者の言い値を支払ってしまう方がいます。
しかし、提示された金額が適正かどうかは、冷静に検討する必要があります。 よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。
弁護士に相談する
トレントの仕組みを理解したうえで、提示された金額が裁判で認められる損害額と比べて適正かどうかを弁護士に確認することが、合理的な判断の出発点になります。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントは、ダウンロードした時点で同時にアップロードも行う仕組みになっています。 「ダウンロードしただけ」「アップロードした覚えはない」という認識であっても、法的にはアップロード(送信可能化)を行っていると評価されます。
仕組みを知らなかったことは免責事由にはなりませんが、権利者側が請求する金額が適正かどうかは別の問題です。
当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
請求が届いた段階で弁護士に相談し、対応方針を判断することをおすすめします。
よくある質問
ダウンロードしただけなのに、なぜアップロードしたことになるのですか。 トレントの仕組み上、ファイルをダウンロードしている最中から、ダウンロード済みの部分が他の利用者に送信されます。ダウンロードが完了した後もソフトを起動していれば送信が続きます。利用者が意図的にアップロード操作をしなくても、ソフトが自動的に行っています。
アップロードする仕組みだと知りませんでした。それでも責任を問われますか。 知らなかったことは法的には免責事由にはなりません。ただし、損害額が権利者の請求どおりに認められるかは別の問題です。適切な主張立証ができれば、大幅に減額される可能性があります。
ダウンロードだけの違法性とアップロードの違法性は違いますか。 違います。アップロード(送信可能化)は10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、ダウンロードは2年以下の懲役または200万円以下の罰金です。トレントでは両方を同時に行っているため、より重い方の刑事罰が適用される可能性があります。
トレントのソフトを削除すればアップロードは止まりますか。 止まります。ソフトをアンインストールすれば、以後のアップロードは発生しません。ただし、アンインストールする前の期間については、すでに送信可能な状態に置いていたと評価されるため、過去の利用に対する責任は残ります。
請求された金額が高額ですが、仕方がないのですか。 権利者の提示額は法律で決まった金額ではありません。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。
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