トレントをやめたのに請求が届いた|過去の利用でも損害賠償を請求されるのか
トレントの利用はもうやめた。何か月も前、あるいは1年以上前にアンインストールした。それなのに、プロバイダから意見照会書が届いた、あるいは権利者側から請求書が届いた。「もうやめたのになぜ今さら」と感じている方へ。過去の利用でも請求が届く理由と、この段階での対応について解説します。
「もうやめたのに、なぜ今さら届くのか」
トレントの著作権侵害に関する書面が届いたとき、「もう何か月も前にやめたのに」「とっくにソフトを消したのに」と困惑する方は少なくありません。
しかし、書面が届くタイミングと、トレントを利用していたタイミングにはズレがあります。 やめた後に届いたからといって、請求の対象が過去の利用ではないということにはなりません。
むしろ、トレントの著作権侵害に関する書面は、利用をやめてから数か月後、場合によっては1年以上経ってから届くことが珍しくありません。
1. なぜ利用をやめた後に届くのか
監視・開示・請求には時間がかかる
権利者側がトレントの利用者を特定して請求書を送るまでには、複数の段階があります。
権利者側の監視システムが、トレントネットワーク上で対象ファイルを共有しているIPアドレスを検知する。 権利者側が、そのIPアドレスを割り当てていたプロバイダに対して発信者情報の開示を請求する。 プロバイダが意見照会書を契約者に送付する。 開示が行われた後、権利者側が契約者に対して損害賠償を請求する。
このプロセスには、数か月から1年以上かかることがあります。
つまり、トレントを利用していた時点で監視システムに検知されていれば、その後にソフトをアンインストールしても、手続はすでに進行しています。
「やめた」ことは請求を止める理由にならない
利用をやめたこと自体は、過去の著作権侵害に対する損害賠償請求を止める理由にはなりません。
損害賠償請求の対象は、過去に行われた著作権侵害行為です。 「今はもうやめている」ということは、今後新たな侵害を行わないという意味では重要ですが、過去の侵害に対する責任がなくなるわけではありません。
2. いつの利用が対象になっているのか
書面に記載されている日時を確認する
権利者側からの書面には、対象となる通信の日時が記載されていることがあります。 この日時が、トレントを利用していた時期と一致しているかどうかを確認してください。
自動起動に注意
トレントのクライアントソフトは、パソコンの起動時に自動的に立ち上がる設定になっていることがあります。
自分では「もう使っていない」と思っていても、ソフトが自動起動してバックグラウンドで動作し続けていた場合、意図せず送信可能な状態を維持していた可能性があります。
いつソフトをアンインストールしたのか、自動起動の設定がどうなっていたのかは、対応方針を検討するうえで重要な事実です。
3. 過去の利用でも損害額は変わらない
損害額の算定方法は同じ
過去の利用であっても、損害額の算定方法は現在の利用と同じです。 著作権法第114条に基づき、ダウンロード回数と1ダウンロードあたりの利益額で算定されます。
利用をやめた時期が損害額に影響することがある
損害額の算定にあたっては、利用者が送信可能な状態にしていた期間が重要です。
利用をやめた時期が早ければ、送信可能な状態にしていた期間は短くなります。 期間が短ければ、その間のダウンロード回数も限られるため、損害額は低くなる傾向があります。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
「いつやめたか」「いつソフトを削除したか」といった事実は、送信可能期間の限定に直結するため、正確に整理しておくことが重要です。
4. 「もうやめたから大丈夫」ではない
やめたことは有利な事情ではあるが、免責にはならない
利用をやめていることは、刑事告訴のリスクを考えるうえでは有利な事情です。 「現在は利用を停止しており、再犯のおそれがない」という事実は、検察の起訴判断に影響する可能性があります。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事告訴に至った案件は一度もありません。
しかし、民事の損害賠償請求に対しては、「やめた」こと自体は免責事由にはなりません。 過去の利用に対する請求である以上、対応は必要です。
放置すれば状況は進む
「もうやめたから放っておけば大丈夫だろう」と考えて放置すると、手続は権利者側のペースで進みます。 訴訟が提起されれば訴状が自宅に届き、対応しなければ欠席判決で権利者の請求額がそのまま認容されるおそれがあります。
5. この段階ですべきこと
利用状況を整理する
いつからいつまでトレントを利用していたか。 いつソフトをアンインストールしたか。 自動起動の設定はどうなっていたか。 どの作品をダウンロードしていたか(覚えている範囲で)。
これらの事実は、損害額の主張立証に直結します。 記憶が曖昧になる前に整理しておくことが重要です。
弁護士に相談する
過去の利用であっても、対応方針は現在の利用と変わりません。 提示された金額が適正かどうかを検証し、裁判で争った場合の見通しを確認したうえで、対応方針を判断します。
弁護士に依頼すれば、以後の連絡窓口が弁護士になり、自宅への書面を止めることもできます。
まとめ
トレントの利用をやめた後に書面が届くのは、監視・開示・請求のプロセスに時間がかかるためです。 「もうやめたから」という理由で過去の利用に対する請求がなくなるわけではありません。
ただし、利用をやめた時期が早ければ、送信可能な状態にしていた期間は短くなり、損害額の主張立証において有利に働くことがあります。
当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
「もうやめたから大丈夫」と放置するのではなく、利用状況を整理したうえで弁護士に相談し、対応方針を判断することをおすすめします。
よくある質問
トレントをやめてから1年以上経ちますが、今さら請求されることはありますか。 あります。監視・開示・請求のプロセスには数か月から1年以上かかることがあるため、利用をやめた後に書面が届くことは珍しくありません。
ソフトをアンインストールすれば請求されませんか。 アンインストールした後に新たな侵害は発生しませんが、アンインストールする前の利用に対する請求は届くことがあります。
やめた時期が早ければ損害額は低くなりますか。 送信可能な状態にしていた期間が短ければ、その間のダウンロード回数も限られるため、損害額は低くなる傾向があります。いつやめたかは損害額の主張立証に直結する重要な事実です。
自動起動で気づかないうちに動いていた場合はどうなりますか。 ソフトが自動起動で動作し続けていた場合、意図せず送信可能な状態を維持していた可能性があります。自動起動の設定やアンインストールの時期は、対応方針を検討するうえで重要な事実ですので、弁護士に相談の際にお伝えください。
もうやめているのに刑事告訴されることはありますか。 利用を停止していることは有利な事情ですが、過去の利用について刑事告訴される可能性がゼロになるわけではありません。当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針をとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
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