トレントの意見照会書に同意で返送してしまった|今からでもできることはあるのか
トレントに関する意見照会書に、内容をよく理解しないまま「同意」で返送してしまった。返送した後になって調べてみたら「同意しない方がよかったのでは」という情報が出てきた。もう取り返しがつかないのか。今からでもできることはあるのか。意見照会書に同意で返送した後に起きることと、この段階からでもとるべき対応を解説します。
同意で返送した後に何が起きるのか
意見照会書に「同意」で返送した場合、プロバイダは権利者側に対して契約者の情報(氏名・住所等)を開示します。 開示された後、権利者側から損害賠償請求の書面が届くことになります。
ただし、開示されてから請求書が届くまでには通常ある程度の期間がかかります。 数週間で届くこともあれば、数か月かかることもあります。
つまり、同意で返送した時点で損害賠償の金額が確定したわけではなく、支払義務が生じたわけでもありません。 確定しているのは、契約者の情報が権利者側に渡る(または渡った)ということだけです。
1. 「同意=全面的に認めた」ではない
よくある誤解
「同意で返送してしまったから、相手の言い分をすべて認めたことになるのではないか」と心配する方がいます。
しかし、意見照会書の「同意」は、発信者情報の開示に同意したという意味です。 著作権侵害の事実をすべて認めたとか、相手が請求してくる金額を支払うことに同意したということではありません。
損害額は別の問題
開示に同意したことと、いくらの損害賠償を支払うかは、まったく別の問題です。
権利者側が請求してくる金額は、権利者側が独自に設定した定額であり、法律で決まった金額ではありません。 当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
意見照会書に同意で返送した後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。
2. 同意で返送したことで不利になる場面
開示の阻止はできなくなる
意見照会書に「不同意」で返送していれば、テレコムサービス協会書式による任意の開示請求であった場合、プロバイダが任意に開示しない可能性がありました。
同意で返送してしまった以上、この選択肢はなくなっています。 情報はすでに開示されている(または間もなく開示される)状態です。
請求対象の作品数が増えるリスクがある
同意で返送したことによる不利益として見落とされやすいのが、請求対象となる作品数の問題です。
不同意で返送した場合、権利者側が契約者情報を取得するには、作品ごとに開示命令を裁判所に申し立てる必要があります。 開示命令の申立てには手間とコストがかかるため、権利者側がすべての作品について申し立てるとは限りません。 結果として、請求対象の作品数が絞られる可能性があります。
一方、同意で返送した場合、契約者情報が権利者側に渡った時点で、権利者側はその契約者に対して把握しているすべての作品についてまとめて請求することができます。 開示命令の手間とコストがかからないため、請求対象の作品数が増えやすくなります。
作品数が増えれば、1作品あたりの損害額がたとえ数万円であっても、合計額は大きくなります。
損害額の争いには影響しない
もっとも、開示に同意したことは、1作品あたりの損害額を争う場面では不利にはなりません。
開示に同意した人も、不同意だったが裁判所の開示命令で開示された人も、損害額の算定方法は同じです。 当事務所が行う著作権法第114条に基づく主張立証は、同意・不同意にかかわらず同じように行えます。
3. 同意で返送した後、今からできること
弁護士に依頼して連絡窓口を切り替える
権利者側からの請求書が届く前の段階であっても、弁護士に依頼することは可能です。
当事務所に依頼いただいた場合、権利者側に受任通知を送付し、以後の連絡は当事務所宛てとなります。 これにより、権利者側からの最初の書面が当事務所に届くため、ご自宅に請求書が届くこと自体を回避できます。
同居のご家族に知られたくない方にとっては、請求書が届く前に窓口を切り替えておくことが特に重要です。
請求が届いたときの対応方針を事前に整理しておく
権利者側からの請求書が届く前に、対応方針を整理しておくことができます。
対象作品の数、トレントを利用していた期間、送信可能な状態にしていた期間といった事実関係を整理しておけば、請求書が届いた段階で慌てて判断する必要がなくなります。
権利者の言い値で支払わない
請求書が届いたとき、最も避けるべきなのは、権利者側の提示額をそのまま支払ってしまうことです。
権利者側の提示額は、権利者側が独自に設定した定額です。 同じ事務所が同じ種類の事案で、時期によって金額を引き上げていることもあります。
提示額が裁判で認められる損害額と比べて適正かどうかは、慎重に検討する必要があります。
裁判で争うことも選択肢になる
権利者側が個別の条件交渉に応じる保証はないため、交渉で減額が見込めないことがあります。 その場合、裁判で争い、裁判所に適正な損害額を認定してもらうことが現実的な選択肢になります。
当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
利用者側から先に「債務不存在確認訴訟」を提起するという方法もあります。
よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。
4. 刑事告訴のリスクについて
権利者側からの請求書には「支払わなければ刑事告訴する」と記載されていることがあります。
意見照会書に同意で返送したことが、刑事告訴のリスクを高めるわけではありません。 刑事告訴を行うかどうかは、権利者側の判断であり、意見照会書への回答内容とは別の問題です。
当事務所では、これまで多数のトレント案件を取り扱う中で、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっています。 その結果、当事務所が介入した後に刑事告訴に至った案件は、これまで一度もありません。
5. 「もっと早く相談すればよかった」と思う前に
意見照会書に同意で返送してしまった方の中には、「もう手遅れではないか」と思い込んで、さらに対応が遅れてしまう方がいます。
しかし、手遅れではありません。 同意で返送した後であっても、1作品あたりの損害額の主張立証は問題なく行えますし、連絡窓口を切り替えてご自宅への書面を止めることもできます。
むしろ、この段階で何もせずに放置して、権利者側からの請求書がご自宅に届いてしまう方が、対応の選択肢が狭まります。
「同意で返送してしまった」という事実は変えられませんが、その後の対応はまだ選べる段階です。
まとめ
意見照会書に同意で返送してしまった場合でも、できることはあります。
「同意」は発信者情報の開示に同意したという意味であり、損害額をすべて認めたわけではありません。 ただし、同意で返送したことにより、権利者側がすべての作品についてまとめて請求しやすくなるため、不同意の場合と比べて請求対象の作品数が増えるリスクがあります。 1作品あたりの損害額の主張立証は、同意・不同意にかかわらず同じように行えます。 権利者側からの請求書が届く前に弁護士に依頼すれば、連絡窓口を切り替えてご自宅への書面を止めることができます。 権利者側の提示額は法律で決まった金額ではなく、裁判で争えば大幅に減額される可能性があります。 当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。 当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針をとっており、介入後に刑事告訴に至った案件は一度もありません。
「同意で返送してしまったから手遅れ」ではありません。 請求書が届く前に対応を始めることで、その後の選択肢が広がります。
よくある質問
意見照会書に同意で返送してしまいましたが、もう取り返しがつきませんか。 取り返しがつかないわけではありません。同意は開示に対する同意であり、損害額を認めたわけではありません。1作品あたりの損害額の主張立証はこの段階からでも問題なく行えます。
同意で返送すると、請求される作品数が増えますか。 増えるリスクがあります。不同意であれば、権利者側は作品ごとに開示命令を申し立てる必要があり、手間とコストを考えてすべての作品について申し立てるとは限りません。同意で返送した場合、契約者情報が渡った時点で、権利者側が把握しているすべての作品についてまとめて請求しやすくなります。
同意で返送した後、いつ頃請求書が届きますか。 権利者側の対応次第ですが、開示から数週間で届くこともあれば、数か月かかることもあります。届く前に弁護士に依頼して窓口を切り替えておくことができます。
請求書が届く前でも弁護士に依頼できますか。 できます。事前にご依頼いただければ、権利者側に受任通知を送付しておくことで、請求書が当事務所に届くようになります。ご自宅に書面が届くこと自体を回避できます。
同意で返送した後、権利者の言い値で払うしかないですか。 そうではありません。権利者側の提示額は法律で決まった金額ではなく、裁判で争えば大幅に減額される可能性があります。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも10万円未満から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
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