トレントの著作権侵害で複数の権利者から同時に請求が届いた|まとめて対応すべきか1社ずつ応じるべきか
トレントの著作権侵害で1社だけでなく、2社、3社と別々の権利者から同時期に書面が届いた。それぞれ別の代理人弁護士事務所から別の金額を提示され、回答期限もバラバラ。「どれから対応すればよいのか」「全部に応じたら合計でいくらになるのか」と混乱している方へ。複数社から同時に請求が来た場合の考え方と対応を解説します。
なぜ複数の権利者から同時に届くのか
トレントでは、複数の制作会社の作品をダウンロードしていることが多いです。
制作会社ごとに別の代理人弁護士が就いているため、開示請求のタイミングは制作会社ごとにずれます。
しかし、たまたま同時期に開示が完了すれば、複数の権利者から同時期に書面が届くことになります。
1社だけであれば「この1社にどう対応するか」と考えればよいですが、同時に3社、4社から届くと、「全部にいくら払うのか」「どれから対応すべきか」という全く別の問題になります。
1. 1社ずつ応じるのは危険
合計額が見えないまま支払いが膨らむ
1社目に44万円、2社目に44万円、3社目に88万円を提示されている場合、1社ずつ応じていくと合計は176万円になります。
1社目に応じた時点では「44万円で済んだ」と思っていても、2社目、3社目と応じていくうちに、合計額が膨大になります。
1社目に払ったことで2社目以降の資金が不足する
1社目に44万円を支払った後で、2社目の44万円を支払う余裕がなくなることがあります。
1社目に応じる前に、全体でいくらになるのかを把握しておけば、このような事態は避けられます。
どの社の提示額も適正とは限らない
1社ごとに見れば「44万円」という金額ですが、裁判で争った場合の損害賠償金額が1社あたり数万円程度であれば、3社合計でも十数万円程度に収まる可能性があります。
1社ずつ言い値で応じていくのではなく、全体の見通しを踏まえて判断すべきです。
2. まず全体を把握する
届いている書面をすべて整理する
複数社から書面が届いた場合、まずすべての書面を整理してください。
どの権利者(制作会社)から届いているか。
代理人弁護士事務所はどこか。
対象作品は何か(作品名、作品数)。
提示されている金額はいくらか(個別和解、包括和解)。
回答期限はいつか。
権利者と代理人事務所の対応関係を確認する
同じ代理人事務所(たとえばITJ法律事務所)が複数の権利者の代理人を務めていることがあります。
この場合、ITJ法律事務所から届いた2通の書面が、実は2つの異なる制作会社の案件であることがあります。
逆に、同じ制作会社の案件であっても、対象作品が異なれば別々の書面が届くことがあります。
提示額の合計を計算する
すべての書面の提示額を合計して、「全部に応じた場合の総額」を把握してください。
この総額が、裁判で争った場合の損害賠償金額の合計と比べてどうなのかが、判断の基準になります。
3. 全体を見て対応方針を決める
弁護士にすべての書面をまとめて見せる
複数社から請求が届いた場合は、1社ずつ別々に対応するのではなく、すべての書面をまとめて弁護士に見せてください。
弁護士は、全体の状況を把握したうえで、最も合理的な対応方針を提案します。
全体の見通しを踏まえて判断する
弁護士に相談すれば、次のことが分かります。
全社の提示額合計が裁判で認められる損害賠償金額の合計と比べてどうなのか。
裁判で争った場合の弁護士費用を含めた総額はいくらか。
今後さらに追加の権利者から請求が届く可能性があるか。
1社ずつ対応方針を変える必要はない
複数社から請求が届いた場合でも、各社に対する対応方針を別々に決める必要はありません。
「すべての社について裁判で争う」という一貫した方針をとることもできますし、「特定の社については提示額が裁判で認められる金額に近いため和解し、他の社については裁判で争う」という判断もあり得ます。
いずれにしても、全体を見たうえで個別の判断を行う方が合理的です。
4. 回答期限がバラバラな場合
すべての期限を同時に守る必要はない
複数社から書面が届き、回答期限がそれぞれ異なる場合、すべての期限を同時に守ろうとして慌てる必要はありません。
書面に記載されている回答期限は、権利者側が一方的に設定したものであり、法律で決められた期限ではありません。
弁護士に依頼して受任通知を送付すれば、各社との連絡は弁護士が窓口になり、期限の問題は弁護士が管理します。
訴状だけは別
ただし、裁判所からの訴状が含まれている場合は、答弁書の提出期限は裁判所が設定したものであり、期限内に対応する必要があります。
複数の書面の中に訴状が含まれていないかを確認し、訴状があれば最優先で弁護士に相談してください。
5. 弁護士費用の問題
複数社に対応すると弁護士費用は増えるのか
複数社への対応を弁護士に依頼する場合、1社ごとに別々の弁護士費用がかかると心配される方がいます。
当事務所では、何社から請求が来ても、何件訴訟になっても上限が定まっている料金体系を採用しています。
複数社からの請求が重なっても、弁護士費用が際限なく増えるということはありません。
弁護士費用を含めた総額で比較する
判断の基準は、「全社の提示額合計」と「裁判で争った場合の損害賠償金額合計+弁護士費用」の比較です。
前者が176万円で、後者が数十万円程度であれば、弁護士費用を含めても裁判で争う方が大幅に有利です。
6. 同じ代理人事務所から複数の書面が届いた場合
まとめて和解を求められることがある
同じ代理人事務所が複数の権利者の代理人を務めている場合、複数の権利者の案件をまとめた包括的な和解を提案されることがあります。
この場合、提示される金額は個々の権利者の提示額の合計よりも低い場合がありますが、裁判で争った場合の損害賠償金額と比べて適正かどうかは、別途検討する必要があります。
包括的な和解でも他の代理人事務所の案件は対象外
同じ代理人事務所の案件について包括的に和解したとしても、別の代理人事務所が代理している権利者の案件は対象外です。
「全部まとめて解決した」と思っていたら、別の事務所から追加の請求が届くことがあります。
7. 損害額は全社についてまとめて争える
複数社から請求されている場合でも、各社の損害額はそれぞれ独立に争えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの著作権侵害で複数の権利者から同時に請求が届いた場合、1社ずつ対応するのではなく、全体を把握してから対応方針を決めるべきです。
1社ずつ言い値で応じていくと、合計額が膨大になるリスクがあります。
すべての書面を整理し、権利者、代理人事務所、対象作品、提示額、回答期限を一覧で把握してください。
弁護士にすべての書面をまとめて見せ、全体の見通しを踏まえて対応方針を決めてください。
回答期限は権利者側が設定したものであり、法律で決められた期限ではありません。ただし、訴状が含まれている場合は最優先で対応してください。
当事務所では、何社から請求が来ても上限が定まっている料金体系を採用しています。
複数社からの請求が同時に届いたとき、最もやってはいけないのは、パニックになって1社ずつ言い値で支払っていくことです。
まず弁護士に相談してください。
よくある質問
3社から同時に書面が届きました。全部に応じなければなりませんか。
全部に言い値で応じる必要はありません。全体を把握し、裁判で争った場合の見通しを踏まえて判断すべきです。
どの書面から対応すればよいですか。
訴状が含まれていれば最優先です。それ以外は、弁護士にすべての書面をまとめて見せ、全体で対応方針を決めてください。
1社ずつ別の弁護士に依頼すべきですか。
1つの弁護士事務所にまとめて依頼する方が、全体の見通しを踏まえた対応ができ、費用も抑えやすくなります。
複数社の合計が100万円を超えています。払えません。
提示額の合計は権利者側の設定額の合計にすぎません。裁判で争えば、合計額は大幅に下がる可能性があります。弁護士に全体の見通しを確認してください。
今後さらに別の権利者から届く可能性はありますか。
あります。弁護士に相談して、今後の追加請求の見込みを含めた全体の見通しを確認してください。
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