トレントをスマートフォンで使っていた場合|モバイル回線での利用で何が変わるのか
トレントの著作権侵害で書面が届いたが、トレントを使っていたのは自宅のパソコンではなくスマートフォンだった。モバイル回線(4G・5G)でトレントアプリを使っていた場合、自宅のWi-Fi環境とは何が異なるのか。開示請求の流れは変わるのか。スマートフォンでの利用に固有の問題を解説します。
スマートフォンでもトレントは使える
トレントのクライアントアプリはスマートフォン向けにも提供されています。
Android端末であれば、Google Playストアやインターネット上からトレントアプリをインストールして利用できます。
スマートフォンでトレントを使った場合でも、仕組みは同じです。
ファイルをダウンロードすれば同時にアップロードが行われ、著作権侵害の対象になります。
異なるのは、使用している回線の種類と、回線の契約者が誰かという点です。
1. モバイル回線で利用した場合、IPアドレスはどうなるのか
モバイル回線のIPアドレスは携帯キャリアが割り当てる
自宅のWi-Fiでトレントを使った場合、IPアドレスは自宅のインターネット回線のプロバイダが割り当てます。
一方、モバイル回線(4G・5G)でトレントを使った場合、IPアドレスはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクなどの携帯キャリアが割り当てます。
権利者側の監視システムは、どちらの場合でもIPアドレスを記録します。
モバイル回線だからIPアドレスが記録されない、ということはありません。
自宅Wi-FiとモバイルLTE/5Gを切り替えて使っていた場合
自宅ではWi-Fi、外出先ではモバイル回線というように切り替えて使っていた場合、それぞれの回線で別のIPアドレスが割り当てられています。
権利者側は両方のIPアドレスを記録している可能性があり、自宅のプロバイダと携帯キャリアの両方に対して開示請求が行われることがあります。
2. 開示請求は携帯キャリアに対して行われる
携帯キャリアが「プロバイダ」にあたる
モバイル回線の場合、携帯キャリアがプロバイダに該当します。
権利者側は、記録したIPアドレスをもとに、携帯キャリアに対して「このIPアドレスをこの日時に使っていた契約者は誰か」という発信者情報の開示請求を行います。
意見照会書は携帯キャリアから届く
開示請求を受けた携帯キャリアは、契約者に意見照会書を送付します。
自宅のプロバイダからではなく、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった携帯キャリアの名前で意見照会書が届くことになります。
スマートフォンの回線契約の名義人が自分であれば、自分宛てに届きます。
家族の名義で契約している場合は、契約者である家族宛てに届きます。
3. スマートフォンでの利用に固有の問題
格安SIM(MVNO)の場合
格安SIM(IIJmio、mineo、楽天モバイル等)を利用している場合、格安SIM事業者がプロバイダにあたります。
ただし、格安SIMの中には、回線設備を大手キャリアから借りて運営しているものがあり、IPアドレスの割当記録を大手キャリア側が持っている場合があります。
この場合、開示請求の流れがやや複雑になることがありますが、最終的に契約者が特定されるという結論は変わりません。
テザリングで他の端末を接続していた場合
スマートフォンのテザリング機能を使って、パソコンやタブレットをモバイル回線に接続し、そのパソコンでトレントを使っていた場合、IPアドレスはスマートフォンのモバイル回線のものになります。
この場合も、開示請求は携帯キャリアに対して行われ、スマートフォンの契約者が特定されます。
スマートフォンのIPアドレスは頻繁に変わる
モバイル回線のIPアドレスは、自宅の固定回線と比べて頻繁に変わることがあります。
権利者側が記録したタイムスタンプの時点で、そのIPアドレスを使っていた契約者が誰かを携帯キャリアが特定できるかどうかは、キャリアのログ保存状況によります。
ただし、主要な携帯キャリアはログを保存しているため、IPアドレスとタイムスタンプの組み合わせで契約者を特定できることが多いです。
アプリがバックグラウンドで動作し続ける場合
スマートフォンのトレントアプリは、アプリを閉じた後もバックグラウンドで動作し続けていることがあります。
自分では「使っていない」と思っていても、アプリがバックグラウンドでファイルを共有し続けている場合、送信可能な状態が意図せず維持されていたことになります。
アプリの設定でバックグラウンド通信を許可していた場合は、この点に注意が必要です。
4. スマートフォンの契約者が自分でない場合
家族名義の回線を使っていた場合
スマートフォンの回線が親や配偶者の名義で契約されている場合、意見照会書や権利者側からの書面は、契約者である家族宛てに届きます。
この場合、契約者である家族にトレントの利用が知られてしまいます。
弁護士に依頼して連絡窓口を切り替えれば、以後の書面は弁護士宛てに届くようになりますが、最初の書面が契約者である家族に届いてしまった後では、その事実を取り消すことはできません。
法人名義の回線を使っていた場合
会社から貸与されたスマートフォンでトレントを使っていた場合、回線の契約者は会社です。
開示請求が会社宛てに届く可能性があり、勤務先に知られるリスクがあります。
5. スマートフォンでの利用を停止する方法
トレントアプリをアンインストールする
スマートフォンからトレントアプリをアンインストールしてください。
アンインストールすれば、アプリによるアップロードは完全に止まります。
バックグラウンド通信を確認する
アンインストールする前に、アプリがバックグラウンドで通信していなかったかを確認してください。
バックグラウンド通信が許可されていた場合、アプリを起動していなくても通信が行われていた可能性があります。
ダウンロード済みのファイルは残しておく
アプリをアンインストールしても、ダウンロード済みのファイルはスマートフォンの内部ストレージに残っていることがあります。
このファイルは、弁護士に相談するまで削除しないでください。
自分の利用状況を確認するための材料になることがあります。
6. 損害額はスマートフォンでの利用でも争える
モバイル回線で利用していた場合でも、損害額の主張立証は自宅のWi-Fi環境の場合と同じです。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
スマートフォンのモバイル回線でトレントを使った場合でも、著作権侵害が成立し、損害賠償請求の対象になります。
モバイル回線のIPアドレスは携帯キャリアが割り当てており、権利者側の監視システムはこのIPアドレスも記録します。
開示請求は携帯キャリアに対して行われ、意見照会書は携帯キャリアから届きます。
スマートフォンの契約者が家族名義の場合、家族宛てに書面が届きます。
トレントアプリがバックグラウンドで動作し続けていた場合、意図せず送信可能な状態が維持されていた可能性があります。
損害額の主張立証は、自宅のWi-Fi環境の場合と同じように行えます。
スマートフォンでトレントを利用していた方は、まずアプリをアンインストールし、書面が届いたら弁護士に相談してください。
よくある質問
スマートフォンでトレントを使ってもバレますか。
バレます。モバイル回線のIPアドレスも権利者側の監視システムに記録されます。自宅のWi-Fi環境と同じように開示請求が行われます。
格安SIMでも開示請求されますか。
されます。格安SIM事業者も開示請求の対象になります。回線設備を大手キャリアから借りている場合でも、最終的に契約者は特定されます。
スマートフォンの契約が親名義です。親にバレますか。
意見照会書や権利者側からの書面は契約者宛てに届くため、親名義の場合は親に届きます。弁護士に依頼して窓口を切り替えれば、以後の書面は弁護士宛てになります。
アプリを消せばアップロードは止まりますか。
止まります。トレントアプリをアンインストールすれば、アプリによるアップロードは完全に停止します。ただし、過去の利用に対する請求は届くことがあります。
自宅のWi-Fiとモバイル回線の両方で使っていた場合はどうなりますか。
両方の回線のIPアドレスが記録されている可能性があり、自宅のプロバイダと携帯キャリアの双方に開示請求が行われることがあります。弁護士に両方の状況を伝えてください。
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