トレントで開示された個人情報はどうなるのか|IPアドレスから特定された氏名・住所はどこまで知られるのか
トレントの著作権侵害で発信者情報が開示されると、権利者側に自分の氏名や住所が渡ります。「自分の個人情報がどこまで知られているのか」「他の会社にも共有されるのか」「いつまで保持されるのか」。開示された個人情報がどう扱われるのかを解説します。
開示される情報は何か
プロバイダから権利者側に開示される発信者情報は、主に次の項目です。
契約者の氏名。
契約者の住所。
契約者の電話番号(開示対象に含まれている場合)。
契約者のメールアドレス(開示対象に含まれている場合)。
IPアドレスやタイムスタンプは、権利者側が開示請求の段階ですでに把握しています。
開示によって新たに渡るのは、そのIPアドレスを使っていた契約者の個人情報です。
1. 開示された情報は誰が持っているのか
権利者(制作会社)とその代理人弁護士
開示された個人情報は、開示を請求した権利者(制作会社等)と、その代理人弁護士が保有します。
権利者は開示された情報をもとに、損害賠償請求の書面を契約者の住所に送付します。
プロバイダは開示しただけ
プロバイダは権利者側の請求に応じて情報を開示しただけであり、開示後にプロバイダが契約者の情報を権利者側に追加で提供することは通常ありません。
2. 他の権利者に情報が共有されることはあるか
開示された情報は請求した権利者のもの
開示請求を行ったのがA社(とその代理人)であれば、開示された情報はA社側が保有します。
A社が開示によって取得した情報を、B社やC社に共有することは、通常想定されていません。
ただし、同じ代理人事務所が複数の権利者を代理している場合
同じ代理人弁護士事務所が複数の制作会社の代理人を務めている場合があります。
たとえば、ITJ法律事務所は複数のAV制作会社の代理人を務めています。
この場合、A社の案件で開示された契約者情報をもとに、同じ代理人事務所がB社の案件でもその契約者に対して請求を行う可能性が理論上ゼロとは言い切れません。
ただし、開示された情報は開示請求の対象となった著作権侵害に関する目的でのみ利用されるべきものであり、別の権利者の別の案件に流用することは、開示制度の趣旨に反する可能性があります。
別の権利者からの請求は別の開示請求に基づく
B社やC社から請求が届いた場合、それはB社やC社が独自にIPアドレスを記録し、独自に開示請求を行った結果であることが通常です。
A社からの開示情報がB社に渡ったから請求が来た、というわけではなく、B社が自ら監視・開示のプロセスを経て契約者を特定した結果です。
3. 開示された情報はいつまで保持されるのか
法律上の保持期間の定めはない
開示された個人情報について、権利者側がいつまで保持すべきか、いつまでに廃棄すべきかを定めた法律はありません。
権利者側が損害賠償請求や訴訟のために必要な限り、情報を保持し続けることは許容されています。
事案が解決すれば保持の必要性はなくなる
和解や裁判で事案が解決した後は、権利者側がその情報を保持し続ける必要性はなくなります。
ただし、解決後に権利者側が情報を廃棄したかどうかを、利用者側から確認する手段は限られています。
和解条項に廃棄条項が含まれることはまれ
和解書の中に「開示された個人情報を廃棄する」という条項が含まれることは、一般的ではありません。
情報の廃棄を求める場合は、和解交渉の中で個別に協議する必要があります。
4. 開示された情報は裁判記録として残るのか
訴訟になれば裁判記録に残る
訴訟が提起された場合、訴状や判決書には当事者の氏名が記載されます。
裁判記録は原則として公開されているため、閲覧できる状態になります。
ただし、トレントの著作権侵害の事案が個別の裁判記録として一般の検索エンジンに表示されることは、通常ありません。
裁判所に出向いて閲覧しなければ見られない情報です。
訴訟にならなければ裁判記録は残らない
権利者側との間で訴訟前に和解した場合や、権利者側が訴訟を提起しなかった場合は、裁判記録は存在しません。
公的な記録として氏名が残ることはありません。
開示命令の記録について
発信者情報開示命令は裁判所を通じた手続ですが、開示命令事件の記録はプロバイダと権利者の間の手続であり、契約者の氏名が開示命令の記録として公開されるわけではありません。
5. 開示された情報が悪用されるリスク
権利者側が損害賠償請求以外の目的で使用するリスク
開示された情報は、著作権侵害に対する損害賠償請求という目的のために開示されたものです。
この目的以外に使用されることは、個人情報保護の観点から問題があります。
実務上、権利者側が開示された情報を損害賠償請求以外の目的で使用しているケースは確認されていません。
弁護士が窓口になっていれば、自宅への接触を防げる
弁護士に依頼して受任通知を送付すれば、以後の連絡はすべて弁護士宛てになります。
権利者側が契約者の住所を知っていたとしても、弁護士が窓口になっていれば、自宅に直接書面を送ったり訪問したりすることは通常ありません。
6. バレるのはどこまでか
IPアドレスの特定からバレるまでの範囲
トレントの利用がバレる範囲は、段階によって異なります。
IPアドレスが記録された段階:権利者側はIPアドレスしか知らず、誰が使っていたかは分かりません。
プロバイダに開示請求した段階:プロバイダが意見照会書を契約者に送付します。同居の家族が受け取れば気づかれる可能性があります。
開示が行われた段階:権利者側に氏名・住所が渡り、損害賠償請求の書面が自宅に届きます。
弁護士に依頼した段階:以後の連絡は弁護士宛てになり、自宅への書面は止まります。
弁護士に依頼するタイミングが早いほど、自宅に届く書面の数が減り、家族に知られるリスクを抑えられます。
7. 損害額は開示後も争える
開示が行われ、権利者側に個人情報が渡った後であっても、損害額の主張立証は問題なく行えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの著作権侵害で開示された個人情報は、開示を請求した権利者とその代理人弁護士が保有します。
開示される情報は、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどです。
他の権利者に情報が共有されることは通常想定されていませんが、同じ代理人事務所が複数の権利者を代理している場合は注意が必要です。
開示された情報の保持期間について法律上の定めはなく、権利者側がいつ廃棄するかは不明です。
訴訟にならなければ、公的な記録として氏名が残ることはありません。
弁護士に依頼すれば、自宅への書面を止め、個人情報への直接の接触を防ぐことができます。
開示されたこと自体は取り消せませんが、その後の対応はまだ選べます。
弁護士に相談して、対応方針を判断してください。
よくある質問
開示された個人情報は他の会社にも渡りますか。
開示情報は請求した権利者側が保有するものであり、他の権利者に共有されることは通常想定されていません。別の権利者から請求が届いた場合は、その権利者が独自に開示請求を行った結果です。
開示された情報はいつまで保持されますか。
法律上の保持期間の定めはありません。事案が解決すれば保持の必要性はなくなりますが、権利者側が廃棄したかどうかを確認する手段は限られています。
裁判になったら名前が公開されますか。
訴訟が提起された場合、裁判記録には当事者の氏名が記載されます。ただし、検索エンジンに表示されることは通常なく、裁判所で閲覧しなければ見られません。訴訟にならなければ裁判記録は存在しません。
IPアドレスからどこまで特定されますか。
IPアドレスだけでは氏名・住所は分かりません。プロバイダへの開示請求を経て初めて、契約者の個人情報が権利者側に渡ります。
弁護士に依頼すれば自宅に書面は届きませんか。
弁護士に依頼して受任通知を送付すれば、以後の連絡はすべて弁護士宛てになります。権利者側から自宅に直接書面が届くことは通常なくなります。
お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
電話:0564-73-3487
FAX:050-3172-6485
受付時間:平日9:00〜17:00
アクセス:名鉄東岡崎駅南口徒歩30秒
