トレントを会社のWi-Fiや会社のパソコンで使っていた場合|勤務先に知られるリスクと対応
トレントの著作権侵害で書面が届いたが、トレントを使っていたのが自宅のネットワークではなく、会社のWi-Fiや会社から貸与されたパソコンだった。この場合、勤務先に知られるのか。懲戒処分を受けるのか。自宅のネットワークで利用していた場合とは異なる問題が生じます。
会社のネットワークを使っていた場合の特殊性
トレントの著作権侵害に関する一般的な解説は、自宅のインターネット回線で利用していた場合を前提にしています。
しかし、会社のWi-Fiや会社のパソコンでトレントを使っていた場合は、次の点で状況が異なります。
インターネット回線の契約者が会社であること。 会社のIT部門がネットワークの通信記録を保有している可能性があること。 就業規則上の問題が生じ得ること。
1. 開示請求は誰に届くのか
回線の契約者=会社に届く可能性がある
発信者情報の開示請求は、IPアドレスを割り当てていたプロバイダの契約者に対して行われます。
会社のWi-Fiを使ってトレントを利用していた場合、そのIPアドレスを割り当てていたのは会社が契約しているプロバイダです。 プロバイダからの意見照会書や、権利者側からの通知が、会社宛てに届く可能性があります。
会社に届けば、知られることになる
意見照会書や権利者側からの書面が会社宛てに届けば、その時点で会社にトレントの利用が知られる可能性が高いです。
会社の総務部門や法務部門が書面を受け取り、社内で対応を検討することになります。
自宅のネットワークも併用していた場合
会社と自宅の両方でトレントを利用していた場合、自宅のプロバイダ宛ての開示請求と、会社のプロバイダ宛ての開示請求が別々に行われることがあります。
自宅に届いた書面だけであれば会社に知られることはありませんが、会社のIPアドレスでも利用していた場合は、そちらからも開示請求が行われる可能性があります。
2. 会社のIT部門に知られるリスク
通信記録が残っている可能性
会社のネットワークでは、IT部門がセキュリティ目的で通信記録を保管していることがあります。
どの端末がどのサイトにアクセスしたか、どのポートを使って通信したかといった記録が残っていれば、トレントの利用が検知される可能性があります。
トレントは特徴的な通信パターンを持っているため、ネットワーク監視ツールを導入している企業であれば、トレントの利用が自動的に検知されることもあります。
権利者側からの開示請求がきっかけで発覚する場合
権利者側がプロバイダに開示請求を行い、プロバイダが会社に意見照会書を送付した場合、会社はその書面を受け取ることで初めてトレントの利用を把握することがあります。
この場合、会社は社内調査を行い、誰がトレントを使っていたかを特定しようとする可能性があります。
3. 就業規則上の問題
私的利用の禁止
多くの企業では、就業規則や情報セキュリティポリシーにおいて、会社のネットワークやパソコンの私的利用を禁止しています。
トレントの利用は、仮に著作権侵害に該当しなくても、私的利用の禁止に違反する行為です。 しかも、著作権侵害という違法行為を伴う私的利用であれば、就業規則違反の程度は重いと評価されます。
懲戒処分の可能性
会社のネットワークでトレントを利用し、著作権侵害に該当する行為を行っていたことが発覚すれば、懲戒処分の対象になり得ます。
処分の内容は、戒告、減給、出勤停止、諭旨退職、懲戒解雇など、就業規則の定めと行為の内容によって異なります。
ただし、どの程度の処分が相当かは、行為の内容、勤務態度、過去の処分歴等を総合的に考慮して判断されるため、直ちに懲戒解雇になるとは限りません。
4. 会社のパソコンを使っていた場合
貸与パソコンにトレントの痕跡が残っている
会社から貸与されたパソコンにトレントのクライアントソフトをインストールしていた場合、ソフトのインストール履歴やダウンロードしたファイルの痕跡が残っている可能性があります。
会社がパソコンの返却時に初期化やデータ確認を行う場合、痕跡が発見されることがあります。
自分のパソコンを会社のWi-Fiに接続していた場合
会社貸与のパソコンではなく、自分のパソコンを会社のWi-Fiに接続してトレントを使っていた場合、パソコン内の痕跡は会社には見えません。
ただし、会社のネットワークの通信記録にはトレントの通信が残っている可能性があり、IPアドレスの開示請求が会社宛てに届くリスクは同じです。
5. この状況ですべきこと
弁護士に早急に相談する
会社のネットワークやパソコンでトレントを使っていた場合は、自宅での利用以上に早急な対応が必要です。
権利者側からの書面が会社に届く前に弁護士に依頼し、対応方針を整理する必要があります。
自宅のネットワークでも利用していたかを確認する
会社のWi-Fiだけでなく、自宅のネットワークでもトレントを利用していたかどうかを確認してください。 自宅のプロバイダ宛てにも開示請求が行われている可能性があります。
会社に自分から申告すべきかどうか
会社に自分から申告すべきかどうかは、事案の状況によります。
開示請求がまだ会社に届いていない段階であれば、届く前に弁護士と対応方針を検討することができます。 すでに会社に書面が届いている場合は、会社から事情聴取を受ける可能性があり、弁護士と相談したうえで対応する必要があります。
損害額は争える
会社のネットワークで利用していた場合でも、損害額の主張立証は自宅の場合と同じです。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントを会社のWi-Fiや会社のパソコンで使っていた場合、自宅での利用とは異なるリスクがあります。
回線の契約者が会社であるため、開示請求やプロバイダからの書面が会社宛てに届く可能性があります。 会社のIT部門の通信記録から、トレントの利用が検知される可能性があります。 就業規則違反として懲戒処分の対象になり得ます。 損害額の主張立証は自宅の場合と同じように行えます。
会社のネットワークでトレントを利用していたことに気づいた段階で、できるだけ早く弁護士に相談して対応方針を整理してください。
よくある質問
会社のWi-Fiでトレントを使っていました。会社にバレますか。 権利者側の開示請求が会社のプロバイダに対して行われれば、書面が会社宛てに届く可能性があります。また、会社のIT部門が通信記録を確認すれば、トレントの利用が検知される可能性もあります。
会社にバレたら懲戒解雇されますか。 直ちに懲戒解雇になるとは限りません。処分の内容は、行為の内容、就業規則の定め、勤務態度等を総合的に考慮して判断されます。ただし、懲戒処分の対象になり得ることは認識しておく必要があります。
会社に自分から申告すべきですか。 事案の状況によります。弁護士に相談して、申告すべきかどうかを含めた対応方針を検討してください。
会社のパソコンにトレントの痕跡が残っています。消すべきですか。 弁護士に相談する前に慌てて消さない方がよいです。痕跡を消しても通信記録が会社に残っている可能性があり、消したこと自体が問題視されることもあります。
自宅と会社の両方で使っていた場合はどうなりますか。 自宅のプロバイダと会社のプロバイダの双方に開示請求が行われる可能性があります。弁護士に両方の状況を伝えたうえで、対応方針を検討してください。
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