トレントを使っていたパソコンを処分・買い替えた後に書面が届いた|手元にデータがなくても対応できるのか
トレントの著作権侵害で書面が届いたが、トレントを使っていたパソコンはすでに処分した、買い替えた、中古で売却した。スマートフォンも機種変更して古い端末は手元にない。「データが何も残っていないのに、どう対応すればよいのか」「自分に有利な事情を示す手段がないのではないか」と不安になっている方へ。パソコンが手元にない場合の考え方と対応を解説します。
書面が届くころにはパソコンが手元にないことは珍しくない
トレントを利用してから書面が届くまでには、半年から1年以上かかることがあります。
その間に、次のようなことが起きているのはごく自然なことです。
パソコンが古くなったので買い替えた。
故障したので処分した。
フリマアプリや買取店で中古として売却した。
スマートフォンを機種変更し、古い端末を下取りに出した。
書面が届いて初めて事態を知り、「あのパソコンを残しておけばよかった」と後悔する方がいますが、処分したこと自体を責める必要はありません。
1. パソコンを処分したことは不利になるのか
権利者側の証拠は利用者のパソコンの中にはない
権利者側が持っている証拠は、監視ツールが記録したIPアドレス、タイムスタンプ、ファイルのハッシュ値と、プロバイダからの開示情報です。
これらは利用者のパソコンの外にある記録です。
利用者がパソコンを処分しても、権利者側の証拠には何の影響もありません。
書面が届く前の処分は通常問題にならない
書面が届く前に、買い替えや故障といった日常的な理由でパソコンを処分した場合、それが証拠隠滅と評価されることは通常ありません。
一方、書面が届いた後に、問題を隠す目的で慌ててパソコンを処分した場合は、権利者側からそのように主張されるおそれがあります。
書面が届いた後は、手元にある端末やデータを処分しないでください。
不利になるのは「自分に有利な事情を示しにくくなる」点
パソコンを処分したことで困るのは、責任を問われることではなく、利用者側に有利な事情を示す材料が減ることです。
いつトレントの利用をやめたか。
どの程度ダウンロードが進んでいたか。
自動起動設定にしていたかどうか。
こうした事情は損害額の算定に関わりますが、パソコンが手元にあれば確認できた情報が、処分によって確認しにくくなります。
2. パソコンがなくても利用状況を示す手がかりはある
処分・買い替え・売却の記録
パソコンを処分した日、買い替えた日、売却した日は、そのパソコンでトレントを使える状態が終わった日です。
この日付は、送信可能な状態にしていた期間の終点を示す材料になります。
次のような記録が残っていないか確認してください。
新しいパソコンの購入日が分かる領収書、注文履歴、保証書。
古いパソコンを売却した際の買取明細、フリマアプリの取引履歴。
家電リサイクルや回収業者に出した際の受付記録。
修理に出した際の預かり伝票や修理報告書。
スマートフォンの機種変更の記録
スマートフォンでトレントを使っていた場合は、機種変更の日付が分かる携帯会社の契約記録や、下取りの記録が手がかりになります。
クラウドやメールに残っている記録
パソコン本体がなくても、次のような記録が残っていることがあります。
トレントのクライアントソフトをダウンロードした際のメール(登録確認メール等)。
クラウドストレージやバックアップに残っているファイルやフォルダ。
ブラウザの同期機能に残っている閲覧履歴。
自分の記憶を整理する
客観的な記録がなくても、覚えている範囲で利用状況を整理しておくことには意味があります。
いつ頃トレントを使い始めたか。
いつ頃使わなくなったか。
どのくらいの頻度で起動していたか。
パソコンをいつ頃、どういう理由で手放したか。
記憶が曖昧な部分があっても構いません。
弁護士はその情報と、権利者側の記録(タイムスタンプ等)を照らし合わせて、主張を検討します。
3. 権利者側の記録からも分かることがある
タイムスタンプが利用時期を示している
権利者側から届く書面や、開示命令の発信者情報目録には、IPアドレスが記録された日時(タイムスタンプ)が記載されています。
このタイムスタンプは、少なくともその時点でファイルを共有していたことを示すものですが、同時に、権利者側が把握している利用時期の範囲も示しています。
パソコンを手放した日が、記録されたタイムスタンプより前であれば、その記録が本当に自分の利用によるものかを検討する余地も出てきます。
自分の記録と権利者側の記録を突き合わせる
パソコンの購入日や処分日の記録と、権利者側のタイムスタンプを突き合わせることで、送信可能期間を限定する主張や、記録の正確性を問う主張の材料になることがあります。
この突き合わせは、弁護士が書面を確認したうえで行います。
4. 中古で売却したパソコンについての注意点
トレントのソフトが残ったまま売却していなかったか
パソコンを初期化せずに売却した場合、トレントのソフトやダウンロード済みのファイルが残っていた可能性があります。
その後、購入者がそのパソコンをインターネットにつないだ場合でも、その通信は購入者の回線で行われるため、元の所有者の回線から通信が行われることは通常ありません。
ただし、売却の際に初期化したかどうかは、念のため弁護士に伝えてください。
売却した相手に連絡しない
「パソコンを返してもらえないか」「データを消してもらえないか」と売却先に連絡する必要はありません。
連絡する前に弁護士に相談してください。
5. 損害額は争える
パソコンが手元になくても、損害額の主張立証は行えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
パソコンの処分日や買い替え日の記録は、送信可能期間を限定する主張の材料として活用します。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントを使っていたパソコンを処分・買い替え・売却した後に書面が届いても、対応はできます。
権利者側の証拠はパソコンの外にあり、処分したことで責任が重くなるわけではありません。
書面が届く前の日常的な処分は、通常は証拠隠滅と評価されません。ただし、書面が届いた後は手元の端末やデータを処分しないでください。
パソコンの購入日、処分日、売却日、修理日の記録は、送信可能期間の終点を示す材料になります。
クラウドやメールに残っている記録、自分の記憶も、主張の手がかりになります。
権利者側のタイムスタンプと自分の記録を突き合わせることで、損害額を争う材料が見つかることがあります。
「データがないから何も言えない」と諦めず、残っている記録と記憶を整理して、弁護士に相談してください。
よくある質問
トレントを使っていたパソコンはもう処分しました。不利になりますか。
書面が届く前の日常的な処分であれば、通常は不利になりません。権利者側の証拠はパソコンの外にあるため、処分によって責任が重くなることもありません。
データが何も残っていません。損害額を争えますか。
争えます。パソコンの購入日や処分日の記録、記憶している利用状況、権利者側のタイムスタンプなどを材料に、損害額の主張立証を行います。
どのような記録を探せばよいですか。
新しいパソコンの購入記録、古いパソコンの売却や処分の記録、修理伝票、スマートフォンの機種変更の記録、クラウドやメールに残っているデータなどです。
書面が届いた後に今のパソコンを買い替えてもよいですか。
書面が届いた後は、手元の端末やデータを処分しないでください。問題を隠す目的と受け取られるおそれがあります。買い替えが必要な場合も、古い端末は保管しておいてください。
中古で売ったパソコンにトレントのソフトが残っていたかもしれません。
購入者の通信は購入者の回線で行われるため、元の所有者の回線から通信が行われることは通常ありません。念のため、初期化したかどうかを弁護士に伝えてください。
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