なぜトレントだけが開示請求の対象になるのか|他の違法ダウンロードとの違い

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なぜトレントだけが開示請求の対象になるのか|他の違法ダウンロードとの違い

トレントの著作権侵害で書面が届いた方の中には、「違法ダウンロードは他のサイトでもやったことがあるのに、なぜトレントの分だけ請求が来るのか」と疑問に思う方がいます。トレントが他のダウンロード方法と比べて開示請求の対象になりやすい理由には、トレントの仕組みそのものに原因があります。

違法ダウンロードの方法はトレントだけではない

著作権を侵害するファイルのダウンロードは、トレント以外にもさまざまな方法で行われています。

海賊版サイト(ストリーミング型のサイト)からの視聴。
ファイルホスティングサービスからの直接ダウンロード。
SNSやメッセージアプリを通じたファイルの共有。

これらの方法でも著作権侵害は成立し得ます。
しかし、トレントの利用者が圧倒的に多く開示請求の対象になっているのには理由があります。

1. トレントは利用者のIPアドレスが公開される仕組み

通常のダウンロードではIPアドレスは見えない

通常のウェブサイトからファイルをダウンロードする場合、利用者のIPアドレスが見えるのはそのサイトの運営者だけです。

他の利用者から見ることはできませんし、権利者側がそのサイトにアクセスしても、他の利用者のIPアドレスを取得することは通常できません。

トレントでは利用者同士が直接通信する

トレントは、ファイルを持っている利用者同士が直接通信してデータをやり取りする仕組み(P2P)です。

この直接通信を行うために、各利用者のIPアドレスがトレントネットワーク上で公開されています。

権利者側は、トレントネットワークに監視ツールを接続するだけで、対象ファイルを共有しているすべての利用者のIPアドレスを一括で記録できます。

つまり、トレントは「見つかりやすい」

他のダウンロード方法では、権利者側が利用者のIPアドレスを取得するにはサーバーの運営者の協力やサーバーへの法的手続が必要であり、ハードルが高いです。

トレントでは、利用者のIPアドレスが公開されているため、権利者側は特別な手段を使わなくても利用者を把握できます。

開示請求がトレントに集中しているのは、トレントの仕組みが権利者側にとって最も利用者を特定しやすいからです。

2. トレントではダウンロード=アップロードになる

他の方法ではダウンロードだけで完結する

通常のウェブサイトやファイルホスティングサービスからダウンロードする場合、利用者はファイルを受け取るだけです。
ダウンロードした利用者が、そのファイルを他の人に送信することは自動的には行われません。

トレントでは自動的にアップロードが行われる

トレントでは、ファイルをダウンロードすると同時に、ダウンロード済みの部分が他の利用者にアップロード(送信)されます。

ダウンロードだけでも著作権法違反になり得ますが、アップロード(送信可能化)はより重い侵害行為として扱われます。

アップロードが行われていることで、権利者側は「公衆送信権の侵害」「送信可能化権の侵害」として損害賠償を請求しやすくなります。

損害賠償の算定もアップロードを基礎にする

損害賠償金額の算定は、利用者がファイルをアップロード(送信可能化)したことによって権利者に生じた損害を基礎にします。

他のダウンロード方法であれば、利用者はダウンロードしただけであり、アップロードによる損害は発生していません。
トレントでは、ダウンロードと同時にアップロードが行われているため、損害賠償請求の根拠が明確になります。

3. 監視が大規模かつ自動的に行える

監視ツールで一括記録

権利者側は、トレント監視ツールを使って、対象ファイルを共有しているIPアドレスを自動的かつ大量に記録しています。

1つのファイルにつき数十件から数百件のIPアドレスが記録され、それをまとめてプロバイダに開示請求することができます。

コストが低い

他のダウンロード方法で利用者を特定するには、サーバーの運営者を特定し、サーバーに対して法的手続を行い、サーバーのログから利用者のIPアドレスを取得するという、複数のステップが必要です。

海賊版サイトの運営者が海外にいる場合や、サーバーが外国にある場合は、さらに困難になります。

トレントでは、監視ツールを使えばIPアドレスを直接取得できるため、権利者側にとってのコストが圧倒的に低いです。

大量の開示請求を効率的に処理できる

トレントの監視で取得したIPアドレスをまとめてプロバイダに開示請求し、開示された契約者全員に一律の金額で示談を持ちかけるという流れは、権利者側にとって効率的なビジネスモデルになっています。

4. 「トレント以外でもダウンロードしたが、請求は来ない」という場合

請求が来ないのは「違法ではないから」ではない

トレント以外の方法で違法ダウンロードした分について請求が来ていないのは、違法ではないからではありません。

権利者側がその方法での利用者を特定できていない、またはコストに見合わないから特定しようとしていない、というだけです。

今後、他の方法でも開示請求が行われる可能性はある

現時点ではトレントに集中していますが、技術の発展や法制度の変化によって、他のダウンロード方法についても利用者の特定と開示請求が行われるようになる可能性はゼロではありません。

5. トレントで開示請求を受けた場合の対応

仕組み上見つかりやすいが、損害額は争える

トレントの仕組み上、利用者が特定されやすいことは事実です。

しかし、特定されたことと、いくらの損害賠償を支払うかは別の問題です。

権利者側が提示する金額は、権利者側が設定した請求額であり、裁判所が認める損害賠償金額ではありません。

当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

刑事告訴への対応

当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。

まとめ

トレントだけが開示請求の対象になりやすいのは、トレントの仕組みそのものに原因があります。

トレントは利用者のIPアドレスがネットワーク上で公開されるため、権利者側が利用者を特定しやすいです。
トレントではダウンロードと同時にアップロードが自動的に行われるため、権利者側が損害賠償を請求する根拠が明確です。
監視ツールによる大量かつ自動的な記録が可能であり、権利者側にとってコストが低いです。
他のダウンロード方法で請求が来ないのは、違法ではないからではなく、利用者を特定するコストが高いからです。

トレントで開示請求を受けた場合でも、損害額は争えます。
弁護士に相談して、裁判で争った場合の見通しを確認してください。

よくある質問

他のサイトでもダウンロードしましたが、請求はトレントの分だけです。なぜですか。
トレントは利用者のIPアドレスがネットワーク上で公開される仕組みのため、権利者側が利用者を特定しやすいからです。他の方法では利用者の特定が困難またはコストが高いため、請求が行われにくい傾向があります。

トレント以外でダウンロードした分も今後請求されますか。
現時点では可能性は低いですが、将来的に技術や法制度が変わった場合にゼロとは言い切れません。

トレントが特に悪質だから狙われているのですか。
悪質さの問題ではなく、仕組みの問題です。トレントはIPアドレスが公開されるため特定が容易であり、かつダウンロードと同時にアップロードが行われるため損害賠償請求の根拠が明確です。

トレントを使わなければ大丈夫ですか。
トレント以外の方法でも違法ダウンロードは著作権侵害です。ただし、現時点ではトレント以外の方法で開示請求が行われるケースは限られています。いずれの方法であっても、違法ダウンロードは行うべきではありません。

トレントで開示請求を受けましたが、損害額は争えますか。
争えます。特定されたことと、いくら支払うかは別の問題です。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

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