ケイ・エム・プロデュースの開示請求が届いた|請求の特徴と対応の考え方
トレントの著作権侵害で「株式会社ケイ・エム・プロデュース」の名前が記載された書面が届いた方へ。ケイ・エム・プロデュースはAV制作会社であり、トレントによる著作権侵害について発信者情報の開示請求を積極的に行っている権利者の一つです。この権利者からの請求にどう対応すべきかを解説します。
ケイ・エム・プロデュースとは
株式会社ケイ・エム・プロデュースは、アダルトビデオの制作会社です。
自社が著作権を有する作品がトレントで共有されていることについて、発信者情報の開示請求を行い、損害賠償を請求しています。
代理人としてITJ法律事務所(弁護士法人ITJ法律事務所)が就いていることがありますが、ケイ・エム・プロデュースとITJ法律事務所が常にセットであるとは限りません。
1. ケイ・エム・プロデュースの請求の特徴
個別和解と包括和解の2つが提示される
ケイ・エム・プロデュースの案件では、代理人を通じて個別和解と包括和解の2つの選択肢が提示されることがあります。
個別和解は、対象作品1作品ごとに一定額を支払う方法です。
包括和解は、ケイ・エム・プロデュースが著作権を有するすべての作品を対象として、一括の定額で和解する方法です。
金額は時期によって変わっている
代理人がITJ法律事務所である場合、提示される金額は時期によって変更されています。
個別和解:当初1作品22万円→その後44万円に変更。
包括和解:当初55万円→77万円→88万円に変更。
同じ種類の事案で、同じ代理人事務所が、金額を繰り返し引き上げているということです。
裁判所が認める損害賠償金額が上がったわけではなく、権利者側の設定額が変わっただけです。
低額の個別和解が提示されることもある
最近では、1作品あたり8.8万円といった比較的低額の個別和解を持ちかけてくるケースも出てきています。
1作品だけなら負担が小さく見えますが、8.8万円はあくまで1作品あたりの金額です。
10作品なら88万円になります。
低額だからと安易に応じていくと、全体では高額になることがあります。
個別の条件交渉に応じないとされている
ITJ法律事務所は、自社サイトにおいて「弁護士を通じて交渉であっても、和解金額の減額等は行っておりません」と公表しています。
弁護士を立てて交渉を試みても、金額が動かないことがあります。
この場合、選択肢は「提示額で和解する」か「裁判で争う」かになります。
2. 提示された金額は適正なのか
裁判で認められる損害賠償金額との比較
ケイ・エム・プロデュースから提示される44万円や88万円が、裁判で認められる損害賠償金額と比べて適正かどうかは、個別に検証する必要があります。
裁判例では、トレントの著作権侵害について、1人あたり数万円程度しか認容されなかった事案があります。
知財高裁令和4年4月20日判決では、1人あたり約1万6,000円から6万円台が認容されました。
東京地裁令和5年8月31日判決では、権利者が278万円を超える損害を主張したのに対し、裁判所が認めた損害賠償金額は3万円を超えない金額にとどまりました。
提示額と裁判所の認定額の開き
仮に裁判で1作品あたり数万円と認定されるのであれば、個別和解44万円や包括和解88万円は、裁判で認められる金額の何倍にもあたります。
8.8万円の低額個別和解であっても、裁判所の認定額が数万円であれば、裁判で争った方が有利になることがあります。
3. ケイ・エム・プロデュースからの請求にどう対応すべきか
提示額をそのまま受け入れない
提示された金額が裁判で認められる損害賠償金額と比べてどうなのかを、弁護士に確認してから判断すべきです。
裁判で争うことを検討する
権利者側が個別の条件交渉に応じないのであれば、交渉で金額を下げることは期待しにくいです。
この場合、裁判で争い、裁判所に著作権法第114条に基づく適正な損害賠償金額を認定してもらうことが現実的な選択肢になります。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
低額の個別和解にも注意する
8.8万円の個別和解を提示された場合でも、作品数が多ければ全体は高額になります。
1件ずつ応じるのではなく、全体の見通しを踏まえて判断することが重要です。
他の権利者からの請求も想定する
ケイ・エム・プロデュースとの和解が完了しても、別の権利者から追加の請求が届くことがあります。
1社目の和解金額だけでなく、今後の請求も含めた全体の負担を把握したうえで判断してください。
4. 包括和解に応じるべきか
包括和解の清算範囲
包括和解に応じた場合、ケイ・エム・プロデュースが著作権を有するすべての作品について清算されます。
同じ権利者から、後日別の作品について追加請求が来るリスクは、包括和解で解消できます。
ただし、他の権利者からの請求は対象外
包括和解の効力は、ケイ・エム・プロデュースの作品にしか及びません。
別の制作会社の作品について請求が届く可能性は残ります。
包括和解の金額が適正かどうかは別問題
88万円の包括和解が、裁判で争った場合の損害賠償金額の合計と比べて妥当かどうかは、対象作品の数や利用期間を踏まえて個別に検討する必要があります。
よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、包括和解で88万円を支払うよりも裁判で争う方が得策であることが多いです。
5. 刑事告訴への対応
ケイ・エム・プロデュース側の書面に「支払わなければ刑事告訴する」と記載されていることがあります。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
刑事告訴の予告に動揺して、金額の妥当性を検討しないまま支払うことは推奨しません。
まとめ
ケイ・エム・プロデュースの開示請求が届いた場合、提示された示談金をそのまま受け入れる前に、裁判で争った場合の損害賠償金額を確認すべきです。
ケイ・エム・プロデュースの代理人であるITJ法律事務所は、個別の条件交渉に応じないと公表しています。
提示される金額は時期によって変更されており、55万円から88万円まで引き上げられています。
低額の個別和解(8.8万円等)でも、作品数が多ければ全体は高額になります。
裁判例では、1人あたり数万円程度の損害しか認められなかった事案があり、提示額と裁判所の認定額には大きな開きがあることがあります。
ケイ・エム・プロデュースとの和解が完了しても、別の権利者からの請求は清算されません。
当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
書面が届いた段階で弁護士に相談し、対応方針を判断することをおすすめします。
よくある質問
ケイ・エム・プロデュースとITJ法律事務所は常にセットですか。
必ずしもセットではありません。ケイ・エム・プロデュースの案件でITJ法律事務所が代理人を務めていることがありますが、他の代理人が就く可能性もあります。
個別和解44万円は高すぎますか。
裁判例との比較では高い可能性があります。裁判で争った場合の損害賠償金額が数万円程度であれば、44万円は裁判所の認定額の何倍にもあたります。弁護士に見通しを確認してください。
8.8万円の個別和解は安いから応じた方がよいですか。
1作品だけなら負担は小さく見えますが、作品数が増えれば全体は高額になります。裁判所の認定額が数万円であれば、8.8万円でも裁判で争った方が有利なことがあります。全体の見通しを踏まえて判断してください。
包括和解88万円に応じるべきですか。
よほどの作品数を長期間にわたってダウンロードしていたような事情がない限り、裁判で争う方が得策であることが多いです。弁護士に相談して見通しを確認してください。
交渉で減額できますか。
ITJ法律事務所は「減額に応じない」と公表しています。交渉で金額が動かない場合は、裁判で争って裁判所に適正な損害賠償金額を認定してもらうことが現実的な選択肢になります。
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