トレントの著作権侵害で権利者側はどのような証拠を持っているのか|証拠の中身と限界

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トレントの著作権侵害で権利者側はどのような証拠を持っているのか|証拠の中身と限界

トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、「相手は証拠を持っているのだから争っても無駄ではないか」と考える方がいます。しかし、権利者側が持っている証拠がどのようなものか、その証拠でどこまで立証できるのかを理解すれば、争うべき点が見えてきます。権利者側の証拠の具体的な中身と、その限界を解説します。

権利者側の証拠は万能ではない

権利者側が損害賠償を請求するには、著作権侵害の事実とその損害額を立証する必要があります。

権利者側が持っている証拠は、主にトレント監視ツールの記録です。
この記録にはIPアドレスとタイムスタンプが含まれていますが、それだけで損害額が確定するわけではありません。

証拠の中身を知れば、どこが争えるのかが分かります。

1. 権利者側が持っている証拠

トレント監視ツールの記録

権利者側(またはその委託先)は、トレントネットワーク上で対象ファイルを共有しているIPアドレスを監視するツールを使用しています。

このツールが記録しているのは、主に次の情報です。

対象ファイルのハッシュ値(ファイルを一意に識別するための値)。
そのファイルを共有していたIPアドレス。
記録された日時(タイムスタンプ)。
接続先のポート番号。

プロバイダからの開示情報

プロバイダから開示される情報は、「このIPアドレスをこの日時に割り当てていた契約者は誰か」という情報です。

これにより、IPアドレスと契約者が結びつきます。

つまり権利者側が立証できるのは

「この日時に、このIPアドレスから、このファイルが共有されていた」という事実と、「このIPアドレスを使っていた契約者は誰か」という事実です。

2. 権利者側の証拠で立証できないこと

契約者=実際の利用者であること

IPアドレスはインターネット回線に割り当てられるものであり、その回線を使っていた個人を直接特定するものではありません。

家庭内でWi-Fiを共有していれば、家族の誰が使っていたかはIPアドレスからは分かりません。
権利者側の証拠は「この回線から共有されていた」ことは示せますが、「この人が操作していた」ことまでは直接立証できません。

ダウンロードされた正確な回数

監視ツールは、対象ファイルを共有していたIPアドレスを記録していますが、特定の利用者からどれだけの回数ダウンロードされたかを正確に記録しているわけではありません。

ダウンロード回数は、監視ツールの記録と統計的な推計に基づいて算出されることが多く、この推計の正確性は争点になり得ます。

利用者が送信可能な状態にしていた正確な期間

監視ツールは、記録された時点でそのIPアドレスがファイルを共有していたことを示しますが、利用者がいつからいつまでファイルを送信可能な状態にしていたかを連続的に記録しているわけではありません。

記録されたタイムスタンプは「この時点で共有していた」というスナップショットであり、「24時間365日共有し続けていた」ことの証明にはなりません。

損害額そのもの

権利者側の証拠は、ファイルの共有があったことを示す証拠であり、損害額がいくらかを直接示す証拠ではありません。

損害額は、著作権法第114条に基づく計算式で算定されるものであり、計算式の各要素(利益額、ダウンロード回数、送信可能期間等)について、それぞれ主張立証が必要です。

3. 監視ツールの正確性は争えるのか

裁判例で正確性が問題になった事案がある

トレント監視ツールの正確性については、裁判例の中でも争点になったことがあります。
監視ツールの記録が必ずしも正確ではないことを指摘して、開示請求が否定された例もあります。

争える可能性がある点

監視ツールが記録したIPアドレスとタイムスタンプの正確性。
IPアドレスの割当記録とのずれの可能性。
監視ツールの動作原理や記録方法に関する技術的な限界。

ただし、監視ツールの正確性を争うためには、具体的な根拠に基づく反論が必要であり、「正確ではないかもしれない」という抽象的な主張だけでは認められにくいです。

4. 証拠があっても損害額は争える

著作権侵害の事実と損害額は別の問題

仮に権利者側の証拠によって著作権侵害の事実が認められたとしても、損害額がいくらかは別の問題です。

権利者側の証拠は「ファイルが共有されていた」ことを示すものであり、「損害額が44万円(または88万円)である」ことを示すものではありません。

損害額は著作権法第114条に基づいて算定されるものであり、各要素について利用者側から反論する余地があります。

当事務所の主張立証

当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。

その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。

権利者側の証拠があるからといって諦める必要はない

「証拠があるなら争っても無駄」ではありません。

証拠があること(著作権侵害の事実)と、損害額がいくらか(いくら払うべきか)は別の問題です。
権利者側の提示額と裁判所が認定する損害額には大きな開きがあることがあり、その開きは証拠があっても変わりません。

5. 開示命令の決定書に記載されている証拠情報の読み方

発信者情報目録の記載

開示命令の決定書に添付されている発信者情報目録には、IPアドレス、ポート番号、タイムスタンプ、ハッシュ値が記載されています。

この一覧に何十件ものIPアドレスが並んでいますが、それはそのファイルを共有していた利用者全員のIPアドレスであり、自分に関係するのはそのうちのごく一部です。

ハッシュ値とは何か

ハッシュ値は、ファイルの内容に基づいて生成される固有の識別値です。
同じ内容のファイルは同じハッシュ値を持つため、どのファイルが共有されていたかを特定する手段として使われます。

ハッシュ値が一致すれば、対象のファイルと同一の内容のファイルが共有されていたことが推認されます。

6. 刑事告訴への対応

当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。

まとめ

権利者側が持っている証拠は、主にトレント監視ツールの記録(IPアドレス、タイムスタンプ、ハッシュ値)とプロバイダからの開示情報です。

この証拠で立証できるのは、「この回線からこのファイルが共有されていた」という事実です。
契約者が実際に操作していたこと、正確なダウンロード回数、送信可能期間の長さ、損害額そのものは、この証拠だけでは直接立証できません。
監視ツールの正確性が裁判で争点になった例もあります。
著作権侵害の事実が認められたとしても、損害額は別に争えます。

「証拠があるから争えない」のではなく、「証拠があっても損害額は争える」というのが正しい理解です。
弁護士に相談して、権利者側の証拠に対してどのような反論ができるかを確認してください。

よくある質問

権利者側は確実な証拠を持っているのですか。
IPアドレスとタイムスタンプの記録は持っていますが、その記録の正確性や、損害額の算定に直結するかどうかは別問題です。

証拠があるなら争っても無駄ではないですか。
無駄ではありません。著作権侵害の事実と損害額は別の問題であり、証拠があっても損害額は争えます。当事務所では、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。

監視ツールの記録は正確ですか。
監視ツールの正確性については、裁判例の中でも争点になったことがあります。ただし、正確性を争うには具体的な根拠が必要です。

IPアドレスの記録だけで自分が利用していたと特定されますか。
IPアドレスはインターネット回線に割り当てられるものであり、その回線を誰が操作していたかを直接特定するものではありません。ただし、契約者に対して損害賠償請求がなされます。

証拠に対してどのような反論ができますか。
利益額の基準、ダウンロード回数の限定、送信可能期間の特定など、損害額の算定に関する反論が可能です。弁護士に相談して、具体的な反論の内容を検討してください。

お問い合わせ
あいち岡崎法律事務所
〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町字的場13-1 My Station Okazaki East 601
0564-73-3487
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