トレントはどうやってバレるのか|権利者側がIPアドレスから契約者を特定する仕組み
トレントの著作権侵害で書面が届いたとき、「どうして自分だと分かったのか」「匿名のはずなのにバレるのか」と疑問を持つ方がほとんどです。権利者側がどのようにしてトレントの利用者を特定しているのか、その仕組みを知っておくことで、書面に書かれている内容の意味が理解しやすくなります。
「匿名だと思っていたのに、なぜバレたのか」
トレントを利用する多くの方は、「ファイルをダウンロードしているだけで、自分の名前や住所を入力していないのだから、誰が使っているかは分からないはずだ」と考えています。
しかし、実際には、権利者側は利用者を特定する手段を持っています。 それは、トレントの仕組み自体が利用者のIPアドレスを他の利用者に公開する設計になっているからです。
1. トレントの仕組みがIPアドレスを公開している
トレントは利用者同士が直接通信する
通常のウェブサイトからファイルをダウンロードする場合、データはサーバーから利用者に一方向で送られ、他の利用者に自分のIPアドレスが見えることはありません。
トレントは仕組みが違います。 トレントでは、ファイルを持っている利用者同士が直接通信してデータをやり取りします。 この直接通信を行うために、各利用者のIPアドレスがトレントネットワーク上で公開されています。
つまり、トレントを利用している時点で、自分のIPアドレスは他の利用者から見える状態になっています。
権利者側はこの仕組みを利用して監視している
権利者側(または権利者から委託を受けた調査会社)は、トレントネットワークに接続し、対象の著作物を共有している利用者のIPアドレスを記録しています。
特別な技術を使ってハッキングしているわけではなく、トレントの仕組みそのものを利用して、誰がどのファイルを共有しているかを把握しています。
2. IPアドレスからどうやって個人を特定するのか
IPアドレスだけでは氏名・住所は分からない
IPアドレスとは、インターネットに接続する際に割り当てられる番号です。 IPアドレスだけでは、その回線の契約者が誰なのかは分かりません。
IPアドレスから契約者の氏名・住所を知っているのは、その回線を提供しているプロバイダ(NTT、KDDI、ソフトバンク等)だけです。
権利者側はプロバイダに開示を請求する
権利者側は、記録したIPアドレスをもとに、「このIPアドレスをこの日時に使っていた契約者の情報を開示してほしい」とプロバイダに請求します。
この開示請求には、次の2つの方法があります。
テレコムサービス協会書式による任意の開示請求。 裁判所への開示命令の申立て。
任意の開示請求の場合、プロバイダは契約者に意見照会書を送り、同意・不同意を確認します。 開示命令の申立ての場合、裁判所が開示すべきかどうかを判断し、命令が出ればプロバイダは開示する義務を負います。
意見照会書が届くのはこの段階
つまり、意見照会書が届いたということは、権利者側がすでに次のステップを完了しているということです。
トレントネットワーク上であなたのIPアドレスを記録した。 そのIPアドレスを割り当てていたプロバイダを特定した。 プロバイダに対して発信者情報の開示を請求した。
意見照会書は、プロバイダが開示に応じる前に、契約者の意見を確認するために送付されるものです。
3. 記録されている情報は何か
IPアドレスとタイムスタンプ
権利者側が記録しているのは、主に次の情報です。
IPアドレス(どの回線から接続していたか)。 タイムスタンプ(いつ接続していたか)。 対象ファイルのハッシュ値(どのファイルを共有していたかを特定する識別情報)。
これらは、監視システムが自動的に記録した客観的なデータです。
この記録がどの程度の証拠力を持つか
IPアドレスとタイムスタンプの記録は、「この日時に、このIPアドレスから、このファイルが共有されていた」という事実を示す証拠として扱われます。
裁判所はこの記録をもとに、開示命令を発令するかどうかを判断します。 損害賠償請求の場面でも、この記録が侵害行為の証拠として提出されます。
4. 「バレない方法」はあるのか
VPNを使えばバレないのか
「VPNを使えばIPアドレスが隠せるからバレない」という情報がインターネット上にあります。
しかし、VPNサービスによっては通信ログを保存しており、法的な手続を通じてログが提出される可能性があります。 また、VPNの接続が不安定になった瞬間に、本来のIPアドレスが露出することもあります。
VPNを使っていたからといって、絶対に特定されないとは言い切れません。
すでに記録されていれば手遅れ
重要なのは、書面が届いた時点で、あなたのIPアドレスはすでに記録されているということです。 今からVPNを導入しても、過去の記録が消えるわけではありません。
5. 「バレた」後に何ができるか
特定されたこと自体は争いにくい
IPアドレスとタイムスタンプの客観的な記録がある以上、「自分は特定されていない」「この記録は間違いだ」という主張は、具体的な根拠がなければ通りにくいです。
しかし、損害額は争える
特定されたことと、いくら払うべきかは別の問題です。
権利者側が請求する金額は、権利者側が独自に設定した定額であり、裁判で認められる損害額とは大きな開きがあることがあります。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
刑事リスクへの対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントがバレる仕組みは、トレント自体の設計にあります。
トレントは利用者同士が直接通信する仕組みであり、利用者のIPアドレスはネットワーク上で公開されています。 権利者側はこの仕組みを利用して、対象ファイルを共有しているIPアドレスを記録しています。 IPアドレスをもとにプロバイダに開示を請求し、契約者の氏名・住所を特定します。 意見照会書が届いた時点で、IPアドレスの記録はすでに完了しています。
特定されたこと自体を覆すのは困難ですが、権利者側が請求する金額が適正かどうかは別の問題です。 当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
書面が届いた段階で弁護士に相談し、対応方針を判断することをおすすめします。
よくある質問
トレントを使っていることはどうやってバレるのですか。 トレントは利用者同士が直接通信する仕組みであり、利用者のIPアドレスがネットワーク上で公開されます。権利者側はこの仕組みを利用して、対象ファイルを共有しているIPアドレスを監視・記録しています。
VPNを使えばバレませんか。 VPNを使えばIPアドレスを隠せることがありますが、VPNサービスがログを保存している場合や、接続が不安定になった際にIPアドレスが露出する場合があります。絶対に特定されないとは言い切れません。
IPアドレスだけで個人が特定されるのですか。 IPアドレスだけでは個人は特定できません。権利者側は、IPアドレスをもとにプロバイダに発信者情報の開示を請求し、プロバイダが契約者の氏名・住所を開示することで特定が完了します。
意見照会書が届いた時点で、自分のIPアドレスはすでに記録されていますか。 記録されています。意見照会書は、プロバイダが開示に応じる前に契約者の意見を確認するために送付するものであり、権利者側はその前の段階でIPアドレスの記録を完了しています。
特定されたら、請求された金額をそのまま払うしかないですか。 特定されたことと、いくら払うべきかは別の問題です。当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
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