請求書に書かれた作品名に心当たりがないのに払う必要があるのか|トレントを使ったが「この作品は知らない」という場合
トレントの著作権侵害で意見照会書や請求書が届いたとき、書面に記載されている作品名に心当たりがない、という方がいます。トレントを使ったこと自体は認めるが、この特定の作品はダウンロードした覚えがない。この場合、どう対応すべきなのかを解説します。
「使ったことはあるが、この作品は知らない」というケース
トレントの著作権侵害に関する書面が届いたとき、「トレント自体は使ったことがある。でも、書面に書かれているこの作品はダウンロードした覚えがない」と感じる方は多いです。
これは、トレントを使ったこと自体に身に覚えがない場合とは異なります。 トレントの利用自体は認めるが、対象作品について心当たりがないというケースです。
このケースには、いくつかの可能性があります。
1. なぜ覚えがない作品が対象になるのか
実はダウンロードしていたが覚えていない
トレントで複数のファイルをまとめてダウンロードしていた場合、個々のファイルの内容を正確に覚えていないことは珍しくありません。
特にアダルト動画の場合、作品タイトルを意識してダウンロードしていないことが多く、「このタイトルは知らない」と感じても、実際にはダウンロードしていた可能性があります。
ダウンロードした後にすぐにデータを削除していた場合、確認する手段もなくなっています。
トレントの仕組みによる意図しないダウンロード
トレントでは、関連するファイルがまとめてダウンロードされることがあります。 目的の作品をダウンロードしようとした際に、同じパッケージに含まれていた別の作品も一緒にダウンロードされていた可能性があります。
本人はその作品をダウンロードするつもりがなくても、トレントの仕組み上、結果としてダウンロード(およびアップロード)が行われていたということです。
ファイル名と実際の作品が異なっていた
トレント上のファイル名は、実際の作品名と異なっていることがあります。 ファイル名だけを見てダウンロードした場合、そのファイルが実際にはどの作品だったのかを把握していないことがあります。
書面に記載されている正式な作品名と、トレント上で見ていたファイル名が一致しないために「この作品は知らない」と感じることがあります。
2. 「この作品はダウンロードしていない」と主張できるか
権利者側は証拠を持っている
権利者側は、トレントネットワーク上で対象ファイルを共有していたIPアドレスを監視システムで記録しています。 その記録には、IPアドレス、日時(タイムスタンプ)、対象ファイルのハッシュ値(ファイルを特定するための識別情報)が含まれています。
つまり、「この日時に、このIPアドレスから、このファイルが共有されていた」という客観的な記録が存在します。
「覚えがない」だけでは反論にならない
「この作品はダウンロードした覚えがない」という主張だけでは、法的な反論にはなりにくいです。
権利者側がIPアドレスとタイムスタンプの記録を持っている場合、利用者の主観的な記憶(「覚えがない」)よりも、客観的な記録の方が証拠としての力が強いためです。
ただし、IPアドレスの記録が誤っている可能性もゼロではない
監視システムの記録が誤っていた、IPアドレスの割当記録にずれがあった、という可能性は理論上ゼロではありません。 しかし、こうした主張を行うためには、具体的な根拠に基づく反論が必要です。
3. 対象作品に覚えがない場合にすべきこと
事実関係を整理する
まずは、次の点を整理してください。
書面に記載されている通信日時に、自分がトレントを使っていた可能性があるか。 その時間帯に自分のパソコンやインターネット回線を使っていたか。 家族や同居人がトレントを使っていた可能性はないか。 自動起動設定でトレントのソフトがバックグラウンドで動いていた可能性はないか。
ダウンロード済みデータが残っていれば確認する
トレントでダウンロードしたデータがパソコンに残っていれば、対象作品が含まれているかどうかを確認できます。 ただし、すでに削除している場合は確認できません。
弁護士に相談する
対象作品に覚えがない場合でも、弁護士に相談して対応方針を検討することが重要です。
覚えがないからといって放置すれば、権利者側の手続は進みます。 訴訟が提起されれば、覚えがあるかないかにかかわらず、対応が必要になります。
4. 覚えがない場合でも損害額の主張立証は重要
覚えがなくても、損害額は争える
仮に、対象作品をダウンロードしていたことが客観的に認められたとしても、権利者側が請求する金額がそのまま認められるかどうかは別の問題です。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。 その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
5. 「覚えがないから無視する」は最も危険な対応
対象作品に覚えがないことを理由に書面を無視するのは、最も危険な対応です。
覚えがあるかないかにかかわらず、書面が届いている以上、権利者側は手続を進めます。 放置すれば訴訟を提起される可能性があり、欠席判決で権利者の請求額がそのまま認容されるおそれがあります。
覚えがないなら覚えがないで、その事実を弁護士と共有し、事実関係を整理したうえで対応方針を決めることが重要です。
まとめ
トレントの著作権侵害で書面に記載された作品に覚えがない場合でも、放置してはいけません。
覚えがない理由としては、ダウンロードしたが忘れている、まとめてダウンロードした中に含まれていた、ファイル名と作品名が違っていた、といった可能性があります。 権利者側はIPアドレスとタイムスタンプの客観的な記録を持っているため、「覚えがない」だけでは法的な反論になりにくいです。 ただし、対象作品をダウンロードしていたことが認められたとしても、損害額は争えます。 当事務所では、著作権法第114条に基づく具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
覚えがないからこそ、弁護士に相談して事実関係を整理し、対応方針を判断することが重要です。
よくある質問
書面に書かれている作品名に覚えがありません。それでも請求に応じる必要がありますか。 覚えがないこと自体は、請求に応じる義務を否定する理由にはなりません。権利者側がIPアドレスの記録を持っている場合、客観的な証拠として評価されます。ただし、請求額が適正かどうかは別の問題であり、損害額の主張立証は行えます。
トレントでまとめてダウンロードした中に含まれていた可能性はありますか。 あります。トレントでは、関連するファイルがまとめてダウンロードされることがあり、意図していない作品もダウンロード(およびアップロード)されていた可能性があります。
ファイル名と作品名が違うことはありますか。 あります。トレント上のファイル名と実際の作品の正式名称が異なることは珍しくありません。書面に記載されている正式名称に心当たりがなくても、ファイル名が違っていた可能性があります。
覚えがない作品について、裁判で争えますか。 争えます。対象作品のダウンロードが認められたとしても、権利者の提示額がそのまま認められるかどうかは別の問題です。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
覚えがないので無視してもよいですか。 無視は避けるべきです。覚えがあるかないかにかかわらず、放置すれば訴訟を提起される可能性があります。覚えがないからこそ、弁護士に相談して事実関係を整理することが重要です。
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