トレントの利用をやめた後いつまで書面が届く可能性があるのか|利用停止から請求までのタイムライン
トレントの著作権侵害が問題になることを知って利用をやめた。しかし、やめた後もいつ書面が届くか分からず不安が続いている。「もう半年経ったから大丈夫だろうか」「1年経っても届かなければ安心してよいのか」。利用をやめてから書面が届くまでにどのくらいの期間がかかるのか、いつまで届く可能性があるのかを解説します。
「やめたのに今さら届いた」は珍しくない
トレントの利用をやめてから数か月後、場合によっては1年以上経ってから意見照会書や損害賠償請求書が届くケースは珍しくありません。
「もう大丈夫だと思っていたのに」と驚く方がいますが、利用をやめた時点で手続が止まるわけではありません。
権利者側の開示請求手続には時間がかかるため、利用をやめた後にかなりの期間を経て書面が届くことがあります。
1. 利用停止から書面が届くまでの流れ
トレントを利用していた時点
利用中に権利者側の監視システムがIPアドレスを記録しています。
利用者はこの段階で監視されていることを把握できません。
利用をやめた後
利用をやめても、すでに記録されたIPアドレスは権利者側のデータベースに残っています。
利用をやめたからといって、過去の記録が消えるわけではありません。
権利者側がプロバイダに開示請求を行う
権利者側は、記録したIPアドレスをまとめてプロバイダに開示請求を行います。
監視から開示請求までの期間は、権利者側の内部処理にかかる時間によりますが、数週間から数か月かかることがあります。
プロバイダが意見照会書を送付する
プロバイダは、開示請求を受けてから契約者に意見照会書を送付します。
プロバイダの処理にかかる期間もまちまちであり、開示請求を受けてから数週間から数か月後に意見照会書が届くことがあります。
開示後に権利者側が損害賠償請求書を送付する
開示が行われた後、権利者側が損害賠償請求書を作成して送付するまでにも、さらに時間がかかります。
つまり、利用停止から書面到着まで相当な期間が空く
利用をやめた日から書面が届くまでの間には、次のすべてのステップの所要時間が積み重なります。
監視ツールによるIPアドレスの記録(利用中に完了)。
権利者側の内部処理と開示請求の準備(数週間から数か月)。
プロバイダへの開示請求と手続(数週間から数か月)。
プロバイダから契約者への意見照会書の送付(数週間)。
開示後、権利者側から契約者への損害賠償請求書の送付(数週間から数か月)。
合計すると、利用をやめてから半年から1年以上経って初めて書面が届くことは十分にあり得ます。
2. いつまで届く可能性があるのか
プロバイダのログ保存期間が限界
権利者側がプロバイダに開示請求を行うには、プロバイダがIPアドレスの割当記録(ログ)を保存している必要があります。
ログ保存期間はプロバイダによって異なり、正確な期間を公表しているプロバイダは少ないです。
ログが消去された後では、権利者側が開示請求を行っても契約者を特定できません。
ログ保存期間内に開示請求が行われていれば、その後も手続は進む
重要なのは、ログ保存期間内に権利者側が開示請求を行っていれば、その後の手続には期間の制限がないということです。
たとえば、利用から6か月後にログ保存期間が切れるプロバイダの場合でも、5か月目に開示請求が行われていれば、プロバイダはログが残っている段階で記録を保全しているため、その後の意見照会書の送付や開示は、ログ保存期間の経過後でも行われます。
つまり、「ログ保存期間を過ぎたから大丈夫」とは一概には言えません。
ログ保存期間内に開示請求がなされていたかどうかは、利用者側からは確認できません。
開示から損害賠償請求までの期間
開示が行われた後、権利者側が損害賠償請求を行うまでの時効は3年です。
開示を受けてから3年以内であれば、権利者側はいつでも損害賠償請求書を送付したり、訴訟を提起したりすることができます。
結論として、「いつまで届く可能性があるか」は明確には言えない
ログ保存期間、開示請求のタイミング、権利者側の内部処理の速度など、利用者側からは確認できない複数の要素に依存するため、「〇か月経てば安全」と断言することはできません。
3. 「〇か月経っても届かないから大丈夫」と言えるか
言えない
「半年経ったから大丈夫」「1年経ったから安心」とは言い切れません。
上述のとおり、利用停止から書面到着までの期間は、複数のステップの所要時間が積み重なるため、1年以上経ってから届くことがあります。
ただし、時間が経つほど可能性は下がる傾向にある
ログ保存期間には限りがあるため、利用停止から時間が経つほど、新たな開示請求がなされる可能性は低くなります。
利用停止から相当な期間が経過し、何の書面も届いていないのであれば、可能性は低くなっているとはいえます。
ただし、「ゼロになった」とは言い切れません。
4. 書面が届いていない段階で何をすべきか
利用を完全に停止する
まだ完全に停止していない場合は、直ちにトレントのソフトをアンインストールし、自動起動設定も解除してください。
利用を続ければ、新たなIPアドレスが記録され、新たな開示請求の対象になります。
利用状況を整理しておく
記憶が新しいうちに、次の情報を整理しておいてください。
いつ頃からいつ頃まで利用していたか。
いつソフトをアンインストールしたか。
どのようなジャンルの作品をダウンロードしていたか。
利用していたプロバイダはどこか。
書面が届いた場合に、弁護士に正確な情報を伝えるための準備になります。
書面が届いたら速やかに弁護士に相談する
書面が届いた時点で、弁護士に相談してください。
利用をやめてから時間が経っていても、対応方針は変わりません。
5. すでに届いた書面が「利用をやめた後」のものだった場合
「もうやめたのに、なぜ今さら届くのか」
利用をやめてから数か月後、場合によっては1年以上後に書面が届いた場合、「もうやめたのだから問題ないはずだ」と考える方がいます。
しかし、書面が届いたということは、利用していた当時のIPアドレスが記録されており、その記録に基づいて開示請求が行われ、契約者が特定されたということです。
利用をやめた後であっても、利用していた当時の著作権侵害についての損害賠償請求は有効です。
利用停止時期は損害額の算定で有利に働くことがある
利用をやめた時期が早ければ、送信可能な状態にしていた期間が短くなります。
送信可能期間が短ければ、ダウンロード回数の認定も限定され、損害額が下がる方向に働きます。
いつ利用をやめたかを弁護士に正確に伝えることが、損害額の主張立証に役立ちます。
6. 損害額は争える
利用をやめてから書面が届いた場合でも、損害額の主張立証は同じように行えます。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
トレントの利用をやめた後、書面が届くまでには相当な期間がかかることがあります。
利用停止から書面到着まで、半年から1年以上かかることは珍しくありません。
「〇か月経ったから大丈夫」とは言い切れません。
ただし、時間が経つほど新たな開示請求がなされる可能性は低くなります。
書面が届いた場合は、利用停止からの経過期間にかかわらず、対応が必要です。
利用をやめた時期が早ければ、送信可能期間の限定により損害額が下がる方向に働くことがあります。
利用をやめた後も不安が続いている方は、利用状況を整理しておき、書面が届いたら速やかに弁護士に相談してください。
よくある質問
トレントをやめてから半年経ちました。もう届きませんか。
半年では安心とは言い切れません。手続には複数のステップがあり、利用停止から1年以上経って届くことがあります。
1年経っても届きません。もう大丈夫ですか。
可能性は低くなっていますが、ゼロとは言い切れません。ログ保存期間内に開示請求がなされていた場合、その後の手続に期間の制限はありません。
やめたのに今さら届きました。なぜですか。
利用していた当時のIPアドレスが記録されており、その記録に基づいて開示請求が行われたためです。利用をやめても過去の記録は消えません。
やめた後に届いた場合、損害額は下がりますか。
利用をやめた時期が早ければ、送信可能期間が短くなり、損害額が下がる方向に働くことがあります。いつやめたかを弁護士に正確に伝えてください。
届くかどうか分からないまま不安です。今から弁護士に相談できますか。
相談できます。ただし、書面が届いていない段階では具体的な対応方針を決めることはできません。利用状況を整理しておき、書面が届いたらすぐに弁護士に相談する、という準備が現実的です。
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