トレントの著作権侵害で海外の権利者から請求が来た場合|洋画や海外ゲームのダウンロードで何が変わるのか
トレントの著作権侵害で届いた書面に、日本の制作会社ではなく海外の企業名が記載されていることがあります。洋画、海外ゲーム、海外アニメなどをダウンロードしていた場合、権利者が外国の会社であることは珍しくありません。海外の権利者から請求されると何が変わるのか。日本のAV制作会社からの請求と何が違うのかを解説します。
海外の権利者からの請求も実際にある
トレントの著作権侵害で開示請求を行っているのは、日本のAV制作会社だけではありません。
海外の映画制作会社やゲーム開発会社が、日本国内のトレント利用者に対して発信者情報の開示請求を行い、損害賠償を請求するケースがあります。
海外の権利者であっても、日本国内でトレントを利用して著作権侵害を行った以上、日本の法律に基づいて請求されることがあります。
1. 海外の権利者が日本国内で請求できる法的根拠
ベルヌ条約に基づく保護
日本は、著作権の国際的保護に関するベルヌ条約の加盟国です。
ベルヌ条約は、加盟国の国民の著作物を他の加盟国でも保護することを定めています。
アメリカ、イギリス、フランス、韓国など、主要な映画・ゲーム制作国はすべてベルヌ条約の加盟国です。
つまり、海外の制作会社の著作物であっても、日本の著作権法によって保護されます。
日本国内でトレントを利用してダウンロード(およびアップロード)した場合、日本の著作権法に基づく損害賠償請求の対象になります。
日本国内の代理人弁護士を通じて請求する
海外の権利者は、日本国内の法律事務所を代理人として、開示請求や損害賠償請求を行います。
届く書面は日本語であり、日本国内の法律事務所の名前が記載されています。
海外から直接英語の書面が届くわけではありません。
2. 日本の権利者からの請求と何が異なるか
法的な枠組みは同じ
著作権侵害の成否や損害賠償金額の算定方法は、権利者が日本企業であっても海外企業であっても同じです。
著作権法第114条の規定に基づいて損害額が算定されます。
「海外の権利者だから軽くなる」「外国企業だから日本では請求できない」ということはありません。
損害額の算定に影響する要素
損害額の算定は、作品のジャンルや権利者の国籍ではなく、次の要素に基づきます。
作品の正規販売価格(デジタル配信価格)と利益率。
ダウンロード回数(送信可能な状態にしていた期間に限定)。
アップロードによる拡散可能性。
海外の映画やゲームは、正規販売価格が高額なことがあります。
たとえば、映画のデジタル配信が1本2,000円から3,000円、ゲームが1本6,000円から8,000円であれば、1ダウンロードあたりの利益額も高くなり、AV作品と比べて損害額が大きくなる傾向があります。
権利関係の確認が必要な場合がある
海外の権利者の場合、誰が日本国内での著作権を有しているかの確認が必要になることがあります。
映画やゲームの著作権は、制作会社、配給会社、日本国内のライセンシーなど、複数の関係者に分かれていることがあります。
請求してきている会社が、日本国内での著作権を実際に有しているかどうかは、争点になり得る場合があります。
3. 海外の権利者からの請求の特徴
組織的な権利行使
海外の大手映画会社やゲーム会社は、著作権侵害に対する権利行使を組織的に行っていることがあります。
専門の法務部門や、著作権侵害対策を専門とする法律事務所と契約し、世界中のトレント利用者に対して開示請求と損害賠償請求を行っています。
権利者団体が関与する場合
映画やアニメの分野では、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)などの権利者団体が監視と権利行使の調整を行っていることがあります。
権利者団体が関与している場合、個別の制作会社が単独で請求してくるケースとは対応の進め方が異なることがあります。
高額の損害賠償を主張してくることがある
海外の権利者の中には、日本のAV制作会社よりも高額の損害賠償を主張してくるケースがあります。
特に、正規販売価格が高い大作映画やゲームソフトについては、1作品あたりの請求額がAV作品の場合よりも高くなることがあります。
4. 海外の権利者からの請求でも損害額は争える
算定方法は同じ
権利者が海外企業であっても、損害額の算定は著作権法第114条に基づいて行われます。
権利者側が主張する販売価格ではなく利益額を基準にすべきであること、ダウンロード回数を送信可能期間に限定すべきであること、共有比率で按分すべきであることは、権利者が日本企業でも海外企業でも同じように主張できます。
正規価格が高くても利益額は異なる
ゲームソフトの正規販売価格が8,000円であっても、利益率を掛ければ利益額は4,000円程度に下がることがあります。
さらにダウンロード回数を限定し、共有比率で按分すれば、1作品あたりの損害額は大幅に下がります。
当事務所の対応
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
5. 海外の権利者からの請求が来た場合にすべきこと
書面の差出人を確認する
書面に記載されている権利者名と代理人弁護士事務所名を確認してください。
権利者が実在する海外企業であるか、代理人弁護士が日本弁護士連合会の弁護士検索で実在するかを確認してください。
請求対象の作品と金額を確認する
どの作品が対象になっているか、いくらの金額が請求されているかを確認してください。
海外の作品は正規販売価格が高いため、AV作品の場合よりも高額の請求が来ることがあります。
弁護士に相談する
海外の権利者からの請求であっても、対応の基本は日本の権利者の場合と同じです。
提示された金額が裁判で認められる損害賠償金額と比べてどうなのかを弁護士に確認し、対応方針を判断してください。
権利関係の確認が必要な場合は、弁護士が確認します。
提示額をそのまま支払わない
海外の権利者からの請求であっても、提示額は権利者側が設定した請求額であり、裁判所が認める金額ではありません。
「海外の大企業に逆らえない」と思い込んで提示額をそのまま支払う必要はありません。
6. 刑事告訴のリスク
海外の権利者も刑事告訴は可能
海外の権利者であっても、日本国内での著作権侵害について刑事告訴を行うことは法律上可能です。
ただし、海外の権利者が日本国内での刑事告訴に積極的かどうかは、権利者の方針によります。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
海外の権利者からトレントの著作権侵害で請求された場合でも、法的な枠組みは日本の権利者の場合と同じです。
ベルヌ条約により、海外の著作物も日本の著作権法で保護されます。
海外の権利者は日本国内の代理人弁護士を通じて請求を行います。
損害額の算定方法は権利者の国籍にかかわらず、著作権法第114条に基づきます。
海外の映画やゲームは正規価格が高いため、AV作品より高額の請求が来ることがありますが、利益額やダウンロード回数の限定により損害額は大幅に下がる可能性があります。
「海外の大企業だから逆らえない」と思い込んで提示額を支払う必要はありません。
海外の権利者からの請求であっても、弁護士に相談して見通しを確認してから対応方針を判断してください。
よくある質問
海外の映画会社から請求が来ました。日本の法律で対応できますか。
できます。ベルヌ条約により、海外の著作物も日本の著作権法で保護され、損害賠償請求も日本の法律に基づいて行われます。
海外の権利者からの請求は、日本のAV制作会社からの請求より高額になりますか。
作品の正規販売価格が高い場合は、請求額が高くなることがあります。ただし、裁判で争えば利益額やダウンロード回数の限定により大幅に下がる可能性があります。
海外の権利者に逆らって大丈夫ですか。
権利者が海外企業であっても、裁判で争うことは法的に何の問題もありません。裁判所は、権利者の規模や国籍にかかわらず、法律に基づいて損害賠償金額を算定します。
海外の権利者も刑事告訴しますか。
法律上は可能ですが、海外の権利者が日本国内での刑事告訴に積極的かどうかは権利者の方針によります。当事務所では、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
海外のゲームをダウンロードしてしまいました。損害額を争えますか。
争えます。損害額の算定は著作権法第114条に基づいて行われ、権利者の国籍によって算定方法が変わることはありません。当事務所では、具体的な主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
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