トレントでVPNを使えばバレないのか|VPNを使っていても開示請求される理由
トレントを利用する際に「VPNを使えばIPアドレスが隠せるからバレない」という情報を信じている方がいます。しかし、VPNを使っていたのに意見照会書や請求書が届いたという相談は実際にあります。VPNを使えば本当にバレないのか、VPNを使っていたのにバレる理由は何か、バレてしまった場合にどう対応すべきかを解説します。
「VPNを使えば安全」は誤り
インターネット上には「トレントを使うときはVPNを使えばIPアドレスが隠せるから安全」という情報があふれています。
VPN(Virtual Private Network)は、通信を暗号化し、利用者のIPアドレスの代わりにVPNサーバーのIPアドレスを表示させる仕組みです。
この仕組みだけを見れば、トレントの利用者のIPアドレスは権利者側から見えないように思えます。
しかし、VPNを使っていてもトレントの利用がバレることがあります。
「VPNを使えば安全」と信じてトレントを利用し続けた結果、開示請求を受ける方がいます。
1. VPNを使っていてもバレる理由
VPN接続が途切れた瞬間にIPアドレスが露出する
VPN接続は常に安定しているとは限りません。
VPNサーバーとの接続が一瞬でも途切れた場合、その瞬間にトレントのクライアントソフトが本来のIPアドレスで通信を行い、権利者側の監視システムにそのIPアドレスが記録される可能性があります。
一部のVPNソフトには「キルスイッチ」と呼ばれる機能があり、VPN接続が切れた瞬間にすべての通信を遮断する設定がありますが、この機能を有効にしていなかった場合や、機能が正常に作動しなかった場合は、本来のIPアドレスが露出します。
たった一瞬の接続切れで、権利者側にIPアドレスを記録されることがあるということです。
VPNサービスが通信ログを保存している場合
VPNサービスの中には、「ノーログポリシー」を掲げているものがあります。
しかし、すべてのVPNサービスが本当にログを保存していないかどうかは、外部から確認できません。
VPNサービスが通信ログを保存していた場合、法的な手続を通じてログが開示され、VPN利用者のIPアドレスが特定される可能性があります。
実際に、「ノーログ」を謳っていたVPNサービスが、法執行機関の要請に応じてログを提出した事例が海外では報告されています。
VPNを使い始める前の通信が記録されている
VPNを途中から使い始めた場合、VPN導入前のトレント利用時のIPアドレスはそのまま記録されています。
「途中からVPNを使い始めたから大丈夫」ということにはなりません。
VPN導入前の期間についての開示請求が届くことがあります。
DNS漏洩やWebRTC漏洩
VPNを使っていても、DNS(ドメインネームシステム)の問い合わせやWebRTC(ブラウザの通信プロトコル)を通じて、本来のIPアドレスが漏洩することがあります。
これらの漏洩を防ぐ設定を行っていなかった場合、VPNを使っていても権利者側にIPアドレスが記録されることがあります。
2. VPNを使っていたのに書面が届いた場合
VPNの接続が完全ではなかった可能性が高い
書面が届いたということは、権利者側がプロバイダへの開示請求を通じて契約者を特定できたということです。
つまり、権利者側がVPNではなく本来のIPアドレスを記録している通信が存在したということになります。
上述した接続切れ、VPN導入前の通信、DNS漏洩などが原因として考えられます。
「VPNを使っていた」は反論にならない
「VPNを使っていたから自分ではない」という主張は、法的な反論としては通用しにくいです。
権利者側は、VPNを経由していない通信のIPアドレスを記録しています。
そのIPアドレスがプロバイダを通じて契約者に結びつけられた以上、「VPNを使っていたはずだ」という主張は、記録された通信とは別の通信についての話になります。
ただし、損害額は争える
VPNを使っていたかどうかに関わらず、損害額の主張立証は同じように行えます。
VPNを使っていた期間中は権利者側にIPアドレスが記録されていないため、送信可能な状態にしていた期間が限定される可能性があります。
VPNの接続が切れていた期間のみが記録されているのであれば、その期間に限定してダウンロード回数を認定すべきという反論が成り立ち得ます。
3. VPNを使っていない場合との違い
送信可能期間が限定される可能性
VPNを全く使っていなかった場合、トレントを起動していた全期間について本来のIPアドレスが記録されている可能性があります。
VPNを使っていた場合は、VPN接続が切れていた期間のみ本来のIPアドレスが露出しているため、記録されている期間が短くなる可能性があります。
送信可能期間が短ければ、ダウンロード回数の認定も限定され、損害額が下がる方向に働くことがあります。
この点を主張立証するには弁護士の対応が必要
VPNの利用状況と、記録されているIPアドレスの対応関係を整理し、送信可能期間を限定する主張を組み立てるには、弁護士による対応が必要です。
4. VPNを使っていた場合にすべきこと
トレントの利用を直ちに停止する
VPNを使っていたかどうかに関わらず、まだトレントを利用しているのであれば直ちに停止してください。
「VPNを使っているから大丈夫」と思って利用を続けていれば、VPN接続が切れた瞬間に新たなIPアドレスが記録され、請求対象の作品数が増えるリスクがあります。
VPNの利用状況を整理しておく
いつからVPNを使い始めたか。
どのVPNサービスを使っていたか。
VPN導入前にトレントを利用していた期間はあるか。
VPN接続が切れたことに気づいた経験はあるか。
キルスイッチの設定は有効にしていたか。
これらの情報は、損害額の主張立証に影響する可能性があります。
弁護士に相談する際に伝えてください。
弁護士に相談する
VPNを使っていた場合でも、書面が届いた以上、対応は必要です。
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
5. 「今からVPNを導入すれば大丈夫か」
今から導入しても過去の記録は消えない
すでに権利者側にIPアドレスが記録されている以上、今からVPNを導入しても、過去の記録が消えるわけではありません。
今後の対応は、VPNの導入ではなく、弁護士による主張立証です。
そもそもトレントを使わないことが最善
VPNを使えばバレないという情報を信じてトレントを利用し続けることは、上述のとおりリスクがあります。
トレントの利用をやめることが、今後のリスクを確実になくす唯一の方法です。
まとめ
VPNを使っていてもトレントの利用がバレることがあります。
VPN接続が一瞬でも途切れれば、本来のIPアドレスが権利者側の監視システムに記録されます。
VPNサービスがログを保存していれば、法的手続を通じて特定される可能性があります。
VPN導入前のトレント利用は、VPNの保護を受けていません。
「VPNを使っていた」は法的な反論としては通用しにくいです。
ただし、VPNを使っていた期間の送信可能期間が限定される可能性があり、損害額の主張立証に影響し得ます。
VPNを使っていたかどうかに関わらず、書面が届いた以上は適切な対応が必要です。
弁護士に相談して、対応方針を判断してください。
よくある質問
VPNを使っていたのに書面が届きました。なぜですか。
VPN接続が途切れた瞬間に本来のIPアドレスが露出した、VPN導入前の通信が記録されていた、DNS漏洩があったなどの原因が考えられます。
VPNを使っていたことは反論になりますか。
「VPNを使っていたから自分ではない」という主張は通用しにくいです。ただし、VPNを使っていた期間は送信可能期間が限定される可能性があり、損害額の主張立証に影響し得ます。
VPNを使っていても損害額は争えますか。
争えます。損害額の主張立証はVPNの使用の有無に関わらず同じように行えます。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
今からVPNを導入すれば大丈夫ですか。
すでに記録されたIPアドレスは消えません。今後の対応はVPNの導入ではなく、弁護士による主張立証です。
VPNを使えばトレントを安全に利用できますか。
安全とは言い切れません。VPN接続の途切れ、ログの保存、DNS漏洩などにより、IPアドレスが特定されるリスクがあります。トレントの利用をやめることが最善です。
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