トレントの著作権侵害で権利者側が請求を取り下げることはあるのか|「諦めてくれる」という期待は正しいか
トレントの著作権侵害で権利者側から損害賠償を請求されたとき、「このまま応じなければ、そのうち権利者側が諦めて請求を取り下げてくれるのではないか」と期待する方がいます。権利者側が請求を取り下げることは実際にあるのか。どういう場合に取り下げるのか。「諦めてくれる」を前提にした対応は合理的かを解説します。
「そのうち諦めてくれるのでは」という期待
権利者側からの書面を受け取った方の中には、次のように考える方がいます。
「大量の人に請求しているのだから、全員を追いかけるのは無理だろう。」
「自分は少額の案件だから、放っておけば優先度が下がるだろう。」
「何も返答しなければ、コストに見合わないと判断してやめるだろう。」
こうした期待が正しいかどうかは、権利者側がどのような判断で請求を続けるか、またはやめるかに依存します。
1. 権利者側が請求を継続する理由
開示請求に費用をかけている
権利者側は、監視ツールの運用費用、プロバイダへの開示請求にかかる弁護士費用、裁判所への申立費用など、利用者を特定するまでに相当のコストをかけています。
コストをかけて特定した以上、回収を試みずに放置するのは、権利者側にとって経済的に合理的ではありません。
大量処理のビジネスモデル
権利者側の代理人事務所は、大量の案件をまとめて処理する体制を構築しています。
1件ずつ個別に判断して取り下げるよりも、全員に一律の書面を送り、応じた人から回収する方が効率的です。
そのため、「応じなかった人は放置する」のではなく、「応じなかった人には追加の督促を送り、それでも応じなければ訴訟を検討する」という流れになることがあります。
取り下げれば前例になる
権利者側が一部の利用者に対して請求を取り下げれば、「応じなければ諦めてもらえる」という前例を作ることになります。
この前例が広まれば、他の利用者も応じなくなり、回収率が下がります。
権利者側にとって、請求を安易に取り下げるインセンティブはありません。
2. 権利者側が請求を事実上やめるケースはあるか
可能性がゼロとは言い切れない
すべての案件で訴訟を提起しているわけではない以上、結果として権利者側が請求を事実上やめるケースがゼロとは言い切れません。
開示請求の件数に対して訴訟を提起している件数が限られているということは、請求に応じなかった利用者の中に、結果として訴訟を提起されなかった人がいる可能性はあります。
ただし、予測はできない
どの案件について訴訟を提起し、どの案件については提起しないかは、権利者側の判断であり、外部から予測することは困難です。
「自分は取り下げてもらえる側だろう」と期待して行動するのは、根拠のない楽観論です。
方針は変わることがある
過去に訴訟を提起しなかった権利者が、方針を変えて積極的に訴訟を提起するようになることがあります。
「以前は諦めてくれていた」としても、今後も同じとは限りません。
3. 弁護士が対応している場合の権利者側の対応
弁護士が窓口になると態度が変わることがある
利用者本人が何も対応していない場合と、弁護士が窓口になっている場合とでは、権利者側の対応が変わることがあります。
弁護士が対応している場合、権利者側は「裁判で争われる可能性がある」と認識します。
裁判で争われれば、損害賠償金額は提示額を大幅に下回る可能性があることを権利者側も理解しています。
裁判を避けるために権利者側が条件を見直すこともある
弁護士が裁判を見据えた対応をしている場合、権利者側が裁判になるよりは低い金額で和解した方が合理的だと判断し、条件を見直すことがないとは言い切れません。
ただし、「弁護士を通じて交渉しても減額には応じない」と公表している事務所もあるため、事案ごとに異なります。
弁護士が対応していれば「放置」にはならない
弁護士に依頼して対応している場合は、「何もしていない」状態とは全く異なります。
弁護士が窓口になり、権利者側とやり取りをしながら、裁判で争った場合の見通しを踏まえた対応を進めています。
権利者側にとっても、弁護士が対応している相手に対して一方的に手続を進めにくくなることがあります。
4. 「諦めてくれる」を前提にした対応のリスク
諦めてくれなかった場合の代償
「諦めてくれるだろう」と期待して放置した結果、権利者側が訴訟を提起した場合、次のリスクが生じます。
弁護士に依頼していなければ、答弁書の提出が遅れ、欠席判決のリスクがある。
欠席判決で権利者側の提示額がそのまま認容される。
判決確定後に給与差押えに至る可能性がある。
弁護士に依頼して最初から対応していれば数万円から十数万円程度で解決できたかもしれない問題が、放置した結果、数十万円の判決と給与差押えに至ることがあります。
3年間のリスクを抱え続ける
消滅時効が成立するまでの3年間、「いつ訴訟を起こされるか分からない」「いつ書面が届くか分からない」という不安を抱え続けることになります。
書面が繰り返し届く
放置している間、権利者側からの督促の書面が自宅に届き続けます。
家族に知られるリスクが高まります。
5. 「諦めてくれる」よりも「適正な金額で解決する」方が合理的
提示額を払う必要はないが、対応は必要
権利者側の提示額をそのまま支払う必要はありませんが、何も対応しないのは別のリスクを招きます。
「諦めてくれる」ことに賭けるよりも、弁護士に依頼して裁判で争い、適正な金額で解決する方が、経済的にも精神的にも合理的です。
裁判で争えば損害額は下がる
当事務所では、著作権法第114条に基づき、作品の正規価格、ダウンロード回数、アップロードによる拡散可能性(共有比率や経過日数等)を踏まえた具体的な反論を行っています。
その結果、これまで取り扱った案件ではいずれも当事務所の主張する計算方法が裁判所に採用され、数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
もっとも、こうした反論が裁判所に採用されるかは、主張立証の具体性と精度に左右されます。
裁判で認められる金額が数万円から十数万円程度であれば、「諦めてもらう」必要すらありません。
適正な金額を支払って終わりにする方が、不安を抱え続けるよりもはるかに健全な解決です。
刑事告訴への対応
当事務所では、権利者側に対し刑事告訴を行わないよう交渉する方針を一貫してとっており、介入後に刑事事件として立件された案件は一度もありません。
まとめ
権利者側が請求を取り下げることはゼロとは言い切れませんが、それを前提にした対応は合理的ではありません。
権利者側は利用者の特定にコストをかけており、安易に請求を取り下げるインセンティブはありません。
どの案件で訴訟を提起するかは権利者側の判断であり、外部から予測できません。
「諦めてくれるだろう」と放置した結果、訴訟を提起されれば、欠席判決や給与差押えのリスクがあります。
弁護士に依頼して裁判で争えば、数万円から十数万円程度で解決できる可能性があります。
適正な金額で解決する方が、3年間リスクを抱え続けるよりもはるかに合理的です。
「諦めてくれる」ことに賭けるよりも、弁護士に相談して見通しを確認してください。
よくある質問
権利者側が請求を諦めることはありますか。
可能性がゼロとは言い切れませんが、予測はできません。開示請求にコストをかけている以上、安易に取り下げるとは考えにくいです。
応じなければ訴訟を起こされますか。
すべての案件で訴訟が提起されているわけではありませんが、訴訟を提起される可能性はあります。放置した場合は欠席判決のリスクがあります。
放っておけば3年で時効になりますか。
3年以内に訴訟を提起されなければ消滅時効を援用できますが、3年以内に訴訟を提起されれば時効は中断されます。3年間リスクを抱え続けることになります。
弁護士が対応していれば権利者側は諦めますか。
諦めるとは限りませんが、弁護士が対応していれば裁判で争われる可能性を認識するため、権利者側の対応が変わることがあります。いずれにしても、弁護士に依頼して適正な金額で解決する方が合理的です。
結局どうするのが一番よいですか。
弁護士に相談して、裁判で争った場合の見通しを確認したうえで対応方針を判断することが最も合理的です。当事務所では、著作権法第114条に基づく主張立証を行い、これまで取り扱った案件ではいずれも数万円から十数万円程度にまで減額された解決に至っています。
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